《【書籍化】世界で唯一の魔法使いは、宮廷錬金師として幸せになります ※本當の力はです!》20.弱強食①
それから數日が経って、私にはまた錬金師工房での勤務の日がやってきていた。
いつも通り、ローナさんの姿を探す。けれど、艶やかな栗は見えないしはきはきとした爽やかな聲も聞こえない。
どなたかほかの方に指示をもらおうと思ったけれど、話しかけられそうな人がいない。似た業務をしている同世代の錬金師さんたちにも目を逸らされてしまって、鼓が早くなってしまう。……ど、どうしよう。
「ローナさんはお休みみたいよ?」
軽く震えかけていた私は、ミア様に肩を叩かれてさらに震えあがった。
「お、お休みなのですね……」
「いい加減に慣れなさいよいつまでおどおどしてんのよ、まったく」
「……ありがとうございます。……ではほかの方に指示を、」
「いいのよ。アナタの分も仕事をもらってきてあげたから。裏にある保管庫から素材を選別して持ってきなさいだって。レベルはこの紙に書いてあるやつを參考に揃えるようにって」
「……はい」
ミア様が差し出した紙をけ取り、私は彼の後ろをついていく。ミア様が苦手なことに変わりはないけれど、これは私に與えられた仕事だ。
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すると、前を歩いていたミア様が振り返って面倒そうな視線を送ってくる。
「ちょっと。後ろを歩くの、やめてくれない!?」
「も……申し訳……、」
「そうやって謝るのもやめたら? 知っている子を思い出してイライラするのよね」
「!」
まさか『フィオナ』のことでは、と、青くなった私だったけれど、ミア様は私の様子は気にも留めず、また歩き始めた。
「いい? この世界は弱強食なのよ。わかる?」
「わかりませ、」
「アナタみたいに弱い子は生きていくのが大変よ? もっと強かになりなさいよ」
「……」
このミア様は、私がアカデミーの同級生として知っている彼と本當に違いすぎる。かわいらしくて皆に好かれるミア様は幻想だったみたい。このミア様なら、『フィオナ』を陥れようとするのも……殘念だけど、納得してしまうような……。
そういえば、アカデミーではみんなの中心だったミア様だけれど、ここの工房ではいつも一人。どうしてなのかな。
そんなことを思っていると、ミア様は聲を落として告げてくる。
「特に、貴族のご令嬢には気をつけた方がいいわよ。大人しい顔をして、裏ではやりたい放題の子だっているんだから。ほんと、人は見かけによらないんだから」
「……」
「それに、私ね、生まれつき何もかも持っている人って大嫌いなのよね。その価値をわかっていない人ほど見ていると腹が立つわ」
「……」
もともとこれ以上ミア様からの問いに答えるつもりも相槌を打つつもりもなかったけれど、あまりに刺々しい容に気持ちが暗くなってしまう。
でも大丈夫。私はしずつ進めている。うん……大丈夫。
數分歩いて辿り著いたのは、古びた扉の前だった。保管庫は、風通しを良くし當たりを避けるために、目につきにくい場所にあるのだ。
中にると、漂う薬草の香りにしだけ落ち著く気がする。
「この保管庫って、昔は気にらない新人を閉じ込める場にも使われていたみたいよ。アナタはアカデミーも出ていないのに工房で結構目立っているから、気をつけた方がいいんじゃない?」
「!? ……そ、そんなこと……」
「そんなこと余裕であるわよ? ローナさんからの評価も高いし、大事にされているのが見えるもの。しかも、最近はよくわかんないけどレイナルド殿下のお手伝いまでしているみたいじゃないの? もしあなたの魔力量が富でしかも錬金までできちゃったりしたら、あっという間に妬みの対象なんだからね? 実際には能力がなくてほんとによかったわね」
まさかそんなことをするのはミア様ぐらいでは、と思ったけれど、私にこんなことを教えてくれる姿から悪意はじられなくて。
そういえば、し前にクライド様は私に関して「人事系でいい報告が上がってる」「工房での評判が上がり始めてる」と仰っていたような。もし本當だったらありがたいことだけれど……。
困している私を保管庫に押し込んだミア様はあっけらかんと言い放った。
「さぁーて。アナタをここに案したし、私は帰るわね! 素材を目視でレベル別に分けて持っていくなんて面倒極まりないし私がいても役に立たないもの。ちゃんと仕事しなさいよ!」
「はっ……はい?」
まさかの展開に間抜けな聲を出してしまったけれど、私もミア様と二人きりなのはあまり好きではないので、ありがたく頷くことにする。
きっと、一人のほうがスムーズに仕事が進むと思う。そして、きちんと一人で作業したと報告しよう。うん。
ミア様が足取り軽く去っていくのを確認した私は、早速メモに視線を落とした。大好きな薬草の香りに囲まれつつ、珍しい素材に目を輝かせて作業を進める。
……と、風で扉がキイキイ言っているのが気になって、周囲に誰もいないのを確認してからこっそり土魔法を使い固定した。
そのまま集中してどれぐらいの時間が経っただろう。手元のバスケットにはレベル別に分けられた素材がいっぱいになった。
そろそろ工房に戻らなきゃ、そう思ったところでり口の扉からガタンと大きな音が聞こえた。振り返ると、一人の男が立っているのに気がつく。
「あの……何か……」
「! えっと……手伝おうと思ってきたんだけど……お邪魔だったかな」
それは、工房で働く錬金師の方だった。
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