《【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】》19 絹布を織る

チャナやイゼベルさんが初めて我が家に來た日から一年が過ぎた。

私とチャナは十歳、ハキームは十四歳、イーサンは八歳だ。

現在、農園の奧のり口から見えない場所に桑の木がたくさん育っている。蠶もかなり増えている。絹糸もだいぶ溜まった。

イゼベルさんによると

「繭から紡いだ糸は石鹸で優しくもみ洗いして糸についてるベタつく分を洗い落とさないと本當の沢が出ない」らしい。

育てたりゆでたり紡いだり洗ったり。

「これほど手間がかかるなら、そりゃ高価にもなりますね」

「そうさ。絹の値段は関わった人間の手間の値段だよ」

一年かけて桑と蠶を増やして、コツコツと絹糸を溜めて、やっとイゼベルさんに

「ふむ。これだけ糸が溜まったなら布を織りますか」

と布にするお許しが出た。

機織りの道は父が仕れてくれていた。その機織り機は思ってたより幅が狹い。

「イゼベルさん、これでどのくらいの幅の布ができるんですか?」

「そうさね、四十センチくらいかね」

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「あ、そうなんですね……」

「不満かい?」

「いえ!その倍くらいの幅かなーなんて思っていたものだから」

イゼベルさんは苦笑している。

「素人が初めて織るんだ。最初はそのくらいの幅がいいよ」

縦糸を何本も何本も機織り機に引っ掛けて橫糸をセットして、いざ織らん!と思ったのだけど、思わぬ立候補者がいた。チャナだ。

チャナはしずつ力がついて、初めましての日から一年が経った今、ほぼ毎日ハキームと一緒に歩いてうちに通っている。

王都の端っこの貧民街からうちまでおよそ二キロ半。往復五キロの道のりを歩けるようになったのだ。しかも鶏の世話と蠶の世話を手伝ってくれている。もちろんその分の賃金は払っている。ハキームのお母さんは「薬代も要らなくなったし収は増えるし。暮らしが楽になった」と喜んでいるそうだ。

「機織り、私にやらせてもらえませんか?」

「チャナが?仕事が増えて大変だと思うけど」

「これならできそうです。やらせてください。私、農園の仕事はまだししかできないから、何かお役に立ちたいんです!」

みたいながウルウルした目で私を見つめる。これをバッサリ斷れる人がいたとしたら鬼に違いない。

「うん、いいわよ。お願いするね」

「ありがとうございます!」

教わったとおりにトントンスーッっとチャナが機を織る。

しばらく見ていて『この世には適材適所というものがある』ってことを知った。

毎回同じ力でトントンと橫糸を下に詰める。リズムよく橫糸を右に左に渡す。

ほんのしずつ絹布が織られていく。沢を放つしい布だ。は仕事の作さえもしい。イーサンなんかうっとり見つめちゃって、誰の目にもイーサンが「このが大好きです!」って全んでるように見えるに違いない。

ちなみにチャナはイーサンの熱い想いに気づいてない。頑張れイーサン。

一方私は一年中桑の実を収穫できていることにホクホクしている。

生で食べてよし、ジャムにしてよし、お菓子作りに使ってよし。市場へ持って行けば結構な値段で果屋さんが買い取ってくれる。桑の実以外の果は父が別の店と契約していて、私は私で販路を開拓したのだ。

今日なんか大きめのザルにすり切り一杯で小銀貨二枚ですよ。びっくりよ。一日中汗水流して働くハキームの日給とたいして変わらないのよ。うち、賃金が安すぎるのかと焦ったわ。

屋のおばさんは

「おたくの桑の実はとにかく評判がいいのよ。味が濃くて甘くてみずみずしくて蟲食いが一切ない。そもそもこの國じゃ桑の実なんてなかなか手にらないからね。この前なんか王宮勤めの料理人が味見して『あるだけ全部くれ』って。アレシアちゃん、買い取り価格をし上げるから他の果屋には売らないでくれるかい?王宮と取引があると何かと助かるんだよ」

と怒濤の勢いで語っていた。

勢いに圧倒されて「は、はい。他のお店には卸しませんから大丈夫ですよ」と返事をしてあとからハキームに叱られてしまった。

「アレシア、ああいう場合は粘ればもうし買い取り価格を上げてくれるものなんだから。一回でうなずいちゃだめだよ」

「そうなの?失敗したね。次からは頑張るよ。それにしても王宮と取引があるとなんで助かるんだろうね」

ハキームは「多分だけど」と前置きして説明してくれた。

「王宮はツケで買わずに毎回現金で払ってくれるんじゃないかな。食堂や屋臺の業者だとツケで買って月末に支払うけど、その間はお金がらないし、相手の商売がうまく行ってないと取りはぐれることもあるからさ」

「へええ。勉強になるわ」

私が心していたらハキームがクスッと笑った。

「俺に字や計算を教えてくれるのに、そういうことは知らないなんて、アレシアはお嬢様だな」

「お嬢様ではないわよ。ちょっと金回りのいい農家の娘よ」

「あはは。そうか」

チャナが絹布を織り始めて三週間。通いで織り続けて完した絹布《けんぷ》。

十歳のが織ったとは思えない、いや、十歳のが織ったからなのか?とてもツヤツヤしたしい絹布が出來上がった。ヒンヤリしてそうだけど逆だ。った瞬間からほんのり溫かくじる。

イゼベルさんの家に持っていって布を見せた。イゼベルさんは膝の上に布を広げ、老眼鏡をかけてじっくりと布を検分して「はあぁぁぁ。なんてこったい」と言う。

「イゼベルさん、やっぱり素人が作ったのは今ひとつなの?」

「違うよ。とんでもなく質がいいよ。これなら貴族相手に小金貨二枚で売れるさ。どうなってんだい。子供たちが生まれて初めて蠶を育てて織ったのに、仕上がった絹布が特上の出來って!」

桑の実を小銀貨二枚で売って浮かれていた私には驚きの金額だ。

「小金貨二枚っていったら調教済みの若いラクダが一頭買えるんですけど!私は桑の実で細々(ほそぼそ)と小銭を稼いでいたのに。小金貨二枚?」

「アレシアさん、落ち著いてください」

私があんまり浮かれてたものだからチャナちゃんがし怖がっていた。「ごめんごめん」と言いつつも嬉しくて笑いが抑えきれない。

これから絹布でバリバリ稼げる予しかしない。その夜はニマニマしながらベッドにった。

私が寢ている間に降らせる雨はしずつ広がっていて、父によると直徑二キロメートルほどになっているらしい。

雨を自在に作する方法は、いまだに見つかっていないけど、今のところ私の人生は上手く回っている。

しかし、その後。

絹布を小金貨二枚とイゼベルさんは言ったけど、とんでもないことがわかった。

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