《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》ドキッとガール
ローラー作戦で東京都全土を効果範囲にし終えたのは、夜に近い十八時だった。
詩冴と総務省に戻った俺は、すぐさま、各地の能力者たちを迎えに行った。
最後に、貨船の金屬ピラミッドを全て倉庫にテレポートさせてから、峰を総務省に連れ戻した。
「二人ともお帰りっす」
講堂には、まだ詩冴が殘っていた。頭の上に瓶を乗せて、バンザイポーズをしている。用な奴だ。
「どうした? 早百合部長に果報告は済んだのか?」
「済んだよー。だから二人とコレ、食べようと思って」
詩冴が頭の上から降ろしたのは、高級ハチミツの瓶だ。
峰が尋ねる。
「あれ? どうしたのそれ?」
「今日の仕事先で貰ったんす。イクオちゃんのアイディアで養蜂所からミツバチちゃんらの天敵一掃しつつ、ミツバチちゃんたちに頑張るようオペレーションかけたんす。そしたら経営者さんがお禮にって。水飴で水増しされていない純度100パーセントの高級品っす。これからシサエの家でハニートーストにアイス乗せて食べるっす♪」
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瓶を手にくるくる回る。その姿は、高校一年生とは思えないほどいも、彼がやるとあざとさや演技臭さをじない。
まさに、天然で天然なのだろう。
「三人でって、俺もか?」
他人の家に、まして子の家にわれるのなんて初めてなので、疑念と警戒心を持ってしまう。
「んあれ? どうしたんすかイクオちゃん? もしかして悪いこと考えてます? 的な意味で」
「子がそういうことを言わないっ」
「おーっと、今のは問題発言すよセクハラっすよ男差別っすよ、というわけでイクオちゃんは謝料としてシサエをおうちまでテレポート送迎するっす」
「あ、お前。さてはそれが狙いだな」
総務省の合同庁舎から家まで帰るのが面倒なので、俺に送らせるつもりらしい。
「さぁ~て、それはどうっすかね~」
「ねぇ詩冴さん、私もいいの?」
「いいっすよ、イクオちゃんのフレンドはシサエのフレンドっす」
「え?」
俺は戸った。
俺と峰は友達じゃない。
でも、今は同じチーム、と言えなくも無いし、を共有しているわけで、友達じゃない宣言をするのもはばかられた。
すると、俺が答えを出す前に、峰が笑顔になった。
「じゃあ私と詩冴さんも友達だね」
――コミュ力高いな。
いつもの俺なら、勝手に友達扱いはなれなれしくて好みじゃない。
學校の指示で同じクラスに振り分けられただけで友達、連絡先知っていれば友達、という理屈は嫌いだ。
けど、狀況もあって、今だけはむしろ助けられた気分だった。
詩冴は、甘えるように俺の左手を握ってきた。
「じゃあイクオちゃん、住所教えるからシサエのおうちにGOっす」
詩冴が展開したMR畫面に地図が表示されて、彼は一點を指さした。
「奧井君、私もお言葉に甘えていいかな?」
「ん、ああいいぞ」
俺が手を差し出すと、峰も手を握った。
理的に両手に花の狀態で、俺は詩冴の家にテレポートしようとした。
ソロ充を気取っていた俺だが、はたからはどう見えているのやら。
「あ、それと今、両親いないから気遣いは無用っすよ」
「え?」
深い意味は無くても、ドキリとせざるを得ない臺詞を投下された直後、俺らはその場から姿を消した。
◆
三日後の4月16日月曜日の夕方。
俺と詩冴は、政府の小型飛行機に乗って、太平洋の海を高速飛行し続けていた。
「でもいいのかよ。ここって排他的経済水域の外だろ?」
意外とやわらかいシートに背中を預けて、俺はぶっきらぼうにそう言った。
ちょっと調べたけど、1958年以降、公海での漁業は年々規制が厳しくなり、今では原則止だ。
「だいじょうぶだいじょうぶ♪ 排他的経済水域の外での漁業は止っすけど、シサエたちがやっているのは太平洋のおサカナちゃんたちを日本の漁港へ導しているだけっすからサユリちゃんも言っていたっすよ」
「いいか詩冴、グレーゾーンということはつまりブラックゾーンではないのだ!」
「一番権力持たせちゃいけないタイプだよな……」
やれやれと、重たいため息をついた。
この仕事を始めてから、なんだか前よりもため息が増えた。
でも、不思議と前よりも楽しんでいる自分がいる。
その原因は、どう考えても彼たちのおかげだろう。
「と、いうわけで、イクオちゃんは日本の漁獲高を上げ、食糧問題解決のために働き続けるシサエのお話相手になって接待するのが仕事っすよ」
「目を輝かせるな鼻息を荒くするな近い近い。ていうか接待って何をするんだよ?」
全力で警戒しながら俺がへの字口になると、詩冴は拳を突き上げた。
「よくぞ聞いてくれたっす! ずばり、シサエ式青春の方程式を聞いて想がしいっす! ではまずは第一章、男の友は立するか第一部一編まえがき」
「それ、トイレ休憩はくれるんだろうな?」
「オヤツタイムはつくっすよ」
俺が苦笑をらすと、詩冴は手持ちのバスケットの中から、ハニートーストを取り出した。
「Eカップ子高生の手作りっすよ」
「子がバストサイズ暴しない」
ドヤ顔の詩冴をたしなめながら、俺はハニートーストを手に取った。
モテない陰キャ平社員の俺はミリオンセラー書籍化作家であることを隠したい! ~転勤先の事務所の美女3人がWEB作家で俺の大ファンらしく、俺に抱かれてもいいらしい、マジムリヤバイ!〜
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