《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》68、シーラは本當にしつこい
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黒い霧が消えてから、ドゥリスコル伯爵の勢いは弱まった。
はあはあ、と伯爵の呼吸の音が響く。イリルは伯爵の首元に剣を突きつけ、聞いた。
「本當に帝國からの貴族なのか?」
荒くしたまま、目だけイリルに向ける。イリルは再度問う。
「ドーンフォルトの者だろう」
「……」
伯爵はついに膝を突いた。ドゥリスコル伯爵から見ると、イリルの頭上の守り石が、太のに溶けるように輝いている。眩しい、と伯爵は目を細める。
「答えろ」
イリルは剣の切先で、伯爵の首にれる。皮に金屬が當たるがする。右腕は相変わらず出がひどい。痛みをじることはないが、このが使えなくなると不自由だ。
「……帝國とかドーンフォルトとか、そんなものは全部私のおもちゃだ」
伯爵はイリルの肩越しに、二頭の馬が繋がれているのを確認した。時間を稼ごう。
「私という存在に意味はない。意味をしがり、語を仕立て上げるのはいつもお前たちだ」
伯爵は赤い瞳を細める。あとし。
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「お前たちが呼ぶから私が來る」
イリルの眉が上がる。
「お前たちが私を私だと認識するから、私はここにいる——だから諦めろっ!」
伯爵はバネのようにイリルに飛びかかった。だが。
ザクッ!
イリルの方が早かった。最小限のきで、イリルは伯爵のに剣を突き刺した。
ごふ、と伯爵がを吐く。
「……私が死ねば、お前も死ぬぞ?」
かすれる聲で伯爵は呟く。イリルは微笑んだ。
「なら本だ。お前、私をろうとしているだろう?」
伯爵が初めてイリルを心した目で見た。
「気付いていたのか」
「クリスティナを追いかけなかったのがその証拠だ。自分では『聖なる者』を殺せない。だからこんな手の込んだことをしている」
そう、カハル王國の國王を殺すのは、彼にとってついでのようなものだった。『聖なる者』をこの世から無くすことが真の目的。そうすれば彼はやっと自由になれる。なのに、結局はいつも邪魔をされる。
顔も忘れたそのを思い出して、彼は呟く。
「シーラは本當にしつこいな……」
何度も、何度も、何度も、シーラは諦めず彼を封印しようとする。シーラだけが彼を諦めない。彼はイリルに言った。
「シーラは馬鹿だと思わないか?」
その目は、イリルを見ているようで見ていない。
「私を封じても、仕方がない。呼ぶ人間がいるから、私が生まれるのだ。だったら私ではなく」
恍惚の表を浮かべて、彼は囁いた。の端からが流れる。
「——人間の方を滅したらいいのに。何度言ってもそうじゃないと言っていた」
「當たり前だ」
「なぜ?」
イリルは答えない。守り石は輝きを増した。
「話はもういい。終わりだ、伯爵」
ぐぐぐ、とイリルは剣に最後の力を込めた。ブレスレットまでる。
「ぐっ……」
どう見てもそのはもう生きていないのに、伯爵はまだ聲を上げる。イリルは回転させながら剣を抜き、最後の一撃を振り下ろす。
伯爵の肩のが切り裂かれる。飛沫が飛ぶ。そして——
「はーっはっはっ!」
伯爵が突然笑い聲を上げる。
イリルがとっさに構えを直す。伯爵はイリルの背後に向かってんだ。
「今だ! 來い!」
ぶわっと音がして、木に繋いでいた二頭の馬から黒い霧が再び生まれた。
——これを待っていたのか?
イリルは瞬時に守り石を見上げた。守り石はまだそこで輝いている。伯爵はイリルに言う。
「さあ、早く逃げろ? いくらお前でもあれにはもう勝てん。石の力にも限界がある」
「くっ」
馬は苦しそうに前足で宙を蹴っていたが、やがて力盡きてかなくなった。
イリルは覚悟を決めた。
首を切り落とせば、おそらく復活はしないだろう。イリルは剣を振り上げ、同時に黒い霧はイリルを包もうとした——そのとき。
「イリル!」
ーー王笏を抱えたクリスティナが現れた。遠目でもはっきりとわかる輝き。
「噓だろ? 早すぎる」
伯爵が驚いたように呟いた。
「シーラはあれを簡単には持ち出せないようにしていたはずだ」
その言葉は、息を切らせたクリスティナを誇らしげに微笑ませた。
「終わりよ」
伯爵は逃げようとしたがイリルがそれを許さなかった。
「待て」
伯爵が初めて弱気な聲を出した。
「つまらないと思わないか? それだけの力がありなが……」
クリスティナは伯爵に突き刺すように、先端の石を當てた。
「……っ……」
聲も出せずに伯爵ーー『魔』は自が黒い霧となり、日のの元に消えていった。
あまりの早さにクリスティナもイリルもすぐには警戒を解けなかった。
「本當に終わったの……?」
王笏を手にしたままクリスティナは呟いたが、イリルが塗れなのに気付いて顔を変えた。
「イリル、け、怪我は?」
「ああ、なんともない」
「本當に?」
「うん。全部、あいつのだから……ありがとう」
「なにが?」
「戻ってきてくれて」
「そんなの當然じゃない!」
「結局は守ってもらった」
「違うわ、それは私よ。私がすることを手伝ってくれたーーねえ、本當に終わったのかしら」
「わからない。でも多分」
イリルはいつの間にか手にしていた守り石をクリスティナに返した。
守り石はもう、宙に浮くことも輝くこともなかった。
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