《【最強の整備士】役立たずと言われたスキルメンテで俺は全てを、「魔改造」する!みんなの真の力を開放したら、世界最強パーティになっていた【書籍化決定!】》第32話 暴走(2)——side 元・王都ギルマス・デーモ

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気がつくと、手足が枷に繋がれた狀態で牢屋に寢かされていた。

どうやら拷問は終わったらしい。

気を失ったことで終わったことなど一度も無いのだが……。

「へっ、お前……生きてたのか」

口の悪い看守が、オレに哀れみの目を向けてくる。

「あ……ああ……そのようだな」

「いくら水ぶっかけても起きないから、もう意識が戻るなんて思われていなかったようだぜ?」

なるほど、死んだかもう意識が戻らないと思われて拷問が終わったということか。

お優しいことだ。

「ぐっ」

オレはひっきりなしに続く背中、いや全の痛みに気が狂いそうになっていた。

こんなんだったら、意識が戻らない方がマシだ。

その時。

——ガシャン。

鉄の扉が開く大きな音がして、誰かがってきた。

見覚えのある姿、顔。

「勇者アクファ様、手短にお願いします」

「ああ、分かった」

キイ、と錆び付いた牢屋のドアが開き、その人ってきた。

勇者アクファ……。オレを破滅に追い込んだ男。

オレは床から起き上がる気力をもう失っていた。

「いいザマだな。デーモよ。

大変だったなぁ」

「勇者アクファ……あんたがフィーグとかいう男を追放したはずなのに、どうしてオレがやったことになってるんだ?

しかも魔導——」

オレの言葉を遮るように勇者アクファがまくし立てる。

「はて? 何のことやら。お前がやったことだろう?

だいたいお前が捕まったせいで、あのエリゼという騎士がギルドの改革を始めやがった。そのおかげで俺サマは収が減ってしまったんだが?

俺サマの印を付けた裝備品も、全部田舎町に送られて錬し直しているって話じゃないか?

これで間抜けな冒険者のを騙して抱けなくなってしまった。

どうしてくれるんだ?」

「……お前……オレを陥れておきながら何を言っているんだ?」

「フン。俺サマをお前呼ばわりか……。

まあいいさ、変に思い出されても面倒だしな」

勇者アクファの瞳が妖しくる。

「【勇者:祝福(ブレス)】スキル、起

勇者アクファのから、黒い霧のようなものが沸いてオレの周囲を囲んだ。

が言うことをきかなくなる。

呼吸が速くなり、中の傷がうずき出す。

「ぐッ……はっ?」

このの狀態はまるで呪いのようだ。

これが祝福(ブレス)?

「アクファ、お前……一何を?」

「わはははは。どうした?

我が勇者スキル【祝福(ブレス)】だぞ? もっと喜べよ!」

「く……苦しい。まさか、勇者スキルが暴走しているんじゃないのか?」

「だったら……?」

開き直ってやがる。こいつ、自覚があるのか?

オレは息苦しくなってきた。

呼吸は速まるのだが、一向に苦しさがなくならない。

視界もぼんやりしてきていて、暗くなってきている。

勇者アクファの聲が続く。

「暴走? それがどうした?」

「何ッ? お前……本當に……勇者アクファなの、か?」

「何を言ってるんだ? 俺サマは何も変わらないぞ?

魔導弾も不発だったようだなぁ。ボンクラフィーグが解決したって? アイツの方も早めに始末しないとな」

「…………!!

ぐぅ……」

オレはついに息を吸えず、呼吸ができなくなった。

冷たい床に突っ伏し、きが取れない。

そうだ、看守は?

せめて魔導弾は勇者アクファからもらっただということを伝えなければ。

コイツのせいで、オレはわされ、手を出してはいけないところに手を出してしまったのだと。

僅かに顔をかして見ると、あの口の悪い看守が眠っている。

この國の看守や兵士たちは優秀で勤勉だ。眠るなんて事は今まで無かった。

いったい何が起こっているんだ?

「キサマ……勇者アクファ……貴様ァ!」

「まあ運が良ければ生きているかも知れないな。いや、それは無いか」

カツッ、カツッ……。

勇者アクファの足音が遠ざかっていく。

ガシャン!

扉が閉じる音を聞いた時、俺の意識は闇の底に沈んでいく。

もう二度と浮かび上がれない闇の奧底へ——。

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