《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》転校生は金ボディーガード

「では、今日は転校生を紹介する」

翌朝のホームルーム、擔任の一言で、教室は騒がしくなった。

高校一年生の四月で転校生となれば、當然だろう。

こんな時期に転校してくるなんて、どういうわけだと、みんな囁き合う。

「針霧(はりきり)、れ」

幕が開くようにドアがスライドして、姿を見せたのは、目の覚めるような、【真正】のだった。

教室中に靜寂が走って、息を呑む音が響いた。

亜麻の髪にハチミツの瞳をした、金

けれど、クールな顔立ちはアジアンビューティーを現した切れ長の目に、らしい桜のくちびるが印象的だった。

背は高く、手足はスラリと長く、ウエストは細く短く、だけどそれら全てと相反するように、周りと腰回りは発育が良い。

セクシー系MMD畫の素がそのまま実化したような、2・5次元がそこにいた。

みんな、次々耳裏のデバイスを外して、彼に視線を合わせた。

が、デバイスの見せているMR映像ではないかと疑っているようだ。

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俺も、その気持ちは痛い程わかる。

「針霧、自己紹介をしろ」

まるで、証明寫真を撮るように無表だった彼は、擔任に促されて、無関心な聲で言った。

「はじめまして。名前は針霧桐葉(はりきり・きりは)。趣味は……音楽聞きながら寢ることかな」

他人との接を最低限に抑えるような、気だるげな態度だった。

それでも、彼の魅力はまるで変わらない。

は、今どきの高校生には珍しく、化粧をしていなかった。

化粧もアクセサリーも裝も、笑顔すらなく、それでもなお、彼は圧倒的かつ完璧なだった。

まさに、【真正】の、と言ってしかるべき存在だ。

「所屬は総務省異能部の戦闘班。この學校には、奧井育雄って子を守るために來たんだ。ボクはボディーガードってわけなんだけど」

クラス中の視線が俺に集まると、彼も俺に目を留めた。

そして、無機質な表に、の火が燈った。

「みっけ♪」

ぱっとまぶたを持ち上げて、聲をはずませた。

軽くて貓のようにやわらかい足取りで、彼はするすると俺との距離を詰めてきた。

絶世のの急接近に、俺はぎょっとして、やや背筋がびた。

は頭を振って、あらゆる角度から俺の顔を、ためつすがめつ観察してきた。

「キミがボクのターゲットだね。ふーん、へー、寫真で見るより可いかも。人畜無害そうで」

「それは、褒めているのか?」

「褒めてるんだよ。人間なんて人畜有害な奴ばかりじゃないか」

子供のように遠慮のない、い殘じさせる聲音に違和を覚えるも、彼は止まらなかった。

俺の機に手をついて、前のめりに顔を近づけてきた。

――うわっ。

吐息の程圏から、彼はやわらかい表で囁いてくる。

「早百合部長から、ボクのことは聞いているよね? ボクは針霧桐葉、今日からボクがキミのボディーガードだよ」

からは、瞳のと同じ、ハチミツのように甘い匂いがした。

香水じゃない。

の吐息からも、同じ匂いがする。

これは、彼の香りらしい。

そこへ、後ろの席に座る坂東が聲を上げた。

「おい、なんで奧井なんかにわざわざボディーガードが付くんだよ?」

途端に、針霧の表が絶対零度まで冷え込んだ。

「誰? キミ?」

「ッッッ!!!」

坂東の顔が屈辱に染まった。

これはキツイ。

坂東は、い頃から常にみんなの中心人で一番の有名人で、坂東は知らない人でも向こうは知っている、なんてのが普通だ。

きっと、他人から「誰?」なんて、言われたことはないだろう。

「あ、思い出した」

針霧の一言で、坂東の眉間のしわがゆるんだ。

「キミってあれだよね。初日にどうして氷帝と呼ばれるオレ様に仕事がないんだってヒステリー起こして早百合部長に完全論破されていた。えーっと、製氷機があればキミはいらないとかそんなこと言われてなかったっけ?」

「ッッ~~~~~~!!」

坂東の眉間と鼻に、彫刻刀で刻み込んだように深いしわが集まり、顔は憤死せんばかりに赤くなった。

針霧の容姿が坂東好みでなければ、今すぐ氷の棒で頭を連打されているだろう。

「ちょっと待てよお前。坂東さんが製氷機以下なわけねえだろ! 坂東さんは氷帝と恐れられていて、そこらの不良が100人がかりだって勝てないんだぞ!」

取り巻きの弁護も、けれど新參者の針霧にはどこ吹く風だった。

「アニメじゃないからね。異能者よりも戦車や戦闘機の方が強いから、ボクら戦闘系能力者は需要ないんだよ。それでもサイコメトリー能力で前科がなくて【神面】に問題がないって証明すれば、要人警護の仕事を斡旋して貰えるはずなんだけど、確かキミ、滅茶苦茶揺しながら斷っていたよね。育雄とは真逆だね」

生徒たちの間でひそひそ話が始まると、坂東は機を叩いて立ち上がった。

「てめぇ、ちょっと可いくてがデカイからって調子こいてんじゃねぇぞ。オレが奧井以下だって言いてぇのか?」

「當然さ」

氷使いの坂東が熱くなる一方で、針霧は冷徹な態度を返した。

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