——勇者視點。

王都ギルドに勇者アクファが足を運ぶのは、大抵悪だくみをする時だ。

「よお、ギルマス」

「あー、勇者アクファよ、よく來たな。勇者が発見した真ミスリル鋼をウリにした鎧の話だが、順調だよ。

相変わらず上級の冒険者はムリだが、下級の馬鹿な冒険者には高く売れているぜ」

勇者アクファは。それを聞いてニヤリとした。

ミスリル鋼で作られた！　とうたっているが、その正は買い占められた安の裝備だ。

そんな悪品を勇者ブランドのものとして販売する。

勇者がギルマスに提案した、悪だくみの一つだ。

安く買い占め高く売る——いわゆる転売である。

裝備が不足し品薄になり、高い勇者印の裝備を買うしかないという冒険者も出てきている。

「そうか。意外とバレないもんだな」

「ああ。まぁ見た目だけは悪くないし、勇者印に釣られる馬鹿が多い。

そういえば、それを裝備したら皮が腫れたとクレームを付ける冒険者がいたらしい」

「おい、大丈夫なのか？　ギルド支給のが不良品だなんてバレたら——」

「勇者アクファよ、あんたらしくもないな。大丈夫だ、訴えたヤツは闇市の奴隷商にでも売り飛ばすさ。

もっとも、皮が腫れた奴隷では買い手が付かないかもしれないがな。ガハハ」

「お前もなかなか悪いな」

「おや、勇者様ほどではありませんよ」

勇者アクファと王都冒険者ギルドマスター・デーモ。

二人は王都ギルドの力を使い好き放題にやっていた。

悪品を売りつけたり、冒険者に高額な借金をさせた挙句、脅迫し好き放題したり。

王都には夢を持って地方からやってくる冒険者もなくない。

そんな無垢な冒険者を騙し、毟り取り、挙げ句の果てには裏の奴隷市に売り飛ばすこともあった。

しかし、最近では勇者の名を用いて、より安全な金儲けに切り換え始めている。

王都騎士団の監視も強くなっている。

近年、外國から制品の魔道や薬などが國にってきているためだ。

「それで、例の勇者パーティから追放したフィーグはどうした？」

「いや、予想以上に王都を離れるのが早くてな。今ヤツの故郷を襲わせるパーティを選定している」

「チッ。まあ、王都を離れたなら時間が多かかってもいい。どうせ、その街のギルドに顔を出すだろうから……

いや、それならいい手がある」

勇者アクファは、ギルマスに何やら耳打ちする。

「なるほど。ああ、分かった」

「じゃあ、この前脅かしたを肴にこれからいっぱいやるか。ちょっと呼んでくるわ」

「ぐへへ……夜は長いしなぁ」

勇者とギルマス。

月の仲である二人の夜は更けていく——。

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