《【書籍化】誰にもされないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】》破壊
「スキルのせいだよ」
殿下はあっさり答えてくれた。
「スキル……? 殿下も啓示が降りて來なかったのですか?」
「いや、そうじゃない。ちゃんと授かったさ。だけど、人心を纏めるには不適格だって事で。……俺も、納得している」
「納得……? いったいどのような……」
「気になる?」
「はい」
気にならない訳がない。
スキルを持たずに後ろめたい思いをする私のような者がいる一方で、そのスキルの質によってを落とす人もいる。
貴族に與えられた特権とはいえ、なんとも業の深い話。
「“破壊”だよ」
「破壊……? 何を、ですか?」
「何でも。その気になればどんなものでもバラバラに出來る。こんなふうに」
そう言うと、殿下の手元のワイングラスがパキパキと音を立てて、次の瞬間には白く細かい砂となってテーブルの上に落ち、小さな山を作った。
「まあ……」
握力での破壊とは明らかに違う壊れかたをした。
これがスキルの力。あまり見た事がなかったけれど、すごい、と思った。
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「あの……それって、生きもこんなじに出來るんですか……?」
「出來るよ」
即答。
やった事があるのかしら……。え、なにそれ怖い。
「そのせいで……不自由な生活をしているのですか?」
「不自由かどうかは分かんないけど、王には相応しくないね。こんな不吉なスキル持ちの王がいる國は誰だって嫌だろう。國民も、外國も」
「そう、でしょうか……」
否定したかったけれど、何でも――生きでも破壊する、というのが事実であれば、確かに脅威と恐怖を不要なまでにじてしまうこともあるかも知れない、と思った。
現に私も今恐怖をじている。
殿下の人となりを知ってよく考えれば、悪戯に力を振りかざすような人ではないと分かるけれど、全ての人と會話をして回るなど不可能というのもある。
本人が納得しているのであれば、王位継承を放棄するというのも賢明な判斷だったのかも――。
「……ですが、運命をけれると言うのであれば、このように隔離されたような生活までする必要は無いのではないでしょうか。もっと普通に、王族らしい生活をしても良いのでは」
「王族らしい生活ー? 嫌だよ。大勢の人間にかしずかれて臣下の要を聞いたりするんだろ。俺がそんなまともな事するようになったら悪い人間ばかり引き寄せちゃうじゃないか。……このスキルは、まともそうな人からも人間の良くない部分ばかり引っ張り出すんだよ」
「そうなのですか……」
何だか々あったようだ。
これ以上深掘りするのは野暮にじて、曖昧な返事で終わらせる。
――“破壊”かぁ……。
こう言ったらなんだけど、殿下らしくないスキルだ、と思った。
なんとなく、ゆるゆるなスキルか、もしくは瘴気に関わるようなスキルな気がしていたのに。
「そういえば……殿下は、この塔がなぜこんなにも瘴気が濃いのか――ご存じなんですか?」
「ああ。さっき言ったじゃないか。俺のスキルは良くないものを引き寄せるって」
「それ、スキル関係あるんです……?」
すると殿下は形な顔をし曇らせて、遠い目をして答えた。
「多分ね。……きっと、俺が寢てばかりいるのも、たまにいたと思ったら遊ぶことしかしないのも、それを弟達が真似し始めて困り果てた陛下が俺を塔に隔離したのも――全てはこのスキルが良くないものを引き寄せたからなんだ……」
「なんでもスキルのせいにすれば良いってものじゃないですよ。ほとんど自業自得じゃないですか」
「そうかなぁ」
これは“破壊”に向いた格というより“破滅”に向かう格なんじゃないかしら。飄々としているように見えて実は瘴気に蝕まれている、とか……。
などなど、失禮な事ばかり考えていたら、殿下は突然「あっ!」と大きな聲を上げた。
「どうしました?」
「思い出した……。ステラ。君と、君の妹のことなんだけど」
話が突然さっきの容に戻った。
正直、今ここで妹の話なんてしたくないのだけど。でも一応耳を傾ける。
「君が実家でどんな扱いをけていようと、俺は君がマーブル侯爵家の正統なを引いていると思っている。妹じゃなくてね。なのになぜの子しかいない家にもかかわらず君を格下の家の次男の元に嫁がせようとしていたのかを考えた時、ひとつの可能に思い當たったんだ」
「可能、とは……?」
「侯爵は君と妹の立場を、すり替えようとしているんじゃないかって事さ。後妻と妹は元々は貴族じゃないって事だね。本當の隠し子のほうに家を継がせようとして、君がけるはずだったスキルの儀を妹にけさせ、君を社界に出さないようにして――ああ、何だか言ってて嫌な気分になってきた」
「私がけるはずだったスキルの儀を妹に……? そんな事、可能なんですか?」
「やろうと思えば出來るんじゃないか? 七歳の子供のことなんて、親が言うことが全てだ。……ステラの母君は、確かその頃には既に病で臥せっていたよね。侯爵のする事に口を出せる狀況じゃなかったとすれば、可能だったと思う」
「そんな……何て事……」
「あくまでも俺の想像だよ。でも、神殿の関係者ならそれで騙せるとしても、母君のご実家や使用人までは無理だから実際には違うかもね……。普段から接している人には本當のことが分かる訳だから」
「母の実家の人には時に一回か二回程度しか會ったことがありませんし、使用人……は、妹達が來るし前に一新されておりました」
「本當に!? ずいぶん思い切った事をするなぁ。家令なんかは先祖代々の付き合いの場合がほとんどだから、そんなに簡単に変えられないはずなんだけど」
……そう言われてみれば確かに、お父様に近いごく一部の使用人は今も殘っている。
私とフィオナをれ替えようとしていたというのが本當なら、彼らもグルだったという事になるのかしら。
だとしたら――お母様の実家とは手紙のやり取りすら無くなってしまったと思っていたのは私だけかも知れない……?
考え込んでいたら、殿下は面白そうな顔をしてを乗り出してきた。
「……調べてみようよ」
「…………殿下も一緒に、ですか?」
「ああ。そのほうが々捗るだろ。ちょっと試してみたい事もあるし」
「試したい事?」
こくりと頷き、言葉を続ける。
「明日、俺とデートしよう」
「デート!?」
思わずフォークを落として、からん、と音を立ててしまった。
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