《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》67 、十年前
「落ち著いて、さあ、ここに座って」
最初に私を迎えてくれた修道の方が、會堂のり口にある長椅子を勧めてくれた。確か、この方はネリー様。私より十歳ほど年上だったはず。ウィンプルで今は隠れているがかな金髪がしく、いつも凜としてらした。
「水よ、飲める?」
私に水を手渡してくださったのは、パウラ様だ。
ルシーンと同じくらいの年齢で、明るい茶の髪を上手に編み込んでいる。おっとりした喋り方がらしかった。
「ありがとうございました」
コップを椅子の上に置いて、私は立ち上がる。
「申し遅れました」
はやる気持ちを抑え、淑の禮をした。
「私、クリスティナ・リアナック・オフラハーティと申します。どうしても、いますぐ王笏を手にしなければいけない理由があるのです。無茶を承知で申し上げますが、どうかひととき、お貸しいただけないでしょうか」
「オフラハーティ? って、もしかしてあの、四大公爵家の」
パウラ様が目を丸くした。真剣な目で私は頷く。
Advertisement
「不躾は承知です。突然、こんなことを言って申し訳ありません。ですが、どうしても必要なのです」
「そんな……」
「急に言われてましても」
ネリー様とパウラ様が判斷つきかねる様子で顔を見合わせる。迷う気持ちはわかる。だけど私も時間が惜しい。急いで戻らなければイリルがどうなっているか。
「お願いします! 後で必ず戻ります。お禮ももちろん致します」
見返りでくような人たちではないと分かっていながら、そうとしか言えない。ネリー様とパウラ様が宥めるような聲を出す。
「落ち著いて。まずは院長にお聞きしますから」
「今すぐ呼びに行きますから、ここで待っていてくださいね」
「お願いします!」
ネリー様が會堂を出ようとしたそのとき。
「呼びに行くまでもありませんよ」
「院長!」
インゲルダ様、と口に出しそうになり、なんとか飲み込んだ。
開け放たれた扉から、小柄でお年をお召しになった修道姿のが現れた。
ネリー様がそっと近付いて、狀況を説明される。インゲルダ様はこちらを見て小さく微笑み、私の側まで來て仰った。
「ではあなたはオキャラン様の?」
はい、と私は再び淑の禮をする。
「ナイオル・コルム・オキャランの孫娘に當たります」
「先代當主様のお孫様ということは、アルバニーナ様のご息様になるのね」
インゲルダ様は懐かしそうに目を細められた。そして、ネリー様とパウラ様に向かって告げた。
「この方に王笏を貸してあげましょう」
「インゲルダ様?」
ネリー様が驚いた聲を出した。パウラ様は口を手で抑えて固まっている。
「ありがとうございます!」
私は心を込めて頭を下げる。インゲルダ様は私の肩に手を置いて、顔を上げるように促した。
「元より、アルバニーナ様に頼まれておりました」
「お母様に?」
「クリスティナ様がご結婚する前に、一度は必ず王笏を手にする機會を與えるように、と」
「……そんな約束を? いつですか?」
「もうかなり前です。おそらく、十年ほど前になるでしょうか」
——十年前? お母様が亡くなる一年前に?
なぜ、と考え、私はひとつの考えに思い當たる。
もしかして。まさか。でもそうとしか考えられない。
——私を守るために?
「こちらです。付いてきてください」
「はい!」
インゲルダ様の後を歩きながら、私は考える。
私がイリルと婚約したのは七年前。
病弱だったお母様がご自分の命が短いことを察してオキャランのお祖父様やエルザ様に託して結んでくれた縁談だ。私はそれをお母様のの現れだと思ってけ止めていた。
だけど。
——もしかして、お母様は何か的な危機をじていらっしゃったのでは?
だからこそ、十年も前から私が王笏を手にする機會を計畫していた。イリルとの婚約を整えながら。
では、その的な危機とは?
「階段になります。気を付けて」
「はい」
インゲルダ様と一緒に細く長い階段を登りながら、私は以前ルイザ様が仰ったことを思い出した。
エヴァ様がお母様の出産の手伝いをしたことを。
——まさか。本當にそんなことを?
