《【書籍化・コミカライズ】手札が多めのビクトリア〜元工作員は人生をやり直し中〜》15 急會議
ジェフリーは國王陛下が招集した急會議に參加していた。
參加者は國王、コンラッド王太子、セドリック第二王子、宰相、第一騎士団団長、人事責任者、狙われたマッケナー侯爵、ジェフリーの八人である。
まず今夜の事件についてひと通り説明された。場を仕切っているのはコンラッド王太子である。
「マッケナー侯爵、犯行の理由は思い當たるか?」
「それが全く何も思いつきません。男は誰かに雇われたのでしょうが、恨みを買うようなことは何も……思い當たらないのです」
マッケナー侯爵は五十代。堂々たる軀の背筋をビシリとばし、困気味に答えた。
「しかしながら陛下が主宰された夜會に大変なご迷をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。第二騎士団長が駆けつけてくれなければ今頃は……」
「死んでいただろうな。男は毒を塗った細のナイフを持っていた」
第一王子の言葉に參加者全員の顔が険しくなる。
「ジェフリー、お前はいつあの男に気づいた?」
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「最初に気づいたのは私ではなく、本日同行した令嬢です。『さっきから仕事をしていない給仕がいる』とダンスの最中に言われまして。見ると確かに不穏なきで會場を突っ切っているのに気づき追いかけました」
第一王子が両手の指先をトントンと合わせている。
「なるほど。の指摘か」
「はい」
「あの男は一年も前から城で働いている。あの男の紹介狀を書いたエルド男爵に兵士を送って召喚しているところだが、男爵のというれ込みはおそらく金で手にれたのだろうな」
それを見抜けなかった人事責任者の壯年の男は冷や汗をハンカチで拭いている。
「実はね、最初に庭に飛び出した警備兵はかなり夜目が効く男だった。倒れた男のところに到著した時、走って去って行くの後ろ姿をしだけ見ているんだ」
「?」
「があの男を昏倒させたのですか?」
全員が驚いて場がざわついた。
「が男を倒すところを見たわけではない。會場からテラス、そして庭へと警備兵が追いかけていた。男が視界から消えたのは庭に飛び降りたあとの數秒間。なのに見つけた時はもう男は失神していた。そんな一瞬で男を失神させるのは男でも難しい。だからその警備兵の見間違いということもある。それともたまたまその場にいたが驚いて逃げたのかもしれない」
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「だが男を倒した人間は間違いなくいるわけだろう?」と國王。
「の特徴は?」と近衛騎士隊長。
「走り去ったとはすでにかなりの距離が開いていたし暗かったのでドレス姿ということ以外詳しいことは何も」
コンラッド第一王子が殘念そうに答えた。
ジェフリーは口を閉ざして聞いていたが、ビクトリアの顔が浮かぶ。男のきに気がついたのは彼だ。そしてノンナを背負って引ったくり犯に足を出した時の隙がない様子が思い出される。
「まずは男の背景を探らねばなりません。マッケナー侯爵、もうしお話を聞かせていただけますか」
「もちろんだ」
近衛騎士団長である第一騎士団長の呼びかけにマッケナー侯爵が答えた。
これ以上の報が無いので會議は解散となり、數名が自分の為すべきことのために足早に部屋を出て行った。部屋に殘ったのは國王、二人の王子、宰相、ジェフリーの五人。ジェフリーは第一王子の目くばせで殘った。
口火を切ったのは第一王子。
「ジェフリー、僕はどうもそのは君がエスコートしたのように思えるんだよ。他の者の前では伏せたが、目撃した警備兵はのドレスのをどうにか視認していた。薄紫か薄い水のドレスだったそうだ。どちらだったかは自信がないそうだ。だが君のパートナーは薄紫のドレスだったな?しかも男のきに早い段階で気づいているのだろう?その令嬢はどんな人だい?」
「最近知り合ったばかりのでビクトリア・セラーズという令嬢です」
「どうやって知り合ったか聞かせてくれるか」
ジェフリーは正直に話す方がビクトリアのためと判斷して、平民の彼を貴族として參加させたことをまず國王陛下と二人の殿下に謝罪した。
「この際それはいい、気にするな。出會いの詳細を聞かせてくれるか。彼が君になんらかの目的を持って近づいた可能はないのか?」
國王の求めに応じてジェフリーは休日のあの日のことから順番に説明した。
眠ったを背負った狀態で引ったくり犯に足をかけたこと。
捨て子を引き取るためにたまたま引ったくりの現場に居合わせた自分に元保証人を頼んできたこと。
彼が自分の伯父の助手をしていて再會したこと。
引ったくり被害者のヨラナ・ヘインズ邸の賃借人になったこと。
彼を食事にったら彼が子どもも一緒ならと言って三人で食事したこと。
夜會には自分がい、一度は斷られたが従姉妹がし強引に口添えしてくれて了承を得られたこと。
第一王子コンラッド殿下が「ふむ」とうなずく。
「なるほど。聞く限りは偶然の出會いだな。言い寄ったのはジェフリーの方からか。お前を狙って近づいたわけではないようだ」
「言い寄ったなど」
「誰がどう聞いても団長が言い寄ってるじゃないか。珍しいな。なぜだい?」
「……私に不愉快な視線を向けない人でしたので。気が楽でした。何よりのでありながら人に頼ることなく生きていて、他國の捨て子を拾って育てようという彼の気概に……」
「惚れたのか?」
言葉を挾んだ國王の率直な言いに正直に頷いてしまう。
「……はい」
「ふうぅぅ」と深いため息をついて第一王子がジェフリーを見據える。
「私が持ちかけた縁談はどんな良縁も全て斷ってきたのに、また厄介なに惚れたね、ジェフリー」
「その節は大変申し訳なく。しかし彼は厄介な人などでは」
「兄上、僕も一度そのに會ってみたいです。もしそのが男を倒したのなら、実に素晴らしい腕前の持ち主ですからね」
そう言ったのは剣に自信があるセドリック第二王子だ。
「會ってどうする?お前は関係ないだろう」
「腕前だけでも知りたいではありませんか」
「やめんかセドリック」
「おやめください殿下」
國王とジェフリーが同時に止めにる。
「陛下、コンラッド殿下。ビクトリアをどこかの手の者とお考えかもしれませんが、彼がその手の者なら仕事の足手まといになる子供を保護したりするでしょうか」
「それはまあ、確かにね。ジェフリー、僕は君がそのと親しくすることに口は出さないよ。だが萬が一怪しい點があったら私に報告してくれる?」
「……それは」
「団長が嫌なら僕がその役を引きけますよ」
「それはお斷りしますセドリック殿下。私が彼を見守りますので」
そこで五人も解散となり、ジェフリーは退出した。
國王陛下は自室に戻りながら後ろを付いてきた宰相に小聲で命じた。
「ランダル王國にいる者にビクトリア・セラーズについて調べさせよ」
⚫︎活報告欄に再び報告を書きました。
⚫︎しの間不定期更新になるかもしれません。
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