《【書籍化】ループ中のげられ令嬢だった私、今世は最強聖なうえに溺モードみたいです(WEB版)》26.『先見の聖』とお茶會⑤
「もっと早く迎えに來いよ! 何年待たせんだよ!」
私の目の前にいるのはライムグリーンの綺麗な鳥だった。つぶらな瞳ととがった。くるんとカールした尾がかわいらしい。
けれど、めちゃくちゃ喋っている。
「あのガキ、どこいったんだよ! 見當たんねーじゃねーかよ!」
そして、めちゃくちゃ口が悪い。霊ってこんなのなの……。
お屋敷の屋裏にライムちゃんが隠れているのを見つけた私たちは、皆が待つ庭へと戻った。私は案された席について紅茶を口に運ぶ。けれど、張して手が震える。
「おまえカップをがっちゃんがっちゃん言わせてるな。慣れてないんだろう」
「……!」
ライムちゃんはといえば、なぜか私の前でめちゃくちゃに喋っていた。霊への憧れや畏怖の念がしゅんと萎んでいくので何とかしてほしい。
ちなみに、トラヴィスは隣でお腹を抱えてめちゃくちゃに笑っている。ライムちゃんの喋りがツボだったらしい。さっきまでの『何が何でも聖様を守る!』オーラは一どこへ行ったのだろうか。
話を戻そう。
エイムズ伯爵夫人は、この口の悪い霊との再會を涙をもって迎えていた。
「ライム。まさかずっと屋裏にいたなんて……気がつかなくて本當にごめんなさい」
「だから、コリーはどーしたんだよ。俺と10年前に喧嘩したあのガキ。俺のおやつをとりやがって」
「コリーは大きくなって家を出たのよ。3年前から國の騎士団での任についているわ」
エイムズ伯爵夫人の言葉に、ライムちゃんの毒舌はぴたりと収まった。
「はー、そっか。人間はすぐにいなくなるな」
「……」
なんだか、ライムちゃんが言っていることがわかる気がして私は寂しい気持ちになる。
ライムちゃんの暴言をまとめると、彼は10年前にこの家の子ども・コリーとおやつをめぐって喧嘩したらしい。それでいじけて屋裏へ逃げ込み、誰かが迎えに來るのを待っていたということだった。
迎えに來てもらえたのは今日、10年後。霊である彼にとっては、本當にちょっとお晝寢をしながら待っていたぐらいの覚だったのだと思う。けれど、出てきて見ると喧嘩の相手はもういなくなっていた。
霊がずっと生き続けることも、私がループをしていることも。意思とは関係ないだけに、どちらも置いてきぼりが強い。だからつい同志のような気持ちで見てしまう。
「辛気臭い顔のおまえ聖か。信じられないほど膨大な聖屬の魔力がだだれだぞ。何者だ?」
やっぱりこんなの同志じゃない。
意地っ張りで憎たらしい霊様からの暴言に耐えつつカップをカタカタ言わせていると、エイムズ伯爵夫人が私の目の前までいらっしゃった。
そして、深く跪いた。
「セレスティア様。これまでのことをお詫び申し上げます。許していただけるとは思っておりません。しかし、謝罪をお伝えすることだけはお許しいただけませんか」
「いえ、あの、そんな」
きっと、継母が社界に言いふらした悪評を止めきれなかったことを指しているのだろう。そして継母と異母妹への視線から推測するに、たぶん3割ぐらいはあの噂を信じていた気がする。
「聖様のお力でこの家に希を取り戻してくださったこと、謝してもしきれませんわ」
「あの……頭をあげて、どうかお立ちになってください!」
トラヴィスに助けを求める視線を送ってみたけれど、意外なことに彼はただ見守っているだけで。どうして、と困した私は、夫人の向こうに見えるクリスティーナと継母、そのほかの參加者たちの表に気がついた。
真っ赤になっているクリスティーナと継母、逆に蒼い顔をしている取り巻き。空気を読めていない雰囲気のマーティン様。そっか。わざとこの姿を見せているんだ。
エイムズ伯爵夫人はそのままの姿勢で続ける。
「セレスティア様に対する誤解については……早急に私が責任をもって解かせていただきます。ですから、次のお茶會にもぜひいらっしゃってください」
……お茶會はいいです。
「コイツ、お茶會に呼んでも絶対こないぜ」
あっています、ライムちゃん。
その後、私の周りには人だかりができた。謝罪を伝える人々と、手のひらを返したように褒めちぎる奧様方。
トラヴィスが間にってくれるのもまた魅力的だったらしい。彼は結局、一言も王族の名を語らないまま皆をぎゃふんと言わせてくれた。あ、この場合言わせたのは私なのかな。
まぁいいわ、と思いながら帰り支度をしていると、がしっと肩を摑まれた。
「セレスティア。どうして手紙に返事をくれないんだ」
「マ……マーティン様」
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