辺境の地であるサシェは自然がかな観地としても知られる町。

大神様からは「トラヴィスのが十分に回復するまでゆっくりしておいで」と言われていたけれど、王都にはレイが先に到著している。

レイに向かって『あなたを救う力がある』と豪語した私がのんびりしているわけには行かなかった。

ということで、私とトラヴィスは二人並んで王都へと向かう汽車に揺られていた。

「もうしゆっくりしたかったな」

「ご、ごめんなさい」

「ほら、敬語」

トラヴィスはそう言うと、軽く微笑んで隣から私の髪に手をばすふりをする。彼は昨日ベッドから起き上がったばかりとは思えないほど元気だった。やっぱり神ってが強いのかな。

そして、敬語止ルールってまだ続いていたのですね？

けれど、私の反応を楽しむようにトラヴィスが髪をってくることが全然嫌ではない（