《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》クラスメイトの手の平返し

翌朝の學校で、俺は教室に著くなりクラスメイトたちに取り囲まれた。

みんな、好奇心に眼を輝かせている。

「おい奧井、昨日のあれはなんだったんだよ!?」

「國家プロジェクトって何!?」

「つうかお前テレポーターって本當かよ!?」

「絶対遅刻しないし超便利じゃん!」

――言われてみるとそれもそうだな。普通に歩いて登校して損した。

とは思う一方で、日常的に使うのはやめようと思う。

だって、移先の人からすれば、突然空間に人が現れるわけで、びっくりさせてしまう。

それに、なんだかダメ人間になりそうで怖い。

不足で不健康になる自分を想像して、寒気がした。

「なぁ奧井、もったいぶらないで教えてくれよ!」

「あ、あー」

人生の中で、こんなに興味を持たれたのは初めてで、なんだか慣れなかった。

同時に、クラスメイトの手の平返しに腹が立った。

だから、あくまで追い払うために返事をすることにする。

「詳しくは言えないんだけど、俺らの力を社會に役立てようって話だよ。それぞれの能力に合った仕事を斡旋してもらって、今日から仕事だ」

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「奧井君はどこで働くの?」

「いや、俺の仕事は、能力者たちを仕事現場に送る送迎任務だ。総務省そのものが仕事場ってことになるらしい」

『おぉぉぉおおおお』

と、嘆の聲が教室に充満した。

人垣の奧で、何人かの生徒が囁き合った。

「総務省って何?」

「とにかくお偉いさんたちが働く場所だよね?」

「防衛省とか文部科學省とか財務省とか?」

「総ってついているし、なんか凄そう」

「奧井の奴どんだけ出世してんだよ!」

くるりと俺へ振り向くと、みんな、空中にMR畫面を展開した。

『奧井君、ちょっと連絡先――』

「あ、坂東おはよう」

ボス猿の登場に、みんなは口を閉じて、興味の矛先を乗り換えた。

一斉に俺から離れて、反対側のドアからってきた坂東へ群がった。

「おい聞いたぞ坂東! お前ら社會のために政府にスカウトされたんだろ!?」

「奧井は総務省で働くらしいけど、坂東はどこだ?」

最初、不機嫌そうな顔だった坂東は、一瞬で表を取り繕った。

また、いつものように大きな態度で、前髪をかき上げた。

「オレら戦闘系能力者の仕事は要人警護だ。誰を護衛するかは、そのうち辭令が下りるだろうけど、政治家か皇族か、そういや國民的スターも、要人と言えば要人だよな」

――いや、お前はサイコメトリー検査拒否したから仕事ないだろ。

「すげぇ……」

「さっすが坂東!」

「あ、あのさ、もしも大蕓能人の護衛役だったら、すぐに教えてくれよ」

坂東の言葉にめき立つクラスメイトたちの姿に、俺はげんなりとした。

客観的に見るとよくわかる。

力に群がっている人間は、すごく醜い。

「あ、おはよう奧井君、なんだか凄い騒ぎだね」

「おう、峰」

廊下から、峰が俺に挨拶をしてきた。

は隣のクラスだから、うちのクラスを通り過ぎる時、り口近くにいる俺の姿が見えたんだろう。

はドア枠に手をついて、うちの教室を覗き込んだ。

「坂東君、相変わらず人気者だね」

「まぁ、そうとも言えるのかな……」

い頃から、坂東は常に學年のリーダー格だった。

それを人気者、という言葉で表現していいのか俺が疑問に思っていると、彼はすぐに坂東から視線を外した。

「そうだ。それでね奧井君、私も今日からお仕事だから、學校が終わったらテレポートで一緒に総務省に連れて行ってくれる?」

「ん、いいぞ。どうせ行き先一緒だしな」

俺が頷くと、峰はにこやかにほほ笑んだ。

「ありがとう。えへへ、持つべきものはテレポーターの仲間だね」

「ピンポイント過ぎる特徴だな」

「そういえば今のところ、國のテレポーターって奧井君だけらしいね」

「いそうでいない能力ってことなんだろうな」

俺らの會話に気づいた生徒が、羨ましそうな聲を上げた。

「うぁあああ、いいよなぁ坂東たち。高校生で社會のために國家プロジェクトに參加して勤務先が総務省で放課後はテレポーターの送迎。なんだよそのスーパー戦隊ぶりはぁ……」

「おいおいひがむなよ」

坂東は自慢げに鼻で笑った。

その顔がムカついたので、俺は仕返し覚悟で事実を言うことにした。

「は? いや俺、坂東はテレポートで送らないぞ」

『え?』

「ッ、奧井テメッ」

みんなの表がニュートラルになって、坂東の顔が強張った。

「坂東は要人警護の仕事から外されたから、プロジェクトには參加してないんだ。なぁ、峰?」

俺一人では信用して貰えるかわからないので、申し訳ないと思いつつ、峰を巻き込ませて貰う。

「あー、うん、まぁそうだね」

峰の視線が、気まずそうに俺と坂東の間で揺れた。

今の発言が、坂東の立場を悪くすることを気にしているのかもしれない。

でも、俺は噓を言っていないし、悪いのは噓で人気を得ようとする坂東だ。

みんなの、居心地の悪い視線が坂東に集まった。

坂東は、語気を荒らげて言いつくろった。

「今はまだってだけだ。氷帝の異名を持つオレを、プロジェクトから外せるわけないだろ?」

「じゃあ仕事が決まったら教えてくれ。峰と一緒に総務省に送るよ」

「だ、大丈夫だよ坂東君。仕事なんてきっとすぐに斡旋してもらえるよ。だって國會議員だけでも衆參合わせて713人もいるんだから」

峰は優しくフォローするも、今の坂東には逆効果だった。

悔しそうに歯噛みをしてから、坂東はすぎる笑みで、峰に想を振りまいた。

「勘違いしないでくれよ峰。オレはわざと斷っているんだからな。すぐに飛びついても安く見られるしな。大臣クラスの護衛を任せるに値する能力者がいなくて困っているとき、満を持して名乗り出てやるさ」

「そうなんだ。じゃあ、その時が來たらみんなで総務省に行こうね」

「そうだな。じゃあそれまでは、せいぜい最後の自由を満喫させてもらうよ」

言って、坂東は堂々とした足取りで、自分の席に座った。

けれど、もう誰も坂東に群がろうとはしなかった。

みんな、俺と坂東を値踏みするように見比べていた。

俺と坂東、どっちに付こうか考えているんだろうけど、悩むだけ無駄だ。

俺は最初から、坂東みたいにお山の大將を気取る気はない。

びを売られても気分が悪いだけだ。

「それじゃ奧井君、また放課後にね」

「ああ」

俺は自分の席に著くと、周囲の人間にも見えるMR畫面ではなく、自分にだけ見えるAR畫面を開いて、ネットサーフィンを始めた。

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本作を読んで頂きありがとうございます。

スニーカー文庫から2022年3月1日に発売される書籍版は本作に加筆し、大幅に修正されています。

どうぞ書籍版もよろしくお願いします。

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