差し出した手を取ると、花が咲くようにリリアの表がほころんだ。

「フィーグさんに選んでいただけて、改めて、自信が持てたような気がします！

……こ、栄に思いなさい！」

あ、ツンデレのふりってまだやるんだ。

リリアの頬が夕日に照らされてか、やけに赤く見えた。

＊＊＊＊＊＊

日が暮れ、俺とアヤメとリリアは近くの食堂で食事をとる。

その後、皆で家に帰りリリアの話を聞くことにした。

アヤメがぶつぶつ言っている。

「さっきの戦いを見る限り、一番お兄ちゃんと互角に戦えてたのはリリアさんだし。

パーティを組むのは……しょうがないの……」

「アヤメは魔法學園にきちんと通ってしい」

「うう……。しょうがないの……分かったの」

アヤメは割とスッキリとした表をしている。

どうやら、さっきの戦闘で何かじるものがあったようだ。

俺はリリアに明日の話をすることにした。

「明日はフレッドさんのとこ行って冒険者登録をしようか。多分、戦闘の試験もある。

それが終われば、手頃な依頼をけようと思う」

「あのフィーグさん、私から依頼があります。

……ありましてよ」

一瞬リリアの眉が下がり、口がへの字になった。

何か問題を抱えているのかも知れない。

「わかった。じゃあ、まずはリリアの依頼をけよう。よろしくな

容を簡単に説明してくれないか？」

「はい。私が前所屬していて、逃げ出したパーティなのですが——」

要約すると、話はこうだ——。

＊＊＊＊＊＊

リリアは「スキルメンテ」を持つ者がいるという噂を聞いて、王都で俺を探していたらしい。

すると、報を知っているという男が話しかけてきたのだという。

「スキルメンテだあ？　知ってるぜ。教えてやるから俺たちのパーティに加しろ」

「加したら、教えていただけるのですか？」

「ああ。しばらく一緒に冒険したら會わせてやる」

そんな會話の後、勇者パーティの二軍に參加したのだという。

っていうか、勇者パーティの二軍？　そんなもの公式にはなかったはずだが？

怪しい男にわれパーティに加したリリア。

しかし男どもはリリアが剣士であることを知っていながら、雑用など押しつけていたのだという。

さらに、リリアに武や防の購を迫ったらしい。

「俺たちのパーティは、ここで防を揃えている。

リリア、お前も裝備を揃えろ。特にこの勇者印(じるし)のミスリルの剣、勇者印のミスリルの鎧は必ず購しろ」

「私は、今の裝備で十分です。こんな高額なものは買えません——」

「文句を言うな。金がなくてもなら稼ぐ方法はあるだろう？

それが嫌なら、何か高く売れそうなものは持ってないのか？」

「こ、これだけなら」

リリアは、所持していたお金全てと、兄の形見の水晶珠を差し出したのだという。

水晶珠はパーティのリーダーが預かっておくことになったらしい。どうやらそのしさを気にったらしい。

勇者印の剣と鎧をにつけるようになってから、リリアのの調子が次第におかしくなっていく。

が腫れたりが吹き出たりぶつぶつが出來たり。彼はたまらず包帯で顔やを隠すようになる。

そうやって日々を過ごすが、目的の人に合わせてくれないことに苛立つリリア。

ある日、宿泊中の宿屋でパーティのリーダーに抗議をすると、とんでもないことを言い始めた。

「そうだな、リリア……俺たちのになったら、會わせてやろう」

「それはどういう意味ですか？」

「こういうことだよ！」

パーティの男たちは、一斉にリリアに襲いかかってきたという。

しかし、包帯に包まれた顔やがわになったところで顔を変えた。

「な——なんだ、この腫れやの滲みは……。顔も醜く腫らしやがって」

「汚ねぇ！　こんな醜いなど見たくもない。俺たちのパーティには不要だ！」

いくら抗議しても耳を貸してくれなかった——。

しまいには、奴隷として売るぞと言って迫ってきたらしい。

結局約束を反故にされた上、リリアはパーティから追放されてしまったのだった。

＊＊＊＊＊＊

そこまで話を聞いて、俺は思った。

リリアはまんまと騙されていたのだと。

典型的な詐欺だ。

俺は大変だったな、とリリアの頭をでる。

すると、彼は俺のでている手に頬を當て、を寄り添ってきた。

彼の溫かさとらかさが伝わってくる。

そんなリリアを見て、アヤメが低い聲を出した。

「リリアさん……あたし……」

ビクッと俺からを離すリリア。

しかし、アヤメは後ろからリリアを抱き締めた。

「その男たち、許せない」

「アヤメ、俺もそう思う。もしかして依頼というのはその悪徳パーティに対する報復？」

「ありがとうございます。

私はただ、奪われた水晶珠を取り戻したいだけです」

「分かった。あともう一つ、聞きたいことがある」

「何でしょう？」

「君は何者だ？　それと、【スキルメンテ】のこと、リリアは何か知ってる？」

俺の言葉に、ふう、と一息つくリリア。

「……私はエルフです。長い間、森の奧深くの……さらに奧で、一人で暮らしていました」

リリアは髪のから耳を見えるようにしてカミングアウトをした。

俺は察していたし、驚きはない。

だけどアヤメは「エルフっ？　初めて會ったの！」と目を輝かせている。

「父も母もみんな亡くなっていて、兄も、もうこの世には——。

水晶珠はその兄がくれたものなのでどうしても取り戻したいのです」

目を伏せて話すリリア。

彼は膝の上のこぶしを握りしめていた。

「形見なんだね。分かった」

「もう一つの質問ですが、我が一族は昔、スキルを整備したりスキルを生み出す技について研究をしていたようなのです」

リリアが授けてくれた【改造】は、その果の一つらしい。

とはいえ一族が全て亡くなった今、その技は失われてしまったのだとか。

「スキルは職種スキルだけじゃないようです。

例えば、特技スキル。スキルや種族スキルなど」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。特技はなんとなく分かる。

でも、スキルや種族スキルって何だ？」

「私にもよく分からないのです。ただ、は例えば型とか、別すらもスキルとして扱うらしいのです。

種族は、人間とかエルフとか……これもスキルとして定義されていて」

「まさか……まさか、例えば魔改造でスキル筋増強とか、

人間というスキルを変化させてエルフになったりできるのか？」

「はい。その可能を示唆していると思います」

「もしかして……別を変えたりも？」

「た、たぶん……。本でTSというジャンルを読んだ事がありますが、それはもしかして、スキルを作したのでは？」

いや、多分それは違う気がする……創作だし。

「そしてユニークスキルというのもあります。

例えば、【勇者】とか——」

もし【勇者】スキルを俺が作できたら？

俺は勇者にだってなれる？

今は理解できないし実もない。

でも、生きの形すらもスキルとして表されるのなら……。

『スキルは世界を支配する』

好きな言葉の意味の見方が、し変わった。

俺は……何にでもなれる？

☆☆☆☆☆☆

リリアは宿を取っているということだったが、アヤメはリリアと話をしたいと言うので家に泊めることになった。

たぶん、エルフという種族が珍しいから々話を聞きたいのだろう。

夜通し、アヤメの部屋でリリアと話をするつもりなのかもしれない。

俺はそう思っていたのだが……。

アヤメとリリアが一緒に汗を流した後、俺もお湯につかり、自室で寢ようとドアを開けたところ……。

リリアが俺のベッドに座っていた。

著替えが無かったのか、素の上に俺のシャツを著ている。

「フィーグさん、あの、々お借りしています——」

リリアは俺を上目づかいで見つめている。

な、何だ？

シャツの裾からびる足は細く長くて、でも特有のふくらみもあり綺麗だ。

はほんのり上気して、ほのかにピンクになっていた。

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