《【書籍化・コミカライズ】小國の侯爵令嬢は敵國にて覚醒する》46 同調
皇弟殿下の訪問から二日後のこと。
表向きは「川船の予算のことで」とベルティーヌが庁舎を訪れた。対応に出てくれたイグナシオが
「閣下は今、急な來客の接客中でして」
と言って執務室の隣の部屋へと案してくれた。控えの部屋で待っていると隣室のセシリオの部屋のドアが開く気配がした。
(お客様がお帰りなのね)と立ち上がり、ドアに近づいたベルティーヌの耳にの聲が聞こえてきた。
「セシ、たまにはうちに來てよ。歓迎するわ」
「ああ、そのうちな。すまないドロレス、もう次の面會がっているんだ」
「そう。じゃあ、久しぶりなのに殘念だけど、またね」
その言葉のやり取りの距離間の無さに思わず息を殺してしまう。
(いつ會ってもセシリオ閣下は仕事に追われていての気配が全くじられなかったけど、閣下はあの見た目で國の代表だもの。親しいがいるのは當たり前だったわ)と思う。仕事を介してではあるがセシリオと特別に親しい気持ちでいた自分が無に恥ずかしくなった。
Advertisement
すると突然目の前のドアが開いて「おう!そこにいたのか」とセシリオが驚いている。そんなつもりではなかったが、まるで聞き耳を立てていたかのような姿を見られて思わず赤面してしまう。
ふと視線をじて顔を左に向けると、さっきまでセシリオと會話していたらしきが立ち止まってこちらを振り返っていた。
艶々した長い黒髪の、妖艶な雰囲気のがこちらを面白そうに見ている。思わず小さく會釈をしたが、はニコリと笑っただけで歩いて行ってしまった。
「閣下、私なら出直しますのでどうぞあの方とお話を」
そう言ってからまるで聞き耳を立てていました、と言わんばかりのセリフに気づいて自分の口を塞ぎたくなる。が、セシリオは「彼と?いや、いいよ」とこともなげに言う。
「ドロレスの夫はいい男なんだが、とんでもなく嫉妬深いんだ。ここで俺が彼と二人きりで長話をしたなんて知ったら、この部屋に乗り込んで大剣を振り回しかねない」
「大剣……それは恐ろしいですね」
Advertisement
「ふふふ。俺もそんなことで命を失いたくないよ。ドロレスはただの馴染みだからな」
それを聞いてなんとなくホッとして、ベルティーヌはまた余計なことを言ってしまう。
「そうですか……母國では閣下に関していろいろな噂が流れておりましたので勘違いいたしました。機會があれば私が噂を訂正しておきますね」
「俺の噂とは『無類の好き』か?それとも『を見るのが大好きな戦闘狂』の方か?俺はそう思われても痛くもくもないから放置しているが」
「そんな。悪く言われているのに放置しておくなんて」
ベルティーヌを室に招きれながらセシリオが小さく笑う。
「國の代表になった頃からかな、俺にを差し出したり金を渡そうとしたりする人間が増えた。こんな大らかな國でもその手のことはあるんだよ。本當に信用できるのは誰なのか、相手を見極めるのに悪い噂もたまには役に立つんだ」
「そうでしたか。全員が善人なんて國はどこにもありませんものね」
ベルティーヌは早速川船の建造について數字を出して計畫を説明した。説明が終わるとセシリオが質問してきた。
「君のその無限に見える原力はどこから來るんだろうね」
「そうですねぇ、今は、連合國の素晴らしさを他國の人々に知ってほしい、この國のために盡くしたい、という気持ちからでしょうか」
「ベルティーヌ、大きな作戦は一人の勢いだけで突っ走ると危うい。仲間は足りているか?」
