《【書籍化】世界で唯一の魔法使いは、宮廷錬金師として幸せになります ※本當の力はです!》27.ローナさんのお手伝い①
クライド様が持ってきてくださった鍵を使って保管庫を出た私は、お二人と別れて工房に戻った。
「あ! どこに行っていたのよ。ずっといないから、私の仕事が増えて大変だったじゃないの!」
「えっと……保管庫での素材集めに手間取りまして」
頬を膨らませたミア様に話しかけられてホッとする。この前まで話しかけられるだけでドキドキしていたのに。言い方は刺々しいけれど、し心配してくれているみたい。
「ローナさん、もう戻ってるわよ。この後手伝いがあるんでしょう? ……私も後で見に行くから」
「……えっ?」
「當たり前でしょう。なんか皆注目しているわよ? ローナさんの試作品についてもだけど、サポートがアナタだから」
「……」
いつもならドキドキして呼吸が速くなってしまう私だけれど、今日はし落ち著いている。だって、レイナルド様に宣言したのだ。自分の力で何とかしたい、って。
そうしていると、背後からデイモンさんに話しかけられた。茶の短髪に、がっしりとした軀、錬金師見習いの白いローブ。さっきレイナルド様がおっしゃっていたのと同じ特徴にため息が出る。
Advertisement
「その籠、ローナさん個人のアトリエに持っていこうか」
「デイモンさん……」
「長い時間寒いところにいて疲れただろう? 遠慮しないで、ほら」
籠の持ち手を摑まれたのを、私はぎゅっと握りしめて抵抗する。
「ま……前にも申し上げましたが……これは私の仕事ですので大丈夫です」
「そ、そんなに警戒しなくたって。俺は別にただ手伝おうとしただけなんだけど」
「……お気持ちだけ、ありがたく」
デイモンさんの言葉に言い訳のようなものをじてしまったのは私だけではないと思う。その証拠に、ミア様はツンとすましたお顔で「ほらね?」って囁いていた。
◇
王宮にある錬金の工房はし複雑な作りになっている。
工房が置かれる一帯のり口ではレトロな扉と呼び鈴が出迎えてくれて、そのカウンターを抜けると一般的な錬金師が働く工房がある。
そこでは、肩に紫の線がった宮廷錬金師と白いローブを著た見習いが一緒に働いていて、王宮のオーダーをけてポーションや魔法道を生している。
王宮の外から持ち込まれたポーションが集まるのもこの部屋だし、私が週に二回手伝いをするのも基本的にはこの場所。そして、衝立の向こうは広い壁一面が素材の収納棚になっている。
大小の瓶に詰められたたくさんの寶石や薬草のほか、生前の処理を施している最中のハーブやいろいろな湖の水、設計図を描くのにふさわしい布などが綺麗に並んでいて、見るだけで心が安らぐ場所。
そして、奧にはさらに扉がある。扉の先にはいくつかの個室が並んでいて、宮廷錬金師の中でも特に地位の高い人や能力を認められた人だけが持てるアトリエになっているのだ。
今日、私がお手伝いする生はそこにあるローナさん個人のアトリエで行われるものだった。
「この前、商業ギルドに提出されたっていう魔法道の設計図、錬金師ギルド経由で見たわ。面白かった」
「あ、ありがとうございます……!」
ひとつに結んだ栗の髪を揺らして快活に笑うローナさんに、私はこまる。そんな私を見て、ローナさんはさらに目を細めた。
「そんなに張しなくてもいいのよ。今日の生には時間差で素材の加工が必要なものもあるから、サポートにってもらうだけなの。不測の事態がない限りあなたには見ていてもらうだけだから」
私はただこくこくと頷く。この工房で手伝いをさせてもらえるようになってから、ローナさんは本當に私の憧れで。
今朝、アシスタントを頼まれた時は訳がわからなくてパニックになってしまったけれど、改めて考えると、ローナさんの生を真近で見せてもらえるとてもいい機會だと思う。
とにかく、學べるところはきちんと學ばなきゃ……!
