《【書籍化】誰にもされないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】》☆ラディス・マーブル侯爵
ステラの父親視點です。
私は、間違えてしまったのだろうか。
たまにそんな事を考える時がある。
今がそうだ。
娘フィオナが部屋を出て行ってからしばらくの間、私はかつらの髪を弄りながら思いに耽っていた。
町の床屋でこののかつらを見付けた時、私は複雑な思いでこれを手に取った。ステラと同じの髪。そして“妻”と同じの髪。
買わないという選択肢は無かった。
これでようやく“妻”の“病気”が治り、私たちマーブル侯爵家は三人揃って社界に出ることが出來る。
マリアンヌのブルネットの髪をこれで覆い隠せば、立派な“妻”として人前に出せるだろう。
……私は大変な事に手を染めてしまった。それに気付いてはいるが、今更どうする事も出來ない。娘フィオナを神殿に連れて行ったあの日から、私にはこのまま誤魔化しきる以外の道は殘されていないのだ。
♢♢♢
『――お父さまぁ。フィオナ、もう待ちくたびれましたぁ』
『靜かにしたまえ。それに、教えたじゃないか。君の名前はステラだって。おうちの外では神様につけてもらった名前しか呼んじゃダメって言っただろう? 怖い魔獣に攫われるぞ』
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『は、はい』
スキルの儀をけさせるためにフィオナをステラと名乗らせて神殿に連れて來たはいいものの、待ち時間を持て余したフィオナはきょろきょろしながら大聲で話し始めてしまった。
心冷や汗をかきながら誤魔化し、しずつ進んでいく列を眺める。
隠し子を嫡子とれ替える――なぜ、このような危険な事をしようとしているのか。まだ間に合う。今なら引き返せるぞ。
そう心のどこかで良心が騒ぐけれども、引き返したところで待っているのはマリアンヌの失だ。
私の苦悩を理解してくれるただ一人の彼に、見放されたくない。
“――まぁ。あの子が侯爵様の娘なの? 人だけど貴方には全然似てないのね”
彼にせがまれて初めてステラを遠目から見せた時、彼はそう言った。
ずっとにめたまま、決して口に出來なかったその言葉を彼はさらっと口にしてくれたのだ。
そうじていたのは私だけではなかった。それだけで、救われた気がした。
ステラが五歳、フィオナが六歳の時の話だ。
“君もそう思うか……?”
“ええ。あなたのは完全にどこかへ行ってしまっているわね。ふふ、本當に侯爵様の子なのかしら。フィオナはあんなに貴方に似ているのに”
彼が視線を送った先では私達の間に産まれた娘フィオナが、花冠を作って遊んでいる。
ふわふわの金髪が風に揺れてらしい子だ。髪のといい目鼻立ちといい、の子ながら私に似た雰囲気がある。
フィオナはステラよりもやや早く産まれたのだが、隠し子ゆえに教育ができていないせいかステラよりもげだ。
バカな子ほど可いという噂は本當らしく、私はフィオナが可くてたまらない。
“かわいそうな侯爵様。ずっと不安だったのね……。私だったらそんな思いはさせないのに”
なんて優しい言葉だろう。
侯爵位を持つこの私に、かわいそうなどという言葉をかけてくれる人は彼以外に一人もいない。
そうだ。私は誰かに分かってほしかったのだ。誰にも言えない、この不安な心を。
“……君と、フィオナと生きていけたらどんなにいいだろうか”
ふとらした弱気な言葉にも、彼は優しく微笑んでくれた。
それからし経った頃、妻が季節の変わり目に風邪をひいた。
なにげなくその話をマリアンヌにすると、彼は
“まぁ、それは大変ね。お見舞いにこれを渡してあげて”
と、可らしい布に包まれたものを差しれてくれた。中を覗くと素樸な形のクッキーがっていて。
“わたしが焼いたの。貴方に食べてもらおうと思ってがんばって作ったんだけど、仕方ないから奧さんにもあげて。貴方にはわたしのぶんをあげる”
そう言って悪戯っぽく笑った。
ココアが練り込まれているというし黒っぽいをしたそのクッキーは素樸ながらどこか懐かしい味わいがあり、私は素直に彼の心配りへ謝した。
せっかくの贈りだったので、執事を通して妻の食が出ない時の捕食に出してもらった。
妻の風邪はいつまでも治らなかった。
瘴気に深く憑り付かれている、と診斷をけたのはそれからしばらく経ってからのことで。
“えーっ? 貴方の奧さん、聖の末裔のくせに瘴気にやられちゃったのー? 後ろめたいことがあるからそうなるんじゃないかしら”
マリアンヌはそう言った。なるほど、言われてみればそんな気がしてくる。
やはり。
ずっとそうじていた。
社界で笑い者にされるので鑑定をける選択肢などはなから存在していないが、そんなものをけずとも結果は分かる。やはりあの子は私の娘ではない。
きっと、あの護衛騎士が。いや山賊の可能も。最悪だ。そのような筋の者を我が家の跡取りに據えるなど斷じて出來ぬ。
こうなったらフィオナしかいないではないか。しかし、家柄だけは立派なあの妻を正當な理由なく放り出す事は出來ない。
“ねぇ、侯爵様……。わたしね、考えがあるの”
妻への疑を確信に変えた頃、マリアンヌはそう言って笑った。
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