「エバンスやフランツさん、ビルバ地區の皆さんが仲間ですわ」
なぜかそこでサンルアンの王妃を思い出した。
「閣下、サンルアンの王妃はおそらく一人であれもこれもと腹黒い仕組みを考えてましたよ。ある意味すごいとしか……」
「ほう?的にどんなことをしたのか詳しく聞いてもいいか?」
ベルティーヌは自分の婚約と結婚が二回ダメになった経緯を説明した。
セシリオは椅子に座って長い腳を組んで聞いている。
「なるほどねぇ。そこまでされて君の父上はなぜ王家に反旗を翻さないのだろう」
「父は王家を倒した先のことを考えているのだと思います。父はもう五十代半ば。たとえ現王家を潰してサンルアンの王になったところで、すぐに次の王を選ぶことになりますから。それよりも相応(ふさわ)しい人を探しているのだと思います」
セシリオが片方の眉を上げてベルティーヌを見る。
「もしや君がサンルアン王國の王になろうとしてるのか?」
「まあ!冗談でもおやめくださいな。違いますよ閣下、私ではありません」
「すまん、冗談だ」
「わかっております。王の座に相応《ふさわ》しい人なら他にいらっしゃいます」
「……それ、誰だい?」
「帝國のクラウディオ第二皇子(おうじ)殿下です。手紙を読む限りご本人もそれをおみです」
それを聞いてセシリオは一瞬固まった。それから複雑な顔でフッと笑う。ベルティーヌはその笑いの意味がわからなかった。
「ですが殿下はまだ十二歳。せめて十五歳にはならないと。そうなればおそらくは父が宰相として補佐をするでしょうし、皇弟殿下も後ろ盾になってくださるでしょう。皇帝陛下からすれば近に第二皇子を置いておきながら後継者爭いの火種を消すことができます」
「皇帝と皇弟の了解は取れているのか」
「どうやら皇弟殿下のご発案のようですよ」
「へえ。サンルアンの國民はどうなると思う?」
「大歓迎でしょう。元々帝國からの観客で息をしている國ですもの。帝國の皇子が國王になれば帝國との太い絆ができますから國民は喜びますよ。現在の國王陛下には皆失していますし」
しばらくは考えていたセシリオが思いがけないことを言う。
「連合國は第二皇子がサンルアンの王になるなら全力で応援するが」
「それは……心強いでしょうが、閣下にも連合國にもたいして得がありませんわ」
「あるさ」
そう言って立ち上がり緑の本を片手に持ってベルティーヌを見る。以前気になった本だ。今日はその本の表題がはっきり見える。『サンルアン王國法と細則』
「やっぱりその本でしたか!」
「実は俺もクラウディオ殿下にサンルアンの王になってもらおうと考えていた。皇帝側とは違う理由だが」
「閣下もですか?どんな理由かうががっても?」
「戦爭の終結後、帝國は賠償金を即座に支払ったがサンルアン王國は大金貨千枚を値切ったままだ。これは調印をないがしろにする暴挙だ」
セシリオは手紙の束を引き出しから出して機に置いた。
「俺は現王家を廃してクラウディオ殿下に王になっていただこうと考えた。その際に使える法律はないか、殿下が王になった後で邪魔になりそうな法はあるのか、と々調べた。実はクラウディオ殿下から俺にも頻繁に將來の政治のことで相談の手紙が來るんだ。手紙を読んで、彼は善き指導者になると思った」
(殿下は実父の皇帝ではなく他國の指導者を頼っているのか)と年の心の中を思ってしまう。
「若く理想に燃える王の力になれるなら、俺はいくらでも手を差し延べるつもりだ。サンルアン王家は連合國を文化の遅れた國と甘く見てあんなことをしたのだろうが、命をかけて戦った我が國民の命を軽く扱われて黙っているつもりはない。そこへ來て善き王になれる人がいるんだ、國民も歓迎してくれるなら喜んで手を貸すさ」