そう決意した私の視界に飛び込んできたのは、とても珍しい素材だった。
「ローナさん、その素材って……」
「あら、気がついた? これね、さっき獲(・)っ(・)て(・)き(・)た(・)ばかりなの。満月の翌朝にしか現れないシルバーウルフの爪。間に合わないかと思ったんだけど、何とかなってよかったわ」
「あの……と、とっても貴重なものではないですか……!」
「ええ。市場にはなかなか出回らないし、數人の冒険者と同行してちょっと大変だったのよ?」
「……!」
私が普段生に使う素材は、薬草や寶石、湖の水をもとにしたものが多い。けれど、いろいろな依頼をけることが多い宮廷錬金師はこんな風に魔の爪やを素材にすることもある。そういうものからつくられるのは、ほとんどが特別な魔法道なのだ。
わくわくが堪えられなくなった私は、聞いてみる。
「この素材のリストを見ながらずっと考えていたのですが……今日は何を生されるのでしょうか……? 珍しい効果を持つポーションや何かの魔法道の応用ではないですよね……?」
私の問いに、ローナさんはふふっと悪戯っぽく笑った。
「今日作るのはね、いわゆる“空飛ぶ絨毯”なの」
「空飛ぶ……!」
「そう。私ね、ここで働くようになってから実用的なものばかりを作ってきたのだけれど……。こういうのをずっと作ってみたかったのよ。だから今日をずっと楽しみにしていて、將來有そうな錬金師さんにサポートまでお願いしちゃったの。……素敵でしょう?」
「わ、私もそういうの、大好きなんです……!」
キラキラと輝くローナさんの瞳を見ていると、私まで聲が上ずってしまう。
さっき、工房で冷たい視線にさらされてその後保管庫に閉じ込められたことなんて、すっかり頭から消えてしまった。
- 連載中60 章
【書籍化・コミカライズ】小國の侯爵令嬢は敵國にて覚醒する
豊かな小國サンルアン王國の宰相の娘にして侯爵令嬢のベルティーヌ。 二週間後の結婚を控えていた幸せなある日、自國が直接関わってはいない戦爭の賠償金の一部として戦勝國に嫁ぐことになってしまう。 絶望と諦めを抱えて戦勝國へと嫁ぐ旅を経て到著したベルティーヌは、生まれてこの方経験したことのない扱いを受ける。 「私はなんのために生まれてきたのか」と放心するが「もう誰も私をこれ以上傷つけることができないくらい力をつけて強くなってやる」と思い直す。 おっとりと優雅に生きてきた侯爵令嬢は敵國で強く生まれ変わり、周囲を巻き込んで力をつけていく。 □ □ □ 小國令嬢の累計アクセス數が2022年3月12日に1千萬を超えました。 お読みいただいた皆様、ありがとうございます。
8 179 - 連載中8 章
學園事件証明
整合高校の七不思議にこんな話がある。 誰も知らない不老不死の生徒が存在すると… 根倉で性格の悪いただの生徒である和鳥 野津(わとり のず)は學校で起こった數々の事件を推理する…
8 162 - 連載中19 章
ちょっと怒っただけなんですが、、、殺気だけで異世界蹂躙
子供の頃から怒るとなぜか周りにいる人たちが怖がりそして 気絶した。 主人公、宮城ハヤトはその能力を絶対に使わぬよう怒らないようにしていた。異世界に転移するまでは、、、 「なんで俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!このクソボケがーー!!!どいつもこいつもムカつく奴は俺のスペシャルなドロップキックをプレゼントしてやるぜ!?」 最強系ブチ切れ主人公のストレス発散異世界物語です。 ギャグ要素も入れていくので気軽に読んでください。 処女作なので読者の方々には生暖かい目で見守っていただけたら幸いです。5日に1回更新予定です。
8 124 - 連載中13 章
魅力1000萬で萬能師な俺の異世界街巡り〜
毎日毎日朝起きて學校に行って授業を受けて、家に帰って寢るという、退屈な學校生活を送っていた黒鐘翼。 何か面白いことでもないかと思っていると、突然教室の中心が光り出し異世界転移をされてしまった。 魔法の適性を見てみると、全ての魔法の適性があり、 中でも、回復魔法の適性が測定不能なほど高く、魅力が1000萬だった。さらに職業が萬能師という伝説の職業で、これはまずいと隠蔽スキルで隠そうとするも王女にバレてしまい、ぜひ邪神を倒して欲しいと頼まれてしまった。が、それを斷り、俺は自由に生きるといって個別で邪神を倒すことにした黒鐘翼。 さて、彼はこの世界でこれからどうやって生きていくのでしょうか。 これは、そんな彼の旅路を綴った物語である。 駄文クソ設定矛盾等ございましたら、教えていただけると幸いです。 こんなクソ小説見てやるよという方も、見たくもないと思っている方もいいねとフォローお願いします。
8 145 - 連載中94 章
無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。
無能の匠 そんなあだ名を現実世界でつけられていた夢も希望もないダメ主人公{多能 巧}による突然の異世界への転移。 ある日変な生き物に異世界に飛ばされた巧。 その異世界では精霊術、紋章術、降魔術といった様々な魔法の力があふれていた。 その世界でどうやらスゴイ魔法の力とやらを授かったようだった。 現実世界ではなんの取柄もない無能な大人が異世界で凄い異能の力を身につけたら・・・
8 190 - 連載中65 章
FANTASY WAR ONLINE
『FANTASY WAR ONLINE』通稱『FWO』主人公である龍血昴流はVR技術の先駆者である父親の友人から世界初のVRMMOを手に入れる。しかも、家族全員分。人族と魔族の陣営に分かれて戦うこのゲームで龍血家は魔族を選択し、『FWO』の世界へと足を踏み入れる。
8 87