「何で、何でこんな所にっ、街中(まちなか)だぞ、人が大勢いるのだぞ？」

「魔導弾とは何ですか？」

エリゼ様は俺の聲にはっと我に戻ったようだ。

落ち著いた聲になる。

「は……はい。これは魔導弾といって、近年、國外の紛爭の現場で稀に見られるようになったものです。

竜(・)人(・)族(・)のたまごのようですが、孵(かえ)る瞬間に広い範囲を破壊し、燃やし盡くすほどの発を起こします。

街一つくらいは吹き飛ばすくらいの……」

「竜人族のたまご？　……街一つくらいを吹き飛ばす発？」

「十年ほど前に、この街の近くであった発も……いや、ごめんなさい——」

エリゼ様は俺の顔を見て口ごもった。

とにかく、ヤバいものらしい。

『たすけて——』

『たすけて——』

『しにたくない——』

再び、いのような聲が聞こえる。

周りを見ても、誰も気付いていないようだ。

この聲はまさか……？

俺の想像通りなら、このたまごの中の子は……孵らず死ぬ。その生命力を全て発のエネルギーに変えて。一度も外の世界を見る事もなく。

慌ててエリゼ様に質問する。

「止める方法はないのですか？」

「今のところ見つかっていません。

報がなすぎるのです。

何しろ、魔導弾の起を見たものは、発に巻き込まれ生きていないのですから……」

エリゼ様がギリッとを噛む。

「今まで何人の仲間が……コイツに——」

彼の顔を見ると、今がいかに絶的な狀況なのか、想像がつく。

「ひっひぃぃぃぃぃっっッ！」

「うわああああっ」

「弾だと？　記憶を消すものじゃなかったのか？」

アクファ同盟のあらくれ者たちはのけぞり、もがきながら魔導弾から離れようとする。

しかし、拘束されているためきができない。特にギザは魔導弾を抱えたまま、もがくだけだった。

そんなギザの元にエリゼ様が駆け寄る。

彼は短剣を懐から取り出すと、ギザの首筋に當てた。

「なぜこんなモノを持っている？」

「そ……それは」

「言え!!」

怒りは相當なものだ。冷靜なエリゼ様の激昂する姿を見るのは初めてだった。

脅すように、短剣をギザのすぐ橫の壁に突き立てる。

ガッという大きな音を聞き、ギザはをすくめた。

「王都ギルドのギルマスが……いざというときはこれを使えと」

「なんだと？　止める方法は聞いていないのか？」

「そもそも記憶を消す道だと聞いていて……し、しらない」

「そうか。お前たちは捨て駒のようだな」

「な……何？」

ギザたちは今さら、自分たちが使い捨てであることを悟ったようだ。

例え目の前の窮地をしても、今この危機を招いた責任は問われるだろう。

公爵や騎士を危険に曬したのだ。

ギザの瞳が、絶のに塗れていた。

「も、もう……勇者アクファ同盟はおしまいだ……」

護衛や付近のギルド職員達が相を変えて離れ始めている。

しかし、退避を呼びかけたエリゼ様は一向に逃げようとしない。

「お、お父様……お逃げになってください。ここは私が——」

エリゼ様が、ギザの元から魔導弾を手に取る。

それを両手でに抱えた。

「エリゼ……まさか——？」

「【聖騎士：防衛聖域(ドーム)】起！」

エリゼ様の周囲が、半球狀の白の結界で囲まれた。

聖域(ドーム)で発させ、衝撃をしでも弱めるつもりなのだろう。

をして皆を守ろうとしている。

「もう全て手遅れです……孵化が始まっています。

発すれば、冒険者ギルドの建くらいは……いいえ、街ごと簡単に吹き飛ばしてしまう威力です。

できるだけ遠くに逃げてください。

……數分以に発します」

俺は覚悟を決め【防衛聖域】による結界を超えてエリゼ様に近づいた。

「フィーグさん、お逃げください。【防衛聖域】によって多は被害は抑えられるはずです」

さいわい、最後にメンテしたのが【聖騎士：防衛聖域】だったので俺に複寫(コピー)されている。

俺に迷いはなかった。

「【スキルメンテ：試行】、【聖騎士：防衛聖域】！」

《功——【防衛聖域(ドーム)】 LV99、発します》

ブン、という低い音が響き、エリゼ様のより濃く大きいの結界が現れる。

この結界は部からも外部からも攻撃を遮斷するものだ。

「フィーグさんは……私より強い【防衛聖域】を張れるのですか……！

すごい……でも、それでも……」

驚きつつも、まだ十分でないことをエリゼ様は認めていた。

そこへ……。

「よおフィーグ。俺もつきあうぜ」

「フィーグさん。私もご一緒させてください」

フレッドさんとリリアが何でもないような顔をしてやって來た。

命を落とすような、そんな危険な場所に。

「二人とも、どうして？」

「私と兄(・)は(・)……フィーグさんがいない世界で生きていても仕方がありません……。

ううん、私に何かできることがあると思っています」

「ああ。俺も同じ気持ちだぜ、フィーグ」

もしかしたら——。

二人のスキルがあれば——。

より強固な防衛のスキルが得られるかも知れない。

「【魔改造】を、【防衛聖域(ドーム)】に対して実行！」

俺はぶようにして、魔改造スキルを起した。

《【剣聖：風神】の空間を切り裂く質と、

【モンク：金屬筋(メタルマッスル)】の、対象を変質させる能力を用いて、

【防衛聖域(ドーム)】を魔改造します。

——功しました》

スキル整備(メンテ)が誇らしげに俺に告げた。