お母様は、私を出産することでさらに調を崩し、長い間寢込んでいたと聞いている。
回復したお母様は、私が守り石を持っていないことを不審に思ったのではないだろうか。
……クリスティナが守り石を持っていたはずですが。
調べてください、とお母様が頼んだとしても、お父様はお母様の話を信じてくれただろうか。
いや、きっと信じない。
お父様はそういう人だ。自分がそうだと思ったことを否定されて、きっとお母様を怒鳴りつけただろう。
「ここです。天井が低いから気を付けて」
「ありがとうございます」
案されたのは、修道院の塔の一番上だった。
「これですよ」
インゲルダ様は古い木箱の前に立った。同じだ、と私は思う。「前回」と。
あのとき私がここに來たのは、お祖父様が強く勧めたからだ、イリルとの結婚式の前に必ず行くようにと。
あのときは守り石のこともそのも知らなかった。だから、短い時間手にしただけだった。
それでも、私が巻き戻ったのは、あのときここに來たおかげかもしれないと思う。
つまり、私を守ってくれたのはお母様なのだ。
ぎいい、と音がして木箱が開けられた。
「どうぞ」
「……ありがとうございます」
先端に輝く濃い紫の石。
紛れもない王笏だ。
私は、ゆっくりとそれに手をばす。
「まあ!」
インゲルダ様が聲を上げた。
ほんの一瞬だけど、石がったのだ。
Relay:Monsters Evolve ~ポンコツ初心者が始める初見プレイ配信録~
何の根拠もなく「これだ!」と、とあるオフラインのVRゲームの初見プレイを配信する事を決めた能天気な無自覚ドジっ子なサクラ。 いざ人任せにしつつ配信を始めたら、なんでそんな事になるのかと視聴者にツッコまれ、読めない行動を見守られ、時にはアドバイスをもらいつつ、ポンコツ初心者は初見プレイでの珍妙なゲーム実況を進めていく! そんなサクラが選んだゲームは、現実に存在する動植物を元にして、モンスターへと進化を繰り返し、最終的に強大な力を持つ人類種へと至る事を目的としたゲーム『Monsters Evolve』。 そのオンライン対応版のVRMMO『Monsters Evolve Online』がサービスを開始して少し経った頃に、VR機器そのものに大幅アップデートが行われ、タイトルに制限はあるがリアルタイムでの配信が解禁されたものである。 これはオフライン版の『Monsters Evolve』を描く、もう1つの進化の物語。 カクヨムでも連載中! pixivFANBOXで先行公開も実施中です! また、本作は『Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜』の関連作となります。 関連作ではありますがオンライン版とオフライン版という事で話としては獨立はしていますので、未読でも問題はありません。 もしよろしければオンライン版の話もどうぞ。 https://ncode.syosetu.com/n7423er/
8 116不老不死とは私のことです
うっかり拾い食いした金のリンゴのせいで不老不死になってしまった少女、羽鳥雀(15歳)。 首の骨を折っても死なず、100年経っても多分老いない彼女が目指すは、不労所得を得て毎日ぐーたら過ごすこと。 そんな彼女は、ラスボス級邪龍さんに付きまとわれながらも、文字通り死ぬ気で、健気に毎日を生きていきます。 ※明るく楽しく不謹慎なホラー要素と、微妙な戀愛要素を盛り込む事を目指してます。 ※主人公とその他アクの強い登場人物の交遊録的なものなので、世界救ったりみたいな壯大なテーマはありません。軽い気持ちで読んでください。 ※魔法のiらんど様に掲載中のものを加筆修正しています。
8 64世界最強が転生時にさらに強くなったそうです
世界最強と言われた男 鳴神 真 は急な落雷で死んでしまった。だが、真は女神ラフィエルに世界最強の強さを買われ異世界転生という第二の人生を真に與えた。この話は、もともと世界最強の強さを持っていた男が転生時にさらなるチート能力をもらい異世界で自重もせず暴れまくる話です。今回が初めてなので楽しんでもらえるか分かりませんが読んでみてください。 Twitterのアカウントを書いておくので是非登録してください。 @naer_doragon 「クラス転移で俺だけずば抜けチート!?」も連載しています。よければそちらも読んでみてください。
8 131ブアメードの血
異色のゾンビ小説<完結済> 狂気の科學者の手により、とらわれの身となった小説家志望の男、佐藤一志。 と、ありきたりの冒頭のようで、なんとその様子がなぜか大學の文化祭で上映される。 その上映會を観て兄と直感した妹、靜は探偵を雇い、物語は思いもよらぬ方向へ進んでいく… ゾンビ作品ではあまり描かれることのない ゾンビウィルスの作成方法(かなり奇抜)、 世界中が同時にゾンビ化し蔓延させる手段、 ゾンビ同士が襲い合わない理由、 そして、神を出現させる禁斷の方法※とは…… ※現実の世界でも実際にやろうとすれば、本當に神が出現するかも…絶対にやってはいけません!
8 66強奪の勇者~奪って奪って最強です~
「周りからステータスを奪っちゃえばいいのに」 少女がそんなことを抜かす。 俺はそれを実行し、勇者になった。 「強奪の勇者とは俺のことよ!!」
8 62勇者のパーティーから追い出されましたが、最強になってスローライフ送れそうなので別にいいです
ある日、精霊大陸に『星魔王』と呼ばれる存在が出現した。 その日から世界には魔物が溢れ、混迷が訪れる。そんな最中、國々は星魔王を倒す為精鋭を集めた勇者パーティーを結成する。 そのパーティーの一員として參加していた焔使いのバグス・ラナー。だが、スキルの炎しか扱えない彼の能力は、次第に足手纏いとなり、そして遂に、パーティーメンバーから役立たずの宣告を受ける。 失意の內に彷徨った彼は、知り合った獣人をお供にやがて精霊大陸の奧地へと足を踏み入れていく。 精霊大陸がなぜそう呼ばれているのか、その理由も深く考えずにーー。
8 81