《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》リア充ライフのり口
放課後。
総務省の合同庁舎に到著して俺は、早百合部長に言われて、詩冴よりも先に、他の能力者たちを、各仕事場へ送るよう言われた。
一番手は、金屬班の峰だった。
早百合部長に指定されたのは、太平洋に面した、とある港だ。
目の前には青い海が広がり、背後にはゲームや映畫でしか見ない、倉庫街がどこまでも広がっていた。
春の暖かな風に、峰のハーフアップにした長い黒髪がなびいた。
一瞬、その姿を綺麗だと思いながら、俺は風をすするように鼻をこすった。
「ここが峰の仕事場か? 誰もいないぞ?」
「うん、厳には、あの貨船の中だね」
そう言うと、峰は俺を導するように、停泊中の貨船の影へ駆け込み、船の背後へと小走りになった。
――それにしても、凄い船だな……。
埠頭に広大な影を落とす船舶を見上げながら、彼の後ろについていく。
すると、その貨船は巨大な後部ハッチが開きっぱなしで、ハッチが海水に浸っていた。
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「あの中にテレポートして」
峰は、気さくに俺の手を握ってきた。
――詩冴もだけど、男子の手を簡単に握れる子って凄いな。
ビッチは除くけど、詩冴も峰もちろんビッチじゃない。普通のの子だ。
それだけ人懐っこいというか、コミュ力があるのだろう。
朝も、學校で仲がいいわけではない坂東のフォローをれていたし。
言われるがまま、二人で貨室のり口にテレポートする。
テレビのチャンネルが変わるように、視界が切り替わった。
「さすがに広いな」
貨室の中は育館よりもずっと広くて、奧のほうなんて、霞んでしまいそうだった。
――全長は100メートルはありそうだな……。
「それで峰、こんなところで何をするんだ?」
早百合部長は、詳しくは向こうで峰から聞いてしいと言っていた。
合同庁舎では話せない理由でもあるのだろうか?
「私は金屬班だからね、海から、金屬を出するんだよ」
「え?」
俺が驚いている間に、峰は海の方へ向かって歩き出した。
海に向かって大きく口を開いたハッチ。
その端には座り心地の良さそうなソファと、テーブルが置かれている。
ソファに腰を下ろすと、峰は、靴の先で、タン、と床を蹴った。
剎那、彼の足元がスパークした。
電流のようなは床、ハッチ、そして、海へと消える。途端に、海の水が一斉に船へ押し寄せてきた。
「おわっ!? え?」
驚いて一歩引いてから、俺は首を傾げた。
海水が登ってきたかと思えば、ソレは銀をしていた。
銀の細い川が、床の上を何本も走っていく。いや、何故か二本だけ、が違う。
一本は金で、一本は赤っぽい。
その景を、俺が目を丸くして追っていると、峰の優しい聲が説明を始めてくれた。
「これが、私の仕事だよ。私の能力は、質の分解と再構築をするリビルディング。知ってる? 海にはね、77種類の元素が溶け込んでいるの。その中には鉄も銅も金も銀もプラチナもっている。金なんて、今まで人類が掘り起こしたのが22萬トンなのに、海には50億トンも溶けているんだよ」
「そんなにか!? じゃあ何で誰も採取しな、いや、濃度が薄いのか」
俺がすぐに気づいて訂正すると、峰は生徒が100點を取った擔任のようにっこりと笑った。
「正解だよ。なにせ海水1トンあたり1ミリグラムしか含まれていないからね。海水を蒸発させる燃料費のほうが莫大にかかっちゃうよ」
鈴を鳴らすように、コロコロと笑う峰にはあざとさがなかった。素直に可くて、しばらく眺めていたくなった。
――峰みたいな子って、実在すんだな。
「あの金のは金で、赤っぽいのが銅、あとの銀のやつは、他の金屬ってわけか」
「そういうこと。それで奧井君には悪いんだけど、今から10分おきに戻ってきて、インゴットをそれぞれ別の倉庫にテレポートさせてしいの」
「だからこの港なんだな」
どこまでも続く倉庫街を思い出しながら頷いた。
「さっき、早百合部長からもらったファイル、開いてみて。そこに地図報が載っているはずだから」
言われた通り、早百合部長からけ取ったファイルを開くと、倉庫街の見取り図が視界いっぱいに広がった。
無數の倉庫には、倉庫番號と、何の金屬をテレポートさせるのかが記載されていた。
首を回して、チラリと倉庫の奧を見やった。
金屬別にインゴットがピラミッド狀に積み上がり、その高さは長の一途を辿っている。
あの勢いなら、10分後にはこの広い倉庫も満載になりそうだ。
「だけどね奧井君、このことは他言無用でお願い」
「それは、悪用されないようにか?」
「それもあるけど、もしもこのことが世間にバレたら、きっと國連は、海水の利用を制限するでしょ? それでもいつかはバレちゃうと思うけど、それまでにどれだけの金屬を回収できるかが問題だね。私の仕事は表向き、【都市鉱山】から金屬を回収するってことになっているけど、【廃品】の中に含まれる金は1萬トンだもん。量が違い過ぎるよ」
都市鉱山。
確か、家電とかの機械ゴミに含まれる金屬を、鉱脈に見立てた言い方だったかな?
「だからね」
峰はソファから立ち上がると、やわらかい足取りで歩み寄ってきた。
「このことはみんなにだよ」
ウィンクと笑顔に、俺は一瞬、棒立ちで固まってしまった。
それぐらい、峰の笑顔は魅力的だった。
別に、峰のことが好きなわけじゃない。
ただし、犬が可いとか、富士山が綺麗だとか、音楽に聞き惚れたり、視聴覚報に魅力をじる心ぐらい、俺も持っている。
だから、峰の包容力溢れる聲と和な笑みにイイナとじても、これは仕方ないのだと、自分に言い訳をした。
だけど、どれだけ言い訳をしようと、俺が彼とを共有することで、一種の達と優越をじてしまうことは、誤魔化しようがなかった。
――俺も所詮男か。
早百合部長も知っているだろうし、何も、俺と峰だけの、というわけでもない。なのに、馬鹿な話だと、軽い自己嫌悪になってしまう。
でも、この覚は嫌じゃなかった。
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