《優等生だった子爵令嬢は、を知りたい。~六人目の子供ができたので離縁します~(書籍化&コミカライズ)》011

真っ青な空に、大きな雲が浮かんでいた。日差しは、ポカポカと溫かいが空気がひんやりしている。秋なのだなと、セレスティーヌは一人、大きなボストンバッグを持って駅に佇んでいた。

この國には、鉄道が走っていて隣の國と結ばれている。いくつかの駅に停まりながら、六時間程かかって隣國に著く事になっている。

セレスティーヌは、誰にも言わずに、駅に佇んでいた。

ブランシェット家のみんなには、実家のフォスター家に帰ると言って出て來た。実家には、離縁すると言う事実だけを書いた手紙を送ったのみ。

兄のカールは、きっと近々セレスティーヌが帰って來るだろうと思っている。

ブランシェット家の馬車でここまで來たが、従者にお金を握らせて自分が汽車に乗って出発するまで屋敷には戻らない事を約束させた。

セレスティーヌは、新しい自分の人生を始めたかった。公爵家の夫人としての自分を知らない場所で、ただのセレスティーヌでいられる場所を探したかった。

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年甲斐もなく、みんなには悪いと思ったがセレスティーヌはワクワクしていた。

これからどんな事があるかしら? と想像にを膨らませる。何故だか、一人になる不安よりも何とかなるだろうと言う気持ちが勝っていた。

ポッポーと汽笛を鳴らして、汽車が駅の中にって來る。ガシャンと大きな音がして、汽車の扉が開く。

多くの人が、扉から出て來た。セレスティーヌは、汽車から降りて來る人々を避けながら人波が落ち著くのを待っていた。

暫くして、降りる人達の波が引きセレスティーヌが汽車に乗ろうとステップに足を掛けた。ふと橫を見ると、隣の扉にも同じ様に汽車に乗り込もうとしている老紳士の姿が目にる。

汽車のステップが思ったよりも高かった様で、足にどこか悪い所があるのか乗りにくそうに手こずっている。

セレスティーヌは、見かねて聲をかけた。

「あの、お手伝いいたしますわ」

老紳士が、セレスティーヌの方を振り返る。

一目で、位の高い紳士だと分かる。シンプルながら、著ている服が一級品だったから。

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「ああ、申し訳ないね。手を貸して貰えると助かるよ」

老紳士が、セレスティーヌに向かって返答する。セレスティーヌは、その言葉を聞いて老紳士の傍による。

足を上げやすい様に、腰に手を當てて補佐をした。セレスティーヌも、同じ扉から汽車に乗り込み挨拶をわす。

「お嬢さん、助かったよ。ありがとう。従者が、荷を取りに行ったから先に乗って待ってようとしたんだが……。年は取りたくないもんだね」

そう言って、老紳士がニコリと笑う。

「いえ、大した事ありませんわ。席は、どこかわかりますか?」

セレスティーヌは、これも何かの縁よねと最後まで面倒を見る事にする。

老紳士が、セレスティーヌに切符を見せて、座席番號を教えてくれる。見ると、セレスティーヌと同じ一等席で個室だった。

しかも、セレスティーヌの隣の部屋だった。

「あら、私の隣の個室ですわ。一緒に個室まで行きましょう」

セレスティーヌは、にっこり微笑んで個室に向かってゆっくりと歩きだす。老紳士も、悪いねと言いながら後ろを付いて來た。

個室の前まで來て、座席番號を確かめると間違いなく老紳士の座席番號だった。

「こちらですわ」

そう言って、セレスティーヌは個室の扉を開けてあげた。

「何から何まで、ありがとう。もし良かったら、後でしお茶でもしないか? 長旅だから、暇なんだよ」

老紳士が、セレスティーヌに提案する。セレスティーヌは、し考えつつも変な人じゃなさそうだし折角だからいいかなと返事をした。

「はい。私でよければ」

「では、後で準備が出來たら従者に呼びに行かせるよ」

そう言って、老紳士は個室の中にって行った。

セレスティーヌもまた、隣の自分の個室へ足を進める。

扉を開けて中にると、二人掛けの椅子が向かい合わせでボックス席になっていた。思ったよりも中が広く、飲食が出來る様な小さなテーブルも備え付けられている。

セレスティーヌは、荷を隅に置き席に座って一息吐く。

本當に、私この國を出て行くのね……。この先の事は、何も決めていないけどそんな旅も楽しくていいわよねと心の中で呟く。

汽車が、出発するのを今か今かと待っていた。

シュッシュと汽車が、音を鳴らしながら走っている。セレスティーヌは、移り行く景を窓越しにずっと見ていた。

コンコンと扉をノックする音がする。

「はい」

セレスティーヌが聲を出す。

「隣の個室の者です」

若い男の人の聲だった。セレスティーヌは、扉を開けてノックをして來た男を見やる。想像よりもずっと若い男だった。黒い髪で、とても真面目そう。丁度、セレスティーヌの息子達と同じくらいの年かもなと頭を過る。

