《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》ハイテンションアルビノガール

港から総務省に戻った俺は、舞らサイコメトラーたちを警察署へ送り屆け、他のメンバーも、それぞれの仕事場へ送った。

そうして最後に殘ったのは、何十か所も周らなければならない、詩冴だ。

「ここが最初の場所っすね」

俺と詩冴は、東京都のとある山中にテレポートしていた。

峰の仕事場は風香る海だったけど、詩冴の仕事場は深い緑と土の匂いに包まれた、森林浴スポットだった。

四月の山中は草花が咲きれ、枝葉を見上げれば、リスの親子が走り抜ける貴重な姿が見られた。

「ああ。ここから順に十數キロずつズレて力を使えば、ローラー作戦式に東京中のれるはずだ。そういや今、気づいたんだけど、山の上で能力使ったら、ふもとのを効果範囲に収められないんじゃないのか?」

「それは大丈夫っすよ。オペレーションの効果範囲の半徑10キロはドームや球狀じゃなくて、円柱っすから。厳には半徑10キロ、高さ上下10キロずつの円柱空間が効果範囲なんすよ。だから山の形や高さに関係なく、すっぽりシサエの手のっす♪」

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「ならいいけど、オペレーションてどれぐらい持つんだ?」

「一瞬でも効果範囲にったら半年ぐらいは効き続けるっすよ。能力を使うのやめたら効果切れなんてオチはないんで安心してくださいっす♪」

詩冴はなぜか、両手を挙げたバンザイポーズで笑った。

そして、八重歯が可いという、どうでもいいことに気づいた。

「今更だけどお前の能力チートだよな。効果範囲といい時間といい、もうレベル100ってじだぞ」

「実家にいたときから10年以上毎日使いまくってますからねぇ。レベルキャップなんてもう越えてるっすよ」

指を三本立てたスリーピースを目元に當てて、「キラリン」とかふざける詩冴。

本當にどこまでもテンションの高い子だ。

パリピなうぇーい系かとも思ったけど、坂東みたいないかにも強そうな奴にびず、初対面から悪黨ヅラ呼ばわりしたりするので、俺の好度はかなり高い。

きっと、単純に明るく人好きな子なのだろう。

「それじゃあ早速行くっすよイクオちゃん!」

両手で拳を作り、肘をわき腹につける足を広げて仁王立つと、詩冴は純白のツインテールを震わせながら、あらん限りの力を込めてんだ。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお燃えろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおシサエの中の何かぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「お前はどこの年漫畫時空から來たんだよ!?」

「え? だってせっかく誰もいないんすから、第二形態に覚醒する練習をする絶好の機會じゃないっすか? シサエは実家にいた時から山や森にいくたび猛練習していたっすよ」

と、説明しながら、詩冴は國民的マンガ主人公たちの必殺技ポーズを、次々披していく。

ナントカ波や、ナントカ拳のポージングをやり終えると、詩冴はくわっと目を剝いた。

「あっ!? 二人いればフュージョンできるっす! イクオちゃん! シサエと合するっす! エロくない意味で!」

「逆にエロいわ!」

俺がツッコミのチョップを脳天に食らわせるジェスチャーをすると、何故か詩冴は上機嫌に喜んだ。

「えへへ、じゃあそろそろ真面目にやるっすよ」

また、握り拳で肘をわき腹につけて、マンガの主人公がスーパーモードに変しそうなポーズでぶ。

「半徑10キロ以の野生のシカ、イノシシの半分! 及び、全野生外來生は消化の中を空っぽにしてから近くの食加工工場まで移するように! なお、シカとイノシシは年齢の高い順に、ただし子育て中の個は除く!」

途端、山がにわかにざわめいた。

一方で、詩冴はなにごともなかったように、くるりと振り返った。

「これでOKっすよ。じゃあ次のポイントに行くっす」

「おう」

消化を空っぽにするのは、解するときに邪魔だから、そして移中、町を通るから、道路がのフンだらけにならないようにだ。

あと、年齢順なのは、絶滅に配慮してだ。

全部、俺、詩冴、早百合部長で話し合って決めた。

「えーっと、次のポイントは……」

「あ、シカちゃんっす♪」

俺がデバイスでMR畫面を開いて地図を確認しようとすると、茂みの中から、立派な牡鹿が出てきた。

「君はちょ~っとこっちに來るっすよ」

詩冴は牡鹿を招き寄せると、大膽にも角を握りしめて、その背中にまたがった。

「ライドオン! イクオちゃん、スクショしてしいっす!」

「え? おう?」

あまりにアクティブな行に度肝を抜かれつつ、俺は言われるがまま、視界スクショで撮影した。

「うへへ、これでまたシサエのライドオンフォルダが潤うっす♪ 目指せ全制覇~♪」

「お前、前々からこんなことしてたのか?」

詩冴は、牡鹿の背中から降りて頷いた。

「はいっす。自分、実家が北海道でこの春にパパの転勤で引っ越してきたんすけど、北海道のは制覇したから、今度は本州のを制覇するっす」

――北海道出で白い髪とって、イメージまんま過ぎだな……。

空中にMR畫面を展開すると、詩冴は俺に畫像フォルダを見せてきた。

「これがエゾシカちゃん、これが道産子馬ちゃん、これがキタキツネちゃん」

どの寫真も、の背中に詩冴がまたがり、無邪気に笑っていた。

どれも、アイドルやモデルの営業スマイルじゃない。心の底からの笑顔だとわかる魅力があった。

この年齢で、赤ちゃんもかくやというほど天真爛漫に笑えるのは、もはや才能だと思う。

「そしてこっちが」

詩冴の白い指先が、MR畫面をスライドさせた。

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