《【書籍化】誰にもされないので床を磨いていたらそこが聖域化した令嬢の話【コミカライズ】》ルンバで踴る王妃様

こちらの聖域化令嬢、書籍1巻発売中です!

ぜひよろしくお願いいたします。

「行ってらっしゃいませ」

という訳で、一人になった私は大広間で気合いをれた。

するとポチがスカートの中から飛び出していって、大広間中をぽんぽんと跳ね回る。どうやら広々とした空間が嬉しいようだ。

微笑ましい気持ちで眺めながら私は夜中にこっそり開発したお掃除グッズ、棒の先端に布切れを巻き付けたものを取り出した。

布がし緩んでいたので改めて巻き直していると再び扉が開き、今度は王妃様がって來た。

お茶は飲み終えたようだ。王妃様は、

「良かった。間に合ったわ」

そう言いながらつかつかと歩き、大広間の壁際に寄りかかる。

そこでふと壁を見上げ、私に聲をかけてきた。

「ねぇ、ステラ。これを見て」

「はい、なんでしょうか。……あっ」

王妃様が扇で指した場所は、一枚の絵畫だった。青みのある銀髪のが描かれている絵。もしかして――。

「こちらが先代の聖様ですか?」

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「そうよ。ほら、そっくりでしょう?」

本當だ。

私よりは落ち著きのある大人のに見えるけれど、確かに似ている。

”聖様が若かった頃はきっとこんなじだったのね”と神長に言われたのを思い出した。

數百年前に存在した浄化の聖。どのようなお方だったのだろう……。絵を見上げている橫で王妃様はおっしゃる。

「スキルは伝するわけでは無いけれど、分類で見るとやはり似たような質のものになる率が高いのよね。ステラの筋はきっと綺麗好きなんだわ」

「そう、ですね……。母も、元気だった頃は自分での回りの整理整頓をしたりして……かなりの綺麗好きでした」

「でしょうね」

王妃様はごく自然な作で足元にじゃれるポチに腰掛け、扇で首筋を優雅に仰ぐ。

「――邪魔して悪かったわね。お仕事、始めちゃっていいわよ」

「はい」

頷いて、はしごを立てかける。今からこの大広間を私一人で掃除するのだ。

元々しっかり手れされている場所ではあるけれど……とにかく広いので、それなりに気合いが必要になる。大変だけど、ないのでその點は楽だ。

「手伝えなくて悪いわね。掃除なんてしたことが無いし、聖域もわたくしでは作れないから」

「お気になさる事ではございません。これは私の仕事ですから」

そうだ。聖域を作れるのは私だけ……という話以前に、楽しいから一人でも全然構わないのですよ、王妃様。

――さて、まずは壁の埃落としからだ。はしごを登り、さっそく”掃除”と”浄化”を同時に発しながらハタキがけをする。壁から天井にうっすらと付いていた埃やクモの巣に向けてハタキをひと振りすると、私が腕を広げたくらいの範囲がパッと火花が散るようにが弾けて”綺麗”になった。

――凄い。最高。ゾクゾクする。

払った場所がうっすらり出したので、聖域化もしっかり出來ている様子。一度に綺麗に出來る範囲が広いおかげで掃除がものすごく捗る。

しずつ場所を移しながら聖域の範囲を広げていき、大広間の天井付近のおよそ四分の一くらいをピカピカにらせた時、不意にそれはやって來た。

“掃除:B。浄化:D。スキルの経験が一定數に達し、連攜が可能になりました”

に文字が浮かんだ。

……連攜って?

疑問に思ったけれどそれは一瞬の事で、啓示が降りてきたかのようにすぐに連攜を理解する事ができた。

――私、自分のスキルを聖獣に使わせる事が出來るようになったみたい。私とランラン、ポチの間に”道”ができている。

これまでも繋がりをじる事はあったけれど、ここまではっきりとしたものをじるのは初めてだ。

……と、いう事は?

啓示の教えに従い、ポチと連攜を実行してみる。私の中から力が流れ出ていくのをじる。

すると王妃様の腰の下で大人しくクッションになっていたポチがぱっとり、ぽよんと跳ねたと思ったらるようなきで床の上を移し始めた。

「あら? どうしたのかしら。急にき始めて」

ポチの上の王妃様は戸っているご様子だ。きょろきょろと辺りを見回して背後――ポチの移跡がっているのに気付き、驚きの聲を上げる。

「えっ!? ちょっと……この子、聖域を作っているわよ!?」

「驚かせてすみません! たった今レベルが上がって、できるようになったようなのです!」

「えぇ……? なにそれ、そんなのって有りなの……?」

しながらポチに運ばれている王妃様の姿は不敬ながら大変可らしかった。

つい口元が緩むのを一生懸命こらえるけれど、床を掃除しながら真っ直ぐに進むポチが壁に當たって方向を変えた時に王妃様の向きも一緒にくるんと変わったのが何かのツボにはまってしまい、フフッと笑いがれてしまった。

「……驚いたけど、これはこれで楽しいわね。こんな乗り初めてよ。ポチ、わたくしをどこへ連れて行くおつもりなのかしら?」

大広間をつるつるとるように移するポチと茶化す王妃様を眺めながら、私も掃除を再開する。

屆く範囲の天井と壁を聖域化し、次の場所に移するためにはしごを下りた。――その時だった。突然ぐらりと目眩がして、はしごから足を踏み外してしまった。

上下が反転し、ふわりと浮遊を味わい――床が目前に迫って來るのを何もできずにただ見ていた。

ゴッ、と鈍い音が耳に響く。

「きゃあああーっ! ステラ! 大丈夫!?」

大丈夫です、と言いたかったけど聲が出なかった。背中を強かに打ったようだ。

痛みが遅れてやって來て、顔をしかめる。

「嫌だ、どうしましょう! だ、誰か呼んで來ないと……!」

慌てる王妃様の背後で扉が開いた。誰かが來たようだ。

「あら! 陛下! ちょうど良いところに……って、どうなさったのです!? セシル!? 貴方どうしたの!?」

「瘴気にやられたようだ。聖から一定時間離れるとこうなるらしい。……運んで來た私も、し當てられてしまった」

目をやると、顔の悪い陛下に肩を支えられた殿下がぐったりした様子でって來た。の周りには黒い瘴気が濃く渦巻いている。

ランランは慌てた様子で周りをちょこちょこ歩きながらに瘴気を取り込んでいるけれど、あまりの濃さに吸収が追い付かないようだ。

「なんて事! こっちも今ステラがはしごから落ちてしまったところですのよ!」

「なんだと……。大丈夫なのかね」

「分からないですわ! もう、どうしてこんな事に」

「とにかく人を呼ぼう……」

「わ、わたくしが呼んで來ます!」

意識の無さそうな殿下を私の橫に置いた陛下はゼエゼエと息を切らして座り込み、王妃様は慌てて大広間から出て行った。聖域のおかげだろうか、この大広間にった時から殿下に纏わり付く瘴気はしずつ薄れているようだ。

でもまだ足りない――そう思って腕をばすと、背中にビキリと痛みが走った。痛みに耐えながら殿下の腕にれ、浄化を発する。

黒い靄はに変わり空中に溶け、同時に殿下の目がゆっくりと開いていく。

――良かった。

それを見屆けたところで、私の意識は消失した。

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