《【書籍化】誰にもされないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】》政略的

後書きにお知らせがあります。

「鑑定をける?」

翌日、約束通り塔にお見えになった陛下をお迎えした私は夜通し考えて出した結果を伝えた。

お父様とのの繋がりを、鑑定スキルによって確かめてもらう事に決めたのだ。

「ずいぶん早いのだな。……もうし考えても良いのだぞ」

「いえ。もう決めました。母の潔白を証明してみせます」

一晩考えた結果、私のお母様は穢されてなどいないと信じるに至った。

だって、華やかで明るくて太みたいで、お父様と険悪なまま病に臥せってもなお気丈に振る舞っていた人が――後ろめたい気持ちで毎日を過ごしていたなんて事、あるはずがない。

拠はそれだけ。もちろん私が間違っている可能はある。

結果を知るのは怖いけど……きっとお父様も同じ気持ちで、鑑定をけられずに長い時間をかけて疑念ばかり膨らませて――やがてそれが真実になってしまったのだ。

鑑定の結果がどうであろうと、私が前に進むためには本當の事を知る必要がある。

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「片を、つけたいんです」

「そうか……。では、手配をしよう。……が、今のうちに々と下準備を整えておきたいのだが良いかね?」

「下準備ですか? どのような事を?」

「まずは君の分の保証だな。鑑定の結果に関わらずマーブル侯爵家の先は暗い。君には確たる後ろ盾を置く必要がある」

「後ろ盾……」

王妃様は私に権力から離れるようにとおっしゃった。私もあのお話には納得している。

「陛下。お気持ちは有り難いのですが、私はマーブル家と運命を共にしようと思っております」

「気持ちの問題ではないのだよ。我が王家と、君の母君の祖國との関係の話だ。今回の件は完全に我が國の落ち度でしかない。侯爵を罰する程度では到底納得されないだろう。外見の特徴だけをとっても君があちらの縁であることは疑いようがないのだからな。私達は、君を丁重に扱っているとあちらに見せなければならない」

……確かに。私の個人的な気持ちを排除して考えるのなら、陛下の仰ることはごもっともだ。

流はなくとも縁は貴族の面子そのもの。蔑ろにされていると思われれば外問題になりかねない。

ここはれておく方がみんなの面子が立って平和かも……。

うぅ、王妃様のご忠言と陛下の平和志向、どちらも納得できる。兼ね合いが難しい……。

お母様のご実家の件が落ち著くまでは、陛下がご用意される“後ろ盾”をけておくのが良いのかも。

「承知いたしました……」

「うむ。ではさっそく、セシルとの婚約の話を進めようか」

「はい!?」

今なんて言った!?

「……陛下! 私の聞き間違いだと思うのですが! ……今なんとおっしゃいましたか」

なんかものすごい事を言われた気がする。

「セシルとの婚約と言ったのだよ」

「いやいやいや! き、急にそんな事を言われましても!」

「なんだ、嫌なのか?」

「いいいい嫌ではありませんが! 殿下にも選ぶ権利があるのでは!?」

「ふむ……。確かに、言われてみればそんな気もするな。セシル、どうする?」

「いいよ」

「はい決まり。で、公布の時期なのだが」

「軽っ!」

思わず言葉がれる。

だって実際軽すぎよね!? 今の會話で王家の婚姻が決まったとはとても思えないのだけど!

「ち、ちょっと待って下さい! 本當によろしいのですか!? 私は婚約を放棄して家出したような人間ですよ!? とても殿下に相応しい人間だとは思えないのですが!」

「相応しいか相応しくないかは私が決める事なのだよ、ステラ嬢。考えてもみなさい。セシルは今でこそこんなに元気に見えるが、君が來る前まではほとんど起き上がってこない酷い生活だった。君が現れなければ今も自墮落なままであっただろう。……これは裏を返せば、君が側にいなければまともな生活を送れない質という事になる」

「そ、そうなので……しょうか……?」

「うむ。あとは君の分と後ろ盾の件だな。その責務を負うに我が王家よりも最適な家は無いと私は考える。セシルの質の件と君の分を保証する件、この二點だけ取っても他の選択肢は無いと思っていた。君達の婚約は昨日今日思い付いた事ではないのだよ。ランランちゃんを初めて見た時からずっと考えていた。お分かりかな」

ランランが決め手なの……?

いや、さすがに違うか。それにしてもさすが陛下。

なんだか納得させられてしまったわ……。

「はい……。大変、畏れ多いことでございますが……」

おそるおそる頷くと、陛下はとても良い笑顔になった。

「良かった。もしも拒否されたら奧の手で説得しようと思っていたところだったのだよ」

「奧の手?」

「そう。これなのだがね」

そう言って陛下は手土産の籠の中からなにか取り出した。

これは……冊子?

橫で靜観していた殿下もを乗り出し、覗き込んでくる。

「父上。なんですか? これは」

「お前宛ての釣書だよ」

「釣書!?」

なぜ嬉しそうなのですか、殿下! やっぱりモテたいのですか!?

目を輝かせて釣書を開く殿下を橫から眺める。婚約を了承した直後とは思えない顔をしておられるわ……。

私は文句を言える立場じゃないから何も言わないけど。

アルフレッド様の時といい、やはり私はどこに行ってもこうなるのね。

悲しい気持ちになりながらチラッと釣書を見ると、そこにはしいフワフワの金髪に輝く丸い瞳、き通るような白いの儚げなが描かれていた。

みたいでとっても可い……。どんなお方なのかしら。

というか、私よりこちらのお方のほうが普通に良いのでは……。

なぜ陛下はこれを奧の手などとおっしゃったのだろう。

不思議に思って釣書の名前の欄を見ると、そこには非常に見覚えのある名前が書かれていた。

「“ステラ・マーブル”……っ!?」

思わずひっくり返りそうになってしまった。

殿下は肖像畫と私を互に見比べて困したような顔をする。

「へぇー、これステラなんだー。……君、肖像畫と違くない?」

殿下。それは天然なんですか?

「……あからさまに別人じゃないですか。これは私の妹ですよ」

「妹? 準聖の? ……この前のお茶會にこんな子いたかなぁ。あの時いた?」

「はい。隅っこでうずくまっていた金髪のの子です。顔立ちはともかく、髪や目のは確かに大こんなじですね」

「……これはこれで別人だなぁ。父上、なぜこんなものを?」

「お前と見合いがしたいそうだ。セシル、お前。柄をマーブル侯爵に狙われているようだぞ」

「えー……。俺はちょっと遠慮しておこうかな……」

殿下はそう言ってぱたんと釣書を閉じ、そっと籠の中に戻した。

來月5/8日にこのお話の1巻が出ます!

報告に特典報など書きました。よろしければご覧になって下さい!

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