《【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】》12 母の説得
「わかった」と言いながらも父はハキームを雇うことについて渋っていた。
すると普段は口數のない母が猛然と父を説得し始めた。こんなにしゃべる母を私は初めて見た。
「あなた。他人を全部疑ってアレシアを鳥籠に閉じ込めるようにして守るのは、そろそろやめましょうよ。それともあなたはこのまま世間と関わらせないで育てるつもり?」
「いや、別に俺は……」
「アレシアの力をにすることは必要だけど、年頃になるのはすぐだわ。このまま誰とも関わらせないで育てて、人どころか友達もいないような寂しい娘にしたいの?私たちは先に老いて死ぬのよ?セリオ、あなた私たちが死んだ後のアレシアのこと、考えてる?」
父は視線を下げて何も言わない。そこにナタンおじさんが參加した。
「実際、人手があると助かるな。晝間だけなら雨とアレシアの関係は気づかれにくい。俺はアレシアがあんな風に頼み事するのを初めて見た。セリオ、お前気づいてるか?」
「何をだ?」
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「アレシアの聞き分けの良さは普通じゃない。わがままを言ってるのを見たことがない。アレシアは自分の雨のことで俺たちに迷をかけてると思って全てに遠慮してるんじゃないのか?」
「……」
「アレシアに世話になってるのは俺たちだ。引け目なんてじてほしくない。普段あんなに聞き分けがいいアレシアが泣いて頼むんだ。俺はハキームとやらを雇ってやりたい」
「そうよ。このまま私たちだけしかいない環境で育てたら、この先どんな悪い奴に騙されて利用されるかわからないわ。私だって他人をれることには不安はあるの。でも、アレシアにはそろそろ人の中で生きる《すべ》をにつけさせるべきだと思う。ハキームは、まず最初の一人よ」
「……」
「人との関わり方を知らないまま大人になって、もせずひたすら隠れて生きろと?それ、幸せな人生かしら。偉い人に閉じ込められて利用されるのと、たいして変わらないわ」
「そうだな……そうだった。お前の言う通りだな。自分を守るために誰とも関わらずに生きろと言うのは、殘酷だな」
「そうよあなた。これからはもっと先を見てアレシアを育てましょうよ」
話し合いは母の言葉で締めくくられた。
私は母のことを勘違いしていた。優しい人だとは思っていたけど、それだけじゃない。大切なことを教えてくれる賢い先輩だった。
・・・・・
「ハキーム君、ここで働く気はないかい?毎日じゃなくてもいい。々人手が足りなくてね」
「野菜や果はどんどん長するから困ってたのよ」
ナタンおじさんとベニータおばさんがハキームを勧している。
「この農園で働いてくれれば晝と夜の食事はうちで食べればいい」
「それとも水売りの仕事は休めないのかしら」
父と母もっている。ハキームは水を分けてもらうお願いに來ただけだから、戸っている。
「ここで働けたら、決まった収になりますよね?俺は正直言ってすごく助かります。でも俺、うちが貧しいから同されてるんじゃないかと心配です。誤解されると嫌だからうちのことを説明させてください」
大人たちがうなずく。
「俺の家は俺と母と妹の三人家族です。父親はだいぶ前にいなくなりました。妹は長いこと病気で薬が必要なんです。薬代は絶対に必要だから、俺の稼ぎがない日は日雇いをしている母さんも食事を抜いています。俺だけ食事抜きってわけじゃありません。妹だけはなんとかお粥やスープは食べさせています」
「苦労してるのね。まだ十三歳なのに頑張っていて偉いわ」
母が口を押さえて涙聲になる。
説明が終わってハキームは笑顔でうちで働くことを了承してくれた。週に六日を我が家で働いて、一日の賃金は小銀貨二枚と大銅貨五枚、晝と夜の食事が付くことに決まった。
父は雨水を溜めている樽を見せて
「ここに雨水を溜めているんだが、畑にも撒かなければならないから売りにするほどの量を君に分けてやるわけにいかないんだよ。すまないね」
と言い訳をした。
「ああ、そういうことでしたか。わかりました」
本當は畑には水やりはしてないのだけど、あの味しい水を売りにすれば人の興味を引いてしまうから。
農園に通うようになったハキームは真面目な働き者で、度々「農作業は楽しい」「頑張った分だけ野菜も果樹もよく育つから働きがいがある」と言って大人たちを喜ばせた。
十三歳にしては力のあるハキームは、痩せたなのに父たちに負けないくらい力仕事をこなしてくれている。遅刻することもなく、夕方もギリギリまで作業している。
私と母が作る料理も毎回味しそうに食べてくれる。私と母はこっそり夕食を多めに作り「たくさん作ったから。良かったらだけど、おすそ分けなの」と言ってハキームに食べを持たせて帰している。これで彼の家がしでも楽になったらいいのだけど。
ハキームは「ありがとうございます。母と妹がとても喜んで食べています」と言って嫌がらずにけ取ってくれる。
私の水魔法が思い通りにならないこと以外は萬事が順調だ。私はいまだにコップ一杯の水さえ作り出せない。
スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★
西暦2040年の日本。 100人に1人の割合で超能力者が生まれるようになった時代。 ボッチな主人公は、戦闘系能力者にいじめられる日々を送っていた。 ある日、日本政府はとあるプロジェクトのために、日本中の超能力者を集めた。 そのタイミングで、主人公も超能力者であることが判明。 しかも能力は極めて有用性が高く、プロジェクトでは大活躍、學校でもヒーロー扱い。 一方で戦闘系能力者は、プロジェクトでは役に立たず、転落していく。 ※※ 著者紹介 ※※ 鏡銀鉢(かがみ・ぎんぱち) 2012年、『地球唯一の男』で第8回MF文庫Jライトノベル新人賞にて佳作を受賞、同作を『忘卻の軍神と裝甲戦姫』と改題しデビュー。 他の著作に、『獨立學園國家の召喚術科生』『俺たちは空気が読めない』『平社員は大金が欲しい』『無雙で無敵の規格外魔法使い』がある。
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