《【8/10書籍2巻発売】淑の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう格悪く生き延びます!》70、『聖なる者』として認める
‡
「お父様、私、もう家に帰りたいわ」
ミュリエルは宮殿に來てから何度もオーウィンにそう言った。この生活にあっという間に飽きたのだ。
だが、オーウィンは頑なにここに留まりたがった。
「ダメだ」
「どうして?」
「ここにいるべきだからここにいるんだ」
「でも」
「うるさい!」
しかし、閉じ込められ、苛立ちが募っているミュリエルは怒鳴られたくらいでは引き下がらない。
「大きい聲を出せばいいわけじゃないのよ! お父様!」
「親に向かってなんてことを言うんだ!」
ミュリエルはお腹の中に火山でも抱えているような怒りでいっぱいになるが、目の前のオーウィンは火山そのものといった様子で顔を真っ赤にしている。ミュリエルでは迫力負けだ。
「子供は大人しくしろ!」
だが、その理不盡さにはどうしても納得できない。迫力で負けるなら、ミュリエルにしか出せない武——甲高い聲でぶ。
「そんなに怒鳴らなくても聞こえるわ! それにもう十分大人しくした! もう嫌なの! うんざり! こんなところ! 帰りたい!」
Advertisement
耳をつんざくような聲にオーウィンは顔をしかめた。
「うるさいのはお前だ! 黙ってここにいろ」
「だからどうしてよ?」
「いなければいけないからだ」
「私が『聖なる者』だから? でも石がないと何もできないじゃない! 意味ないわ!」
宮廷に留まって一日二日は、教會関係者がやたらちやほやしにきていたので、楽しかった。みんなミュリエルを可いとか賢いとかさすがとか褒めてくれたし、贈りもたくさんくれた。だけど、石が手元にない上に、ミュリエルが國王陛下の病気も治せないと聞くと、長居は無用とばかりにみんな帰り出すのだ。
——なんか普通だな。
——もしかして、あちらが。
——石も、な。
——しっ、聞こえるぞ
司祭の使いたちが帰り際、そう話しているのをミュリエルは聞き逃さなかった。
もう嫌だ、とミュリエルは苛立ちでいっぱいになる。
ここにきてまだクリスティナと比べられる。それならいっそ家でマリーをいじめる方がいい。最近のマリーは言い返すようになってきて、ちょっと面白いと思っていたのだ。
「生意気な!」
怒鳴り合いに疲れたのか、公爵は怒って部屋を出て行った。きっとまた酒だ。
始めこそ続き部屋で過ごしていたミュリエルだったが、オーウィンが浴びるように飲むようになってから部屋を分けてもらった。
ずっと酔っ払っているオーウィンの姿はエヴァを思い出させて嫌だったのだ。
「……帰りたい」
ミュリエルはボソッと呟いた。部屋の隅で立っている侍は聞こえているはずだが、何も言わない。
公爵邸も退屈だったが、自分の部屋は寛げた。寶もたくさんあった。ブリギッタやサーシャの教えを書き留めたノートや、まだ読んでいないシェイマスの本。しいと言って譲りけたクリスティナのリボンや栞。小さい頃エヴァが編んでくれた靴下。
マリーはちゃんとウタツグミの世話をしてくれているのかしら。持ってくればよかった。
ミュリエルはため息をついて、枕を投げる。
しかしそんな日々が突然、終わりを告げた。
ある日、陛下が、とか、侍が、とかギャラハー伯爵夫人が、という聲が聞こえたと思ったら、宮殿中をいろんな人がバタバタとき回る気配がした。
何があったのだろう。
誰かミュリエルを呼びにきてくれないか。そう思っていたら——
「ミュリエル! 今すぐ家に戻るぞ! 荷なんて後でいい! 急げ!」
オーウィンが、ミュリエルの部屋にるなりそうんだ。
「お父様? どうしたの? 何でいきなり?」
「いいから! 時間がない」
オーウィンはミュリエルの手首を摑んで外に出ようとした。よく見ればれた髪も直していない。よほど慌てているのだ。ミュリエルは恐る恐る聞いた。
