《【書籍化】ループ中のげられ令嬢だった私、今世は最強聖なうえに溺モードみたいです(WEB版)》24.『先見の聖』とお茶會③

そう。私が大きなクロスいっぱいに刺繍したのは、この國の始まりを表した神話だった。一定レベル以上の教養を備えた人なら誰でも知っている容だけれど、書き記すことは固くじられ口承でけ継がれている。それほどに神聖なものなのだ。

私はこの神話の容を聖になってから知った。スコールズ子爵家の家庭教師は暗唱ができなかったからだ。だからクリスティーナも絶対に知らないと思う。

これが私の意趣返し。クリスティーナに『これは自分が刺繍したものではない』と言わせるための。

そして、狙い通りクリスティーナは涙を浮かべて顔を歪ませる。

「ち、違うのです。この刺繍……実は私ではなくクロスを持ってきたお姉さまがしたもので」

「クリスティーナ嬢、何を仰っているのかしら? 先ほどまで自分の作品だと仰っていたわよね?」

「あの私、その神話のことを知らないですし……。とにかくこれはお姉さまの作品なのです。私がこんな大それた模様をうはずがないではないですか! ね、お母様!」

Advertisement

「そ、そうだったのね。クリスティーナ。あなた巫の研修で忙しかったもの、仕方がないわ。それにしてもセレスティアはもうしお勉強なさい。この刺繍も……よく見れば糸の始末がガタガタな気がするわ!」

ええ、それはないと思いますお継母様。

私の刺繍の腕をべた褒めだったのに。まぁ、それもクリスティーナがったものだと思っていたからこそなのだろうけれど。

がっくりきた私の耳に『クリスティーナを守る會』筆頭だったはずの、アンナの困した聲が屆く。

「ですが……セレスティア……嬢、も神殿での研修中だったのでは」

庭がしん、とした。

訳がわからないという風に見守っていた出席者たちも、この會話がどういう質のものかを理解したようだった。

「そろそろもういいでしょうか」

その靜けさを破ったのはトラヴィスで。この後、場を収めるために聖だと名乗り出る決心を固めていた私は、張にを固くする。

「彼は、神殿が厚く保護する聖です。私は神として聖を守るためここに參りました。セレスティア様。このクロスをつくられたのはあなたでよろしいですね」

「はっ……はい。このクロスには、ルーティニア王國の起こりを示す神話を刺繍しました。もちろん、聖屬の魔力を含ませています。聖には神話を語ることが許されていますので決して禮を欠いた品ではございません。飾っていただくと、家を守ってくれると思います」

「まあ! それなら意味が全く違ってくるわ。スコールズ子爵家からは神殿に仕える息が誕生したと伺っていたけれど……セレスティア嬢、あなたもだったのですね」

「はい」

にっこりと微笑んで見せると、エイムズ伯爵夫人は私の手を取ってくださった。

「それならそうと仰ってくれればよろしいのに。……トラヴィスでん……様?」

「誤解を解くのにちょうどいい機會だと思ったのです。この聖を守るものとして」

どうやら、トラヴィスは自分の分について明かすつもりはないらしい。けれど、エイムズ伯爵夫人からの呼びかけやもてなしに垣間見える敬意だけで、今日の出席者には十分に思えた。

「ところで、そちらのクリスティーナ嬢とアンナ嬢からは今日のドレスコードがライムグリーンと聞いていましたが、お間違えはないでしょうか」

「「!!!」」

トラヴィスが笑顔で放った言葉に、クリスティーナとアンナが震えあがった。

実は、私も馬車に乗ったときから気がついていた。トラヴィスのポケットにはライムグリーンのハンカチが見えていることに。

けれど、私が著ているドレスや小には何ひとつとしてライムグリーンが使われていない。意味深なバージルの微笑みを思い出すと、これは異母妹からの罠だったのだろう。

「そんなこと……ねえ? アンナ様」

「あっあの……」

さらに挙不審になった二人をエイムズ伯爵夫人が睨みつける。

「ライムグリーン? ……おかしいわね。トラヴィス様、あなたも知っているでしょう? この家でのライムグリーンの扱いを」

「はい、もちろんです」

「この家でライムグリーンは喪服のと同じよ。十年前に、霊が去ってから」

ルーティニア王國の高位貴族には霊の加護をけている家が多い。霊は守り神のような存在で、や鳥の外見をしていたり、見た目は小さな子どもだったり、さまざまだ。

ちなみに、スコールズ子爵家にはいない。あの家のことを思えば當然だけれど。

「うちの霊は鳥の外見をしていたのよ。鮮やかなライムグリーンのね。この家をずっと見守ってくれていたはずだったのだけれど……。十年ほど前から見かけなくなってしまったの」

なるほど。だからエイムズ伯爵夫人はライムグリーンを見たくないのだろう。悲しそうな夫人の表を見て、深く考える前に私の口はいていた。

「あの。その霊さんがどこで何をしているのかお調べしましょうか」

「……どういうことかしら?」

「私、『先見の聖』の力があるもので。その力を使って未來を見れば、わかると思います」

「……セレスティア?」

トラヴィスまで驚いた気配が、した。

    人が読んでいる<【書籍化】ループ中の虐げられ令嬢だった私、今世は最強聖女なうえに溺愛モードみたいです(WEB版)>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください