《スクール下克上・超能力に目覚めたボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました★スニーカー文庫から【書籍版】発売★》一軍ざまぁ完了

立て板に水とばかりに言い切った稲に、連中は途端に狼狽えた。

「いや峰さん、これは違うんだよ」

「そうそう、オレらはあくまで峰さんを助けてあげようと」

「私は何も困っていないよ。何から助けるの?」

當事者に斷言されて、連中はさらに旗が悪くなる。

「だって、どう考えても峰さんとこいつじゃ釣り合わないし」

「だから、同じ能力者ってことを盾にしてこいつが強引に迫っているんだと」

そう言われて、俺は劣等で怒りが沈靜化した。

稲は【眉目秀麗】【績優秀】【品行方正】、しかも、一人で日本の金屬、類、農産需要を賄う規格外の能力者だ。

一方で、俺は取り立てて何か點があるわけではなく、能力はただのタクシー。

國民的トップアイドルと地下アイドルが対等に食事をしていれば、違和を覚えるのは當然だろう。

けれど、俺の想いとは裏腹に、稲は、きりっと眉を引き締めた。

「この一週間、何を見ていたの? 誰がどう見ても奧井君は彼持ちだよね? 桐葉さんとラブラブだよね? 桐葉さんに夢中だよね? なのに桐葉さんの眼の前で浮気するわけないよね? 私は二人と友達で、放課後も一緒に食事をする仲なの、だから學校でも一緒なの」

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一部の隙も無い稲の理論武裝に、連中はたじたじだ。

俺が相手なら絶対にトンデモ理論を駆使して反論するのだろうが、相手が學園一のなら、素直に聞くらしい。

それにしても意外だ。

稲は、爭いを好まない子だと思っていた。

あの坂東にでさえ、無難に対応して、角が立たないよう、その場が丸く収まるよう、努めるのが、いつもの稲だ。

だから、こうやって明確に誰かの側に立って、相手を責める姿には、俺も面食らってしまった。

連中は、どうすればいいか戸い、お互いに顔を見合わせ、主導権を押し付け合った。醜い責任のなすり合いだ。

そこへ、連中にとってはちょうどよくと言うべきだろう。一週間ぶりに、坂東の聲が割り込んできた。

「奧井ぃいいいいいいいいい!」

坊主頭に申し訳程度のが生えた頭で柳眉を逆立て、顔を真っ赤にした坂東は、復讐の鬼そのものだった。

「この一週間、オレがどれだけ酷い目にあったかわかるか? テメェに下水道に落とされたせいで下痢と嘔吐と高熱が続いてなぁ、ベッドの上で毎日毎日生死の境を彷徨ったんだよ」

に、床を蹴りつけるように迫りながら、坂東は拳を振り上げた。

「テメェのせいでなぁ!」

「うおっ!」

驚いた俺は、急回避としてテレポートを使った。

――でもどこに? また、下水道はマズイ。下水道以外で、ヒステリーを起こした坂東をテレポートさせても誰の迷にもならない場所。下水道以外で。

そうやって、俺が下水道の景を頭に思い浮かべていると、坂東の姿が消えた。

『あ……』

俺とクラス中の口が、同じ形で固まった。

桐葉だけが、あっけらかんと尋ねてきた。

「ハニー、今度はどこに送ったの?」

「……いや、下水道以外のどこにしようかって考えながらテレポート使ったから」

「……ハニー君、まさか」

稲が、口角を痙攣させた。

俺は、必死に取り繕った。

「ほ、ほら、心理學の話で、30秒間キリンについて考えないでくださいって言われても絶対考えるって話、聞いたことないか?」

「ぎぃえぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

窓の外から、坂東の絶が聞こえてきた。

その聲は、途中からは五十音では表現不能のモノに変わり、やがて途切れた。

「うわぁ……ハニー君て、バトル漫畫なら絶対に最強主人公だよね……」

「え?」

「だって、その気になれば誰でも好きな時に宇宙空間に放り出せるでしょ?」

その言葉を聞いた途端、形生徒7人組は同時に、ゾッと青ざめた。

「な、なんかオレらの勘違いみたいだったわ」

「そうだな、ごめんな奧井君」

「じゃあオレら、帰るよ」

「うんうん、ほんとごめん。オレらが悪かったよ」

「言っておくけど言い出しっぺあたしじゃないから」

「あたしはみんなについてきただけだから」

「ちょっ、あんた卑怯、あ、とにかくじゃあね奧井君」

――は?

そのまま、7人は尾を巻きながらに帆をかけて逃げ出した。

ぽかんとする俺に、稲は顔の前に手を立てて、申し訳なさそうにウィンクをくれた。

「ごめんねハニー君。風評被害、立てちゃったかな?」

「いや、宇宙にテレポートさせれば誰でも殺せるなんて、どうせ誰かが気づくだろうし、気にするなよ。むしろ、悪質な人間が俺を避けるようになれば過ごしやすくなる」

ぴんと閃いて、俺は桐葉に向き直った。

「桐葉、俺、気に食わない奴を宇宙空間に放り捨てられる超危険人らしいぞ。それでも俺のこと、ハニーなんて呼べるか?」

「呼ぶよ。だってハニーはボクにそんなことしないでしょ?」

「わかってるじゃん」

「ハニーの彼ですから」

漫畫やラノベでよくある口上だ。

異能者が危険と言うなら、人間は誰でも危険だ。先端の尖ったボールペン一本あれば、人は人を殺せる。武なんて無くても、人は人を毆れる。それを警戒しては、外なんて歩けない。

ただし、こんな使い古された臺詞ですら、現実の人間は実行できない。

勝手に他人を危険視して、怯え、差別する。

それこそ、桐葉の周囲の人間がそうだったように。

「ボクたち最強カップルだね♪」

幸せそうな聲で笑う桐葉の表に、俺は自然と優しい気持ちになれた。

「そうだな」

俺よりも不幸だった彼が笑ってくれると、俺は気分が良かった。

でも、稲のことが、し気にかかった。

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