「お茶のおいかしら?」

セレスティーヌが、頭を傾げる。

「はい。先ほどは、主人がお世話になったようでありがとうございました。宜しければ、お茶とお菓子をご用意致しましたのでどうぞ」

が、笑顔でセレスティーヌに返答する。

「では、お邪魔させて頂くわ」

セレスティーヌは、素直にいに応じる。一人で窓の外を見ているのも、飽きてきた所だったので丁度良かった。

セレスティーヌが、隣の部屋にると部屋の中は、セレスティーヌの個室よりも広くとても豪華な部屋だった。

恐らく、この汽車の座席の中で一番良い席なのだろう。セレスティーヌが、部屋の奧を見ると先ほどの老紳士が椅子に腰かけて窓の外を見ていた。

「旦那様、お連れしましたよ」

従者の男が、老紳士に聲を掛ける。老紳士は、セレスティーヌの方に向き直り言葉を発した。

「お嬢さん、來てくれてありがとう。こちらに座って一緒にお茶を飲もう」

そう言って、自分の向かいの席を勧めてくれた。セレスティーヌは、席の方に歩いて行く。椅子に腰かける前に、自己紹介をした。

「お茶にお招きいただきありがとうございます。私(わたくし)、子爵家の娘でセレスティーヌ・フォスターと申します。よろしくお願いします」

セレスティーヌが、名前を名乗ると老紳士が立ちあがる。

「そうだったな。まだ、名前も名乗っていなかった。私は、公爵家の者でアルバート・グラフトンだ。よろしく頼む」

そう言って、目じりに皺を刻み優しく微笑んだ。セレスティーヌは、公爵家と聞いて驚く。位の高そうな方だと思っていたが、まさか公爵家の方だなんて……。

今更ながら、子爵家の娘が良かったのかと心配になる。

二人が、椅子に腰かけると従者がお茶とお菓子をお盆に載せて運んで來た。手慣れた様子で、テーブルに綺麗に置いていく。

準備が整うと、部屋の隅で控えていた。

「セレスティーヌ嬢と呼んでも、構わないかな? 私の事は、アルバートと呼んでくれて構わないから」

アルバートがティーカップに手を掛けながら訊ねる。

「はい。アルバート様」

セレスティーヌが笑顔で返事をする。アルバートの態度がらかく、セレスティーヌの分を気にしている素振りが無い。

大丈夫そうだなとセレスティーヌは安心して、お茶に口を付けた。

汽車の中だとは思えない程、味しい。流石は、公爵家の従者だと心する。

「セレスティーヌ嬢は、リディー王國には何をしに行くんだい?」

アルバートが、不思議そうに聞く。

セレスティーヌは、気になるよねと心の中で思う。普通、貴族のが一人で、汽車に乗っている事なんてないだろうし……。

なんて答えようかなと考える。

「自分の時間が出來たので、旅行に行こうと思って。それと、リディー王國に嫁いだ友達に會いに行こうと思っています」

セレスティーヌは、當たり障りのない回答をする。アルバートは、それを聞いてふむふむと頷いている。

その後は、アルバートが自分の事を話して聞かせてくれた。アルバートは、元々はセレスティーヌが生まれ育ったインファート王國出なのだそう。

若い時に、隣國のリディー王國に留學した時に奧さんと知り合ってそのまま結婚したのだって。

なんでも奧さんが公爵家の一人娘だったらしく、アルバート様が婿にるしか結婚の許可が下りなかったと懐かしそうに話してくれた。殘念ながら、奧様は數年前に亡くなられてしまわれたそうだ。

それで今回久しぶりに自國に帰って來て、その帰りだと教えてくれた。

アルバートが、フランクに何でも話してくれたので、つられてセレスティーヌも自分の事を話してしまった。

結婚していた事、のつながらない子供が五人いる事。離縁して、心機一転旅行に出た事まで全部。

「なるほどな。の一人旅なんて珍しいから、どうしたのかと思ったよ。でも、明るい一歩な様で良かった良かった」

アルバートは、セレスティーヌの事を心配していた。何か思いつめる事があって、家を一人で出て來たのではと思っていた。

「ご心配させてすいません」

セレスティーヌが、笑って言う。

「それなら、泊る所なんかもまだ決まってないのか?」

アルバートが、セレスティーヌに聞く。

「はい。急ぐ旅ではないですし、著いてから決めればいいかなと思いまして」

セレスティーヌは、正直に話す。

「なら、私の屋敷に泊ればいいよ。セレスティーヌ嬢に、頼みたい事もあるしな」

アルバートが、意味深な事を言う。セレスティーヌは、頼みたい事って何かしら? と気になる。

正直、何も考えていなかったから申し出はとても有難い……。ただ、同じ汽車に乗り合わせただけの自分が、お世話になって良いだろうか? セレスティーヌは、悩む。

「とても有難いのですが、私なんかがお世話になってもいいのでしょうか?」

「何言っておる。もう、私達は立派な友人だろう?」

アルバートが、茶目っ気を込めて言う。何だか、お年の割に明るくて楽しい人だなとセレスティーヌは思った。

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