《【書籍化】誰にもされないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】》許されないに涙する二人の盛り上げ役な私

今日は、婚約者のアルフレッド様とお茶會の日だ。

伯爵家の次男である彼とは婚約を結んでから今年で十年になる。

去年まではこうした流は社シーズンにり王都に來たときの月に一度くらいだったけれど、アルフレッド様が二十歳、私が十七歳になった今年からは月二回に増えた。

結婚が近いという事かしら。

前回のお茶會ではウェディングドレスのデザインについてのお話を振ってみた。今日は続きのお話が出來るかしらと思うと、久しぶりに心が浮き足立ってくる。

魔獣討伐の武勲で家を興した伯爵家の人間であるアルフレッド様は、いかにも武人らしくドレスに関心がないみたいで、何でもいいよ、なんて仰るけれど。

でも、ドレスなんて滅多なことでは作ってもらえない私にとって、ウェディングドレスは夢にまで見るほど憧れの存在。嬉しくてわくわくしてしまう。仕立てるのがとても楽しみ。

私マーブル侯爵家が長ステラは支度を整え、アルフレッド様が待つティーサロンへと向かった。

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ドアノブに手をばした時のことだ。

中から聞こえてきた聲に、きが止まった。

「うふふ、アル様ったらやっぱりこういうドレスが好きなのね。褒めてくださって嬉しいです」

妹の、聲。

鈴が鳴るような、可憐な聲。

はずっと前にお母様が亡くなった後にお父様が連れて來たの連れ子で、一つ歳下のの子だ。詳しい事は教えてもらえなかったけれど、私の妹、らしい。

ふわっとした金髪が可らしく、素直で明るくてされているの子。癒しのスキルを持ち、準聖として大事にされている。

そんな妹が、私より先にアルフレッド様と同じ部屋にいて。彼のことをアル様、と親しげに呼んでいる。

どう考えてもおかしな狀況。

この信じがたい狀況に頭の中が真っ白になった。

「フィオナは天使のようにらしいから、何でも似合うよ。先日の夜會で見せてくれた水のフワフワしたのもよく似合ってた。夫人自らが施したという刺繍も素晴らしかったし……侯爵夫妻は、フィオナをとても大切に思っているんだね」

アルフレッド様の、慈しむ心が滲むらかな聲が聞こえてくる。

フィオナを心から褒めているのが伝わってくるようだ。

……私、あんなふうに褒められた事、ないんだけど。

私と會話をする時とは全然違う。扉越しでも伝わってくる、私と妹に対する溫度差。

なんとなく、親しくなったのは最近のことじゃないな、と思った。そのくらいの関係を二人の會話からはじた。

夜會で會った、と言っていたわね。

私は連れて行ってもらえない場所で、いつの間にか仲良くなっていたのね……。

けずに直していると、中から會話の続きが聞こえてきた。

「本當に似合ってますか? フィオナ、お姉様みたいな大人っぽいドレスも著てみたいなって思うんですけど、まだ早いって言われちゃうんです」

「それはそうだろうね……」

が言っている大人っぽいドレスとは落ち著いた生地や合い、デザインの、既婚者向けのドレスのことだ。早いと言われるに決まっている。

私の手元には亡くなったお母様が著ていたドレスしかないから著ているだけの事。

「それに、お父様とお母様ったら著るのがとても追い付かないくらい新しいドレスを作るんですよ。フィオナのは一つしかないのに。勿ないですって言うんですけど、今が一番かわいい時だからたくさん著せて楽しみたいんですって。フィオナって、著せ替え人形なのかしら」

聲を上げて笑うアルフレッド様。

「侯爵夫妻のお気持ちは分かるよ。……フィオナは本當に何でも似合うからね。ああ、私からもフィオナにドレスを贈りたいな。著せたいデザインがいくつかあるんだ」

「えっ? でも……」

フィオナが言い淀んだ時、私は廊下の角からメイドがティーワゴンを押してやって來るのに気付いて、踏み込む覚悟を決めた。やや強めにノックをし、素早く扉を開く。

返事の前に開いた扉の向こうには、手を取り合ったままこちらを見て焦った表を浮かべる二人の姿が。

「あっ……お姉様……。こ、これはその……。違うんです。ご挨拶に伺ったらまだお姉様がいらっしゃらなくて……」

逃げ出したかった。

でも見なかった事には出來ない。

心をい立たせて言及する。

「そう……。でも、どうして手を取り合っているのかしら」

「こ、転んでしまったのです! そこを助けてもらって……」

「転んだ? それで手を?」

「よさないか、ステラ」

アルフレッド様が橫から口を挾んできた。先ほどは打って変わって、冷たく固い聲。

いえ、今までと変わらない聲だった。だけど私は知ってしまった。それが好意の無い相手に向ける聲だという事を。

「些細な事に目くじらを立てるなど淑の風上にも置けないぞ。大、君は準聖として頑張っているフィオナに対して冷たすぎるんじゃないのか? 妹が転んだというのに、心配する言葉ひとつ出ないなんて」

したよ、と彼は言った。

……これは、私が怒られなくてはいけない場面なの?

「……申し訳ございませんでした」

いつものことだ。

フィオナに関わるといつも私が怒られる。理不盡だ、と思う気持ちはあるけれど、納得しようがしまいがさっさと謝るのが一番楽なのだ、と家族との関わりの中で気付いてしまった。

意固地になって良い事など一つもない。

……ただ、アルフレッド様には、好意も怒りも、等しくけ止めてほしいと……心のどこかで期待してしまった。

私が頭を下げて謝罪すると、気が済んだのかアルフレッド様はフンと鼻を鳴らし、フィオナに向き直って優しい眼差しをした。

フィオナも瞳を潤ませてアルフレッド様を見つめる。

「では……フィオナはこれで失禮しますね」

「ああ……。すまない」

離れがたそうに見つめ合う二人は、まるで人同士のように私の目に映る。

私が來てしまったせいで逢瀬を終わらせざるを得ない、引き裂かれる人同士。

辛そうに離れていくアルフレッド様とフィオナ。許されないに苦しむ二人。

ふと思う。

……私は、二人のの盛り上げ役なのだろうか。

逃げ出したかった。

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