《【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】》21 最初の

絹布に不思議な治癒の力があるとわかった翌日。

私たちはイゼベルさん、ハキーム、チャナも加えて九人で長い時間みんなで話し合った。そしてひとつの推論を出した。

全ては雨にたどり著く。

私が降らせている雨に癒しの力があると仮定すると、それを集めた飲み水も、雨を吸って育つ野菜や果実、桑の葉も、癒しの力を溜め込むことになる。

癒しの雨を吸い込んで癒しの力を溜め込んだ桑の葉。その桑の葉を食べて育つ蠶。

その蠶が治癒の力を溜め込んだから出す糸で作られた繭。その繭を何個も集めて紡がれた糸。その糸を織った布。

雨の持つ力を何段階にも濃したものがあの絹布の力のなのではないか。結論はそうなった。

全ては推測だけど、うちの農園の作の効果を考えたら全部當てはまる。

チャナが健康になったことも、イゼベルさんの膝が絹布を當てる前から野菜を食べて快方に向かっていたことも、私たち皆が疲れ知らずでやたら健康なことも。

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結論が出たとき、父が突然宣言した。

「この絹布で金儲けするのはやめよう。その金を當てにしなくてもうちは十分やっていけるんだ」

「え。いいの?お父さん」

「いい。いいさ。これで金儲けをしたら雨のを知られるよりももっと大変な事になる。それこそ金持ちや偉い人が目のを変えて絹の出どころを探すだろう」

イゼベルさんがうなずいた。

「あー。十分にあり得る話だね」

「だったら私はこの布の力を貧しい人たちのために使いたいんだけど」

「やっぱり!アレシアさんならそう言うと思ってました」

チャナはこの話になってからずっと私をキラキラした目で見てくる。ちなみにチャナ達の母親には昨夜のうちに口止めしてある。チャナが快復したのは薬と栄養ということにしてもらった。

「でも、金持ちだってお金ではどうにもならない病気で苦しんでる人はいるだろう?」

ハキームが思いがけないことを言い出した。

「金持ちや貴族はそれだけの理由で絹を使う人から外したら気の毒なんじゃないか?金持ちにだって良い人はいるんだ。俺は水売りをしてる頃にそんな人たちに水を買ってもらったことが何度もある」

その場に居合わせた全員が虛を衝かれたような顔をしてハキームを眺めた。

この場にいる中で一番お金で苦労したのはおそらくハキームだ。い頃に父親が突然帰って來なくなり、病気の妹のために六歳とか七歳とかの頃から重い水を運んで働いてた。水の売れ行きが悪ければ夕食を抜いて妹の薬代を確保するような生活だったのに。

私は(世の中にはお金で苦労をしても、決して心が濁らない人っているものなんだなぁ)と思いながらハキームを見た。ハキームの心は初めて會った時からずっと綺麗だ。

「ハキーム、確かにお前さんの言う通りだ。だけどこの國にはお金がなくて苦しんでいる人は山ほどいる。まずはその人たちから助けていけばいいんじゃないかね?」

全員がうなずいて、とりあえずは貧しい人たちのために絹布を使うことに決まった。

最初の一人は市場の屋で働いているの子供だった。よく我が家で羊のを買いに行くお店なのだが、十歳の息子さんは赤ん坊の時に流行り病で高熱を出した時から下半かないと言う。

屋のと私の両親は顔馴染みで、たまに奧さんが息子の將來のことを心配して話をするらしい。

「私と夫が元気でいる間はいい。私たちが二人とも死んだりしたら、あの子はどうなるのか。それを思うといたたまれない」と。

イゼベルさんは行ったことのない店だったのでちょうど良い、という結論になった。

最初に両親が「今度余った野菜と果を持って行きたい」と言ってその人の家を聞き出した。両親が野菜を屆けた十日後。イゼベルさんが絹布を持ってその家に向かった。

果たしてそこまで難しい狀態を治せるのか。治せなかった場合はなんと言って引き下がればいいのか。みんな悩んだ。最後はイゼベルさんの「その時は年の功でなんとか切り抜ける」という一か八かな案に乗るしかなく、イゼベルさんが帰って來るまで私たちは落ち著かない気持ちで待っていた。

夜、イゼベルさんが農園に戻ってきた。

「最初は信じてもらえなくてね。でも『お金はいらない、この家に病人か怪我人がいるなら祈りを捧げたい』と言ってれてもらったよ」

イゼベルさんはかなり怪しまれたそうだ。

しかし、得意の話で家にらせてもらい、息子さんとあれこれおしゃべりをしながら絹布を年の全に當てたそうだ。「これは私の孫が心を込めて織った布なんだ。あの子の元気さがしでも分けてあげられたらいいのだけど」と言いながらにかけたそうだ。

「背中に嫌な汗がたんまり流れたよ。そんなことをしておいて何も起きなかったら頭のおかしい婆さん以外の何者でもないからさ」

しかし、怪しむ視線の中、息子さんは腳をかしたのだ。

細くがついていない足の先で足の指がくようになり、ると「られているのがわかる!」と年がび出し、信じられないでいる両親の目の前で足をしだけかしたそうだ。泣いて喜ぶ両親と年を見てイゼベルさんも思わずもらい泣きした、と。

「歩く練習をすりゃあ、あの子は歩けるようになる。この布の効き目は恐ろしいほどだった」

イゼベルさんに年の両親が家にあるありったけのお金を集めてお禮だと言って渡そうとしたそうだ。

「お金は貰わないと最初に言っただろう?ただ一つ、私のことも布のこともにしておくれ」

とお金は一切貰わずに、布のことを口止めして帰ってきたらしい。

「でも家にある羊はどうしても持って帰ってくれと言われてね」

私たち九人はその夜「良かった」「役に立った」とホッとしながらその羊をたっぷり使って夕食にした。

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