「家に戻るの?」
「ああ、公爵邸に戻る」
それならいいか、とミュリエルは不安な気持ちを押し隠して馬車に乗った。
‡
「ご無事で何よりです!」
「カール?!」
ペルラの修道院から宮廷に戻ろうとした私とイリルは、道中、知った顔に出會って驚いた。
「お迎えに來ました」
ブライアンが泣きそうになりながらそう言い、デニスたちも頷いた。
「本當にそれだけか?」
背中で私を庇いながら問うイリルに、ブライアンは答える。
「もちろんです。レイナン殿下からはお二人をお守りするように、とのお達しでした」
「そうか……」
後ろ姿だったけど、私にはイリルがほっとしたのがわかった。
「では、宮廷まで護衛をお願いできますか?」
私が言うと、みんな揃って頷いた。
‡
宮廷に到著したその日、私はまず陛下への謁見を願い出た。ルイザ様の計らいで、それはすぐに葉えられた。
意識を取り戻したばかりの陛下はまだ寢臺に橫になっている。私はイリルと共に傍に行き、王笏と守り石を掲げた。
陛下は守り石の変わりように驚いた聲を出した。
「これが本來のなのか」
「はい」
私がを張って答えた瞬間、石も王笏も一瞬だがを放った。
「おお?!」
警備の者たちに張が走る。だが、イリルがそれを諌めた。
「大丈夫です、陛下、ご安心ください」
その後すぐ、ごくわずかだが黒い霧のようなものが陛下から出て行ったのが見えた。全員がそれを目で追う。黒い霧は空中に溶けるように消えた。
陛下が信じられないという顔で、ご自分の手をかす。
「これは……どういうことだ。呼吸が楽になった。痺れが殘っていた手も、この通り」
「もう大丈夫です、陛下、これでお元気になるでしょう」
「よかった……」
イリルの言葉に、傍にいらっしゃったルイザ様が聲を詰まらせた。陛下が私に手をかざして告げる。
「クリスティナ・リアナック・オフラハーティを『聖なる者』として認める」
「謹んでおけします」
私は淑の禮をして、そう答えた。
その夜は、久しぶりにいつもの部屋で眠った。
疲れを取るためにゆっくりと休むように言われたのだ。フレイア様と話したかったが、また後日、とフレイア様の方から伝言が屆いた。
宮廷に留まっている父とミュリエルは、このまま謹慎という扱いになるそうだ。『聖なる者』を騙った罪が問われるのだろう。
考えることはまだまだあるけれど、その夜はさすがに泥のように眠ってしまった。
そして翌朝。
「お父様とミュリエルが逃亡した?」
ルシーンに支度を手伝ってもらっていた私は、そんな知らせをけ取った。
嫌な予がした。
ニセモノ聖女が本物に擔ぎ上げられるまでのその過程
借金返済のために紹介された話に飛びついたが、それは『聖女様の替え玉』を務めるというお仕事だった。 職務をほっぽり出して聖女様が新婚旅行に出かけちゃったので、私が聖女様に扮して代わりに巡禮の旅に行くだけの簡単なお仕事です……って話だったのに、ふたを開けてみれば、本物聖女様は色々やらかすとんでもないお人だったようで、旅の護衛には蛇蝎のごとく嫌われているし、行く先も場合によっては命の危険もあるような場所だった。やっぱりね、話がうますぎると思ったんだよ……。 *** 主人公ちゃんが無自覚に聖女の地位を確立していっちゃって旅の仲間に囲い込まれていくお話です。多分。 司祭様→腹黒 雙子魔術師→ヤンデレショタ兄弟 騎士団長さん→椅子
8 175書籍・漫畫化/妹に婚約者を取られてこのたび醜悪公と押しつけられ婚する運びとなりました~楽しそうなので張り切っていましたが噂が大げさだっただけで全然苦境になりませんし、旦那様も真実の姿を取り戻してしまい
【書籍化・コミカライズ企畫進行中】 「私は父に疎まれておりました。妹に婚約者を取られても父は助けてくれないばかりか、『醜悪公』と呼ばれている評判最悪の男のところへ嫁ぐよう命じてきたのです。ああ、なんて――楽しそうなんでしょう!」 幼いころから虐げられすぎたルクレツィアは、これも愛ゆえの試練だと見當外れのポジティブ思考を発揮して、言われるまま醜悪公のもとへ旅立った。 しかし出迎えてくれた男は面白おかしく噂されているような人物とは全く違っており、様子がおかしい。 ――あら? この方、どこもお悪くないのでは? 楽しい試練が待っていると思っていたのに全然その兆しはなく、『醜悪公』も真の姿を取り戻し、幸せそのもの。 一方で、ルクレツィアを失った実家と元婚約者は、いなくなってから彼女がいかに重要な役割を果たしていたのかに気づくが、時すでに遅く、王國ごと破滅に向かっていくのだった。
8 152【書籍化】俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
※書籍版2巻でます! 10/15に、gaノベル様から発売! コミカライズもマンガup で決定! 主人公アクトには、人の持つ隠された才能を見抜き、育てる才能があった。 しかしそれに気づかない無知なギルドマスターによって追放されてしまう。 數年後、アクトは自分のギルド【天與の原石】を作り、ギルドマスターの地位についていた。 彼はギルド構成員たちを次から次へと追放していく。 「鍛冶スキルなど冒険者ギルドに不要だ。出ていけ。鍛冶師ギルドの副支部長のポストを用意しておいたから、そこでせいぜい頑張るんだな」 「ありがとうございます! この御恩は忘れません!」 「(なんでこいつ感謝してるんだ?)」 【天與の原石】は、自分の秘めた才能に気づかず、理不盡に追放されてしまった弱者たちを集めたギルドだった。 アクトは彼らを育成し、弱者でなくなった彼らにふさわしい職場を用意してから、追放していたのだ。 しかしやっぱり新しい職場よりも、アクトのギルドのほうが良いといって、出て行った者たちが次から次へと戻ってこようとする。 「今更帰ってきたいだと? まだ早い。おまえ達はまだそこで頑張れる」 アクトは元ギルドメンバーたちを時に勵まし、時に彼らの新生活を邪魔するくそ上司たちに制裁を與えて行く。 弱者を救済し、さらにアフターケアも抜群のアクトのギルドは、より大きく成長していくのだった。
8 184異世界戦國記
主人公は赤子になっていた。死んだ記憶もなければ生前の記憶すら曖昧であったが働きづめだったということは覚えておりこの世界では好きに生きようと決める。しかし、彼の立場がそうはさせてはくれなかった。父は織田信定、母はいぬゐの方。その間に生まれた主人公、戦國時代を終焉に導く織田信長の父織田信秀となった彼はは自身の思惑とは外れて下剋上の亂世を駆け抜ける。歴史の知識なし、鬼才なし、武力なしの主人公が全く別世界の日本で奮闘する話です。不定期になります。一部知識が偏っている場合があります。
8 197創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜
主人公のユリエルには、自分の知らない前世があった。それは1000年前、300年にも渡る戦爭を止めた救世の魔導師エリアスという前世。 彼は婚約者であるミラと過ごしていたが、ある日彼女は倒れてしまう。 彼女を救うため、エリアスは命を賭し、自らに輪廻転生の魔法を掛け、ユリエルとして転生した。 ユリエルは、エリアスの魔法を受け継ぎ、ミラとの再會を果たすため奮闘して行く!! 主人公最強系ハイファンタジーです! ※タイトル変更しました 変更前→最強魔導師転生記 変更後→創成の転生者〜最強魔導師の転生記〜 內容などには変更ありませんのでよろしくお願いします。
8 129うちの姉ちゃんはこわい
たいせつな、三輪の花。 うちには三人の姉ちゃんがいる。 みんなかわいくて、みんなこわいんだ。
8 157