「だが」と言ってセシリオはベルティーヌを見た。
「俺も殿下が十五歳になる日まで待つよ。今更不足分を支払われてしまう前にこうと思っていたんだが、この件に関しては帝國と歩調を合わせよう。大切な君を苦しめた王妃への『お禮』はきっちりしておかなくては」
(今、最後に何て言いました?)と驚いてセシリオを見るが、セシリオは笑っているだけだ。ベルティーヌはややオタオタしながら話を続けた。
「閣下、父はその案に乗ると思います。閣下のお考えを父に伝えてもよいでしょうか?皇弟殿下のお考えはもう父に伝えてあるのです」
「君の父上の後妻は王妃の妹だろう?」
「もちろん義母には知られないように伝えます」
「それならぜひ伝えてくれ。きっと君の父上は俺の味方になるだろう。王妃は君に二度も酷いことをした。頭の切れる方ならこの機會を逃さないはずだ」
【書籍化】【SSSランクダンジョンでナイフ一本手渡され追放された白魔導師】ユグドラシルの呪いにより弱點である魔力不足を克服し世界最強へと至る。
【注意】※完結済みではありますが、こちらは第一部のみの完結となっております。(第二部はスタートしております!) Aランク冒険者パーティー、「グンキノドンワ」に所屬する白魔導師のレイ(16)は、魔力の総量が少なく回復魔法を使うと動けなくなってしまう。 しかし、元奴隷であったレイは、まだ幼い頃に拾ってくれたグンキノドンワのパーティーリーダーのロキに恩を感じ、それに報いる為必死にパーティーのヒーラーをつとめた。 回復魔法を使わずに済むよう、敵の注意を引きパーティーメンバーが攻撃を受けないように立ち回り、様々な資料や學術書を読み、戦闘が早めに終わるよう敵のウィークポイントを調べ、観察眼を養った。 また、それだけではなく、パーティーでの家事をこなし、料理洗濯買い出し、雑用全てをこなしてきた。 朝は皆より早く起き、武具防具の手入れ、朝食の用意。 夜は皆が寢靜まった後も本を読み知識をつけ、戦闘に有用なモノを習得した。 現にレイの努力の甲斐もあり、死傷者が出て當然の冒険者パーティーで、生還率100%を実現していた。 しかし、その努力は彼らの目には映ってはいなかったようで、今僕はヒールの満足に出來ない、役立たずとしてパーティーから追放される事になる。 このSSSランクダンジョン、【ユグドラシルの迷宮】で。 ◆◇◆◇◆◇ ※成り上がり、主人公最強です。 ※ざまあ有ります。タイトルの橫に★があるのがざまあ回です。 ※1話 大體1000~3000文字くらいです。よければ、暇潰しにどうぞ! ☆誤字報告をして下さいました皆様、ありがとうございます、助かりますm(_ _)m 【とっても大切なお願い】 もしよければですが、本編の下の方にある☆☆☆☆☆から評価を入れていただけると嬉しいです。 これにより、ランキングを駆け上がる事が出來、より多くの方に作品を読んでいただく事が出來るので、作者の執筆意欲も更に増大します! 勿論、評価なので皆様の感じたままに、★1でも大丈夫なので、よろしくお願いします! 皆様の応援のお陰で、ハイファンタジーランキング日間、週間、月間1位を頂けました! 本當にありがとうございます! 1000萬PV達成!ありがとうございます! 【書籍化】皆様の応援の力により、書籍化するようです!ありがとうございます!ただいま進行中です!
8 156【WEB版】高校生WEB作家のモテ生活 「あんたが神作家なわけないでしょ」と僕を振った幼馴染が後悔してるけどもう遅い【書籍版好評発売中!】
※書籍化が決定しました! GA文庫さまから、好評発売中! 書籍化に伴いタイトルが変更になります! (舊タイトル「【連載版】「あんたが神作家なわけないでしょ」と幼馴染みからバカにされたうえに振られた) 陰キャ高校生【上松勇太】は、人気急上昇中大ベストセラーWEB小説家【カミマツ】として活動している。 ある日勇太は、毎日のように熱い応援を送ってくる幼馴染が、自分のことが好きなのだろうと思って告白する。しかしあえなく大玉砕。 「ぼ、ぼくが作者のカミマツなんだけど」 「はあ?あんたみたいなオタクと、神作者カミマツ様が同じわけないでしょ!?」 彼女は勇太ではなく、作品の、作者の大ファンなだけだった。 しかし、幼馴染みはのちに、カミマツの正體が勇太と気付いて後悔するが、時すでに遅し。 勇太の周りには、幼馴染よりも可愛く性格も良い、アイドル聲優、超人気美少女イラストレーター、敏腕美人編集がいて、もはや幼馴染の入る余地はゼロ。 勇太は自分を認めてくれる人たちと、幸せ作家生活を続けるのだった。
8 61パドックの下はパクチーがいっぱい/女子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー
京都競馬場のイベント。著ぐるみを著た女が階段から落ちて死んだ。その死に疑問を持った女子大の競馬サークルの後輩たちが調査を始める。なぜか、顧問の講師に次々と降りかかるわけの分からない出來事。 講師に好意を抱く女子學生たちの近未來型ラブコメディー&ミステリー。 講師の心を摑むのは、人間の女の子か、それとも……。 そして、著ぐるみの女の死は、果たして事故だったのか。推理の行方は。 「馬が教えてくれる」という言葉の意味は。 そして、妖怪が仕掛けた「合戦」によって得られたものは。 推理とはいえ、人が人を殺すという「暗さ」はなく、あくまで楽しく。 普通の人間、ゾンビ人間、妖怪、ペットロボットが入り亂れ、主人公を翻弄します。 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリーです。 錯綜したストーリーがお好きなミステリーファンの皆様へ。 第四章から物語は不思議な転換をし、謎が大きく膨らんでいきます。お楽しみに。 かなりの長編になりますので、少しづつ、ジワリと楽しんでいただけたら幸いでございます。
8 186世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~
數多(あまた)あるVRMMOの1つ、ビューティフル・ライク(通稱=病ゲー)。 病ゲーたる所以は、クエスト攻略、レベルの上がり難さ、ドロップ率、死亡時のアイテムロスト率、アイテム強化率の低さにある。 永遠と終わらないレベル上げ、欲しい裝備が出來ない苦痛にやる気が萎え、燃え盡き、引退するプレイヤーも少なくない。 そんな病ゲーで最強を誇ると言われるクラン:Bloodthirsty Fairy(血に飢えた妖精) そのクランとマスターであるピンクメッシュには手を出すなと!! 新人プレイヤー達は、嫌と言うほど言い聞かせられる。 敵と見なせば容赦なく、クランが潰れる瞬間まで、仲間の為、己の信念を通す為、敵を徹底的に叩きのめし排除する。例え、相手が泣き叫び許しを乞おうとも、決して逃がしはしない!! 彼女と仲間たちの廃人の廃人たる所以を面白可笑しく綴った物語です。 ゲーム用語が複數でます。詳しくない方には判り難いかと思います、その際はどうぞ感想でお知らせください。
8 113太平洋戦爭
昭和20年、広島に落とされた原子爆弾で生き延びたヨシ子。東京大空襲で家族と親友を失った夏江。互いの悲しく辛い過去を語り合い、2人で助け合いながら戦後の厳しい社會を生き抜くことを決心。しかし…2人が出會って3年後、ヨシ子が病気になっしまう。ヨシ子と夏江の平和を願った悲しいストーリー
8 96チート過ぎる主人公は自由に生きる
夢見る主人公は突然クラスで異世界へ召喚された。戦爭?そんなの無視無視。俺は自由に生きていくぜ。(途中口調が変わります) 初めてなのでよろしくお願いします。 本編の感想は受け付けてません。 閑話の方の感想が少し欲しいです。 絵は描けません。
8 96