《【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】》第24.0話 閑話 リリアとアヤメ
リリアはアヤメの部屋のベッドの上に座り、うーむと悩んでいた。
今日は久しぶりにフィーグが外に出かける。彼はさっそくギルドに出向くようだ。
「リリアさん? どうしました?」
「フィーグさんはすごいと思います」
「えっ?」
そりゃ、お兄ちゃんはすごいけど、急にどうしたんだろう?
唐突なすごい発言に、アヤメは聞き返す。
「私の暴走したスキルを整備(メンテ)し、魔改造して【剣聖:風神】【完全裝備】を授けてくださいました」
「うん、凄いスキルだよね。A級冒険者をボコボコにしたんだって?」
「はい、あの戦いでは圧倒的でした。多分、これならS級も、ひょっとしたらそれ以上も……」
「確かにその可能はあるかも。いいなぁ、リリアさん」
アヤメは、まだスキルの魔改造をけていないので素直に羨ましいと思った。
でも、兄妹なんだしいつでも診てもらえる、という余裕もある。
「はい……。私は、何十年も努力してきました。フィーグさんは、私の頑張りのおかげだと言ってたけど、魔改造されたスキルを習得するのに何百年かかったのやら」
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「何十年か……ほんと凄いよね、お兄ちゃんって。教えてあげないとね」
さすがエルフ、時間のスケールが違うと心するアヤメ。
「はい。そう思うのですが、でもきっと、フィーグさんは言うと思うんです。私の努力のおかげだって」
「確かに。いつもいつも、『みんなはすごい』って言ってて、お兄ちゃん自分の努力を認めようとしないから」
「ふふっ……私もそう思っています。さすが、アヤメさん、よく見ていらっしゃるんですね」
「そ、それは、妹として當然というか? 當たり前のことだし!」
アヤメは照れた様子でそっぽを向いて言った。頬がし赤らんでいる。
なるほど、これが真のツンデレか……本で読んだのとし違うなとリリアは思う。
「それで、です。男の人は、可い服を著たの人が好きだと本に書いてありました」
「そのハウツー本、大丈夫?」
「たぶん……なので、できればアヤメさんにフィーグさん好みの服を選んでしいなって思って」
「えぇ? あたしが? リリアさんの?」
突然の提案に驚くアヤメ。
アヤメ自は、節約のため最近服を買っていない。
でも、流行チェックは欠かさない。店の前で、あれがいいな、これがいいなと服を見るのが好きだった。
服を見に行くというのは楽しみだ。
でも、アヤメは兄であるフィーグの一番は自分であってしいと願ってもいる。
リリアはライバルだ。素直に頼みをけるわけにはいかない。
そう思うのだが……。
「フィーグさんのことは何でも知っているアヤメさんなら、一番喜ばれるものを選んでくださると思って……」
「し、仕方ないわね。そこまで言うのならっ」
リリアの褒めるような言葉に、あっさりと引きけてしまうアヤメ。
もっとも、リリアは狙って言ったわけでもない。心から思っていることを口にしただけだった。
☆☆☆☆☆☆
フィーグと待ち合わせの約束をし、街の服屋に出かけるリリアとアヤメ。
店の奧から出てきた店員のの子はアヤメの知り合いだ。
彼は、制服姿のアヤメを見て「いらっしゃいませ」と言いつつ、疑問を口にする。
「あらアヤメちゃん、魔法學園は?」
「あ、うん……この子の服を選んでから行こうと思って」
「あら、ずいぶん可い子ね。どんな服がいいの?」
「うーん、まずは、これかな?」
選んだのは、貴族の侍用のユニフォーム。いわゆるメイド服だ。
早速試著室で著替えるリリア。
「ど、どうでしょうか?」
「う……似合う。ここまでメイド服が似合う人初めて見た」
「確かに。かわいいなあリリアさん」
店員のの子とアヤメの想に、リリアは「じゃ、じゃあこれにしますか?」と聞く。
しかし、アヤメはふるふると首を左右に振った。
「これもいいけど他に良いのがきっとあるわ」
アヤメが選んだ服を次々に著ることになるリリア。
執事用の男裝に始まり、の出の多いドレスや、涼しげなワンピース……そしてなぜか水著まで。
「すごい。スタイルのせいかしら? なんでも似合うわねこの人」
店員の嘆に顔を赤くするリリア。
「そ、そんな……恥ずかしいです」
「じゃ、次はこれね」
アヤメが手にしたのは、スカートにブラウス。清楚系のファッションだ。
「おおぉ、これは素晴らしいです。すごく良いじです」
「ふふふ、そうでしょう。じゃあこれで決まりね」
「はい、ありがとうございます! でも……」
今まで著ていた全然系統の違う服はいったい……リリアは疑問に思いつつも、アヤメが楽しそうにしているのを見て口にはしなかった。
リリアは代金を支払い、店を後にする。
「じゃあ、このままリリアさんは服を著てお兄ちゃんとの待ち合わせに行ってね。著替えは私が持って帰るから」
「はい……ありがとうございます! アヤメさん。きっと、フィーグさんは喜んでくれますよね?」
「うん。大丈夫、自信持って。髪も編んであげたし……とてもかわいい」
アヤメはうっとりしながら、エルフの貌というのは神的な何かがあると思った。
リリアの可らしい姿を見ながら、ふと気になったことを聞いてみることにする。
「それで、リリアさんは、お兄ちゃんのことが好きなの?」
「えっと……はい、大好きです。悩んでいた私に希を下さいました。私を認めてくださって……それから……」
「ううん、そうじゃなくて、男の人って意味で」
「えぇっ」
途端に顔を真っ赤に染めるリリア。見えないけど、耳の先まで真っ赤なのだろう。
「どうかな?」
「……はい。男としてお慕いしています。その、これからも私の全部を捧げてもいいと思います。そ、そういう関係になりたいです」
「そっかぁ」
アヤメは、リリアが兄のことを対象として好きだったことに驚きはなかった。
そういえば、なんか二人の様子がおかしい朝もあったし……。
でも、リリアの言う全部を捧げるってなんだろう? それもリリアが參考にしているというハウツー本に書いてあったのかな? そういう関係?
アヤメはまだ、その意味をまだ理解できない。
「今日は本當にありがとうございました。アヤメさんにも、何かお禮ができたらいいのですが」
「うーん、そうね…………ううん。お兄ちゃんのことよろしくね。じゃあ、私は魔法學園に行くから」
「あっ、はい!」
リリアは嬉しそうに手を振る。
兄に會いに行くリリアの後ろ姿を見ながら、アヤメも手を振り返してその場を立ち去る。
二人の足取りは、どちらも軽やかで、楽しげだった。
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