《【書籍化+コミカライズ】悪ですが、する旦那さまのお役に立ちたいです。(とはいえ、嫌われているのですが)※完結済み》20 私の見解は正しいですか!?

そういえば、これまでに見た過去の景を思い出しても、総じてひらひらと薄手のドレスを纏っていた気がする。

「改めて見ると。おの谷間がばーん! と出るような、そんなドレスばかりが揃っていますね」

「……見れば分かるから、わざわざ言わなくて良い」

「このドレスもすごいですよ。太ももの、こーんなところまでスリットがっています!」

「実際に自分の太ももを指差さなくても良い!」

昨日も今日も、その中からしでも布面積の多いドレスを選んで著た。

とはいえそれは、深い理由があったわけではない。単純に、出がない方が暖かそうだったからである。

「オズヴァルトさま、出が多いドレスはお好みですか?」

「全く興味はない」

「!!」

さらりと言い放たれた一言に、シャーロットはがあんと衝撃をけた。

「普段は君の好きにすればいいが、次の夜會については別だ。あまり悪目立ちする裝でいると、余計な面倒が起きる可能が……」

「新しいドレスを!! 新しいドレスをどうにかします、全部替えます今すぐに!!」

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「いや、別に普段は好きにすれば良いと言って」

「普段から出のないドレスに致します!!」

必死に言い募るシャーロットに対し、オズヴァルトは言いたげな視線を向ける。

だが彼は、やがてどうでもよさそうに表を戻した。

「いずれにせよ。今からドレスを作らせるのでは、どうあっても夜會に間に合わない」

「でしたらどうでしょう。おのところがガバーッと開いているこのドレス、針と糸で、谷間をうんしょとい合わせて……」

「歪な形になるだろうが。仕立てが間に合わないのであれば、既製品を用意する必要がある」

確かにそれは、そうなのかもしれない。

(どうしましょう。どこに行けば既製品のドレスが買えるのか、私の記憶には無いようです……)

眉間の辺りをむいむいと指で押しても、微かな記憶すら出てきそうにない。

そして、困り果てたシャーロットに向かって、オズヴァルトがなんでもないことのように言い放った。

「仕方がないから買いに行くぞ」

「……………………え」

ぽかんと口を開けたシャーロットに、オズヴァルトが顔を顰める。

「明後日の午後、街に出るからそのつもりでいろ。ちょうど俺も公休日で……なんだ、その顔は」

「お……オズヴァルトさまが、私の代わりにドレスを買いに行って下さるのですか?」

「は? 君のドレスを選ぶのに、君が一緒じゃなくてどうする」

「『一緒』……」

必死に思考を巡らせた。

「一緒。一緒とは、あの、私がどなたかと買いに行くということで」

「そうだが」

「それとオズヴァルトさまの公休日に、一どのような関連が……?」

するとオズヴァルトは、深く溜め息をつきながら言うのだ。

「俺が、君と一緒に街に行くからに決まっているだろう」

「………………!!」

それを聞き、シャーロットの頭の中にが満ち溢れた。

とりどりの花が咲きれ、庭師の老人が祝福のラッパを吹いてくれる。

これはつまり、どうあっても、まごうことなきあれだろう。確信を持ち、はやる心を抑えながら尋ねる。

「ひょっとして!! 今度こそっ、オズヴァルトさまとのデートですか!?」

「違う」

「えええーーーーーーっ!?」

オズヴァルトは苦い顔で耳を塞いだあと、シャーロットをじろりと見た。

「妙な誤解をするな。たとえ監視をつけていても、一般國民の多い場所で君を野放しに出來るわけがないだろう」

「でっ、ですがですが、オズヴァルトさまとふたりでお出掛けなのですよね? 私のドレスを一緒に選んでくださるのですよね? これは間違いなくデートのはずでは!?」

「違う」

「わあん!」

ぎゅっと目を瞑ったシャーロットに、オズヴァルトがここぞとばかりに追い討ちをかけてくる。

「いいか、くれぐれも肝に銘じておけ。あくまでも互いに等間隔を保ちながら歩き、目的が同じなので同じ店にり、必要なものを迅速に購するだけだ」

「うっうっ。はい、分かりました……!! 私とオズヴァルトさまは、あくまでお互いに等間隔を保ちながら歩くだけ。……おんなじ目的を持って……。おんなじお店にり、必要なもの、つまりは夜會の裝を一緒に買うだけ……あらら?」

「そうだ。ちゃんと理解したな?」

(……どうしてでしょう。たとえデートと呼ばなくとも、とんでもなく僥倖な気がしてまいりました……!!)

きらきらと目を輝かせ始めたシャーロットには気付かず、オズヴァルトは息をつく。

「では、俺は部屋に戻る」

「はい! おやすみなさいませ、しのオズヴァルトさま!!」

「……何故この一瞬で元気になっている……? まあいい」

オズヴァルトが扉に向かうまでのあいだ、シャーロットは彼の後ろにくっついて、全力で見送りをした。

彼はものすごく煩そうだったが、やがて諦めたような表で部屋を出る。

「……先ほどまでオズヴァルトさまがいらしたお部屋は、なんと素晴らしい空間なのでしょうか……」

ほうっと溜め息をこぼしたあと、シャーロットはそっと機の日記帳を手に取った。

表紙を開くと、あれほどぴったりと張り付いていた日記帳が、すんなりともう一枚捲れてしまうではないか。

二ページ目と三ページ目の、その見開きにたった一行だけ書かれていたのは、やはりシャーロットと同じ筆跡で綴られた文字だ。

『消してしまえ』

「…………」

シャーロットは、日記帳を逆さまに振ってみる。

けれどもやはり、その先のページに進むことは出來ないのだった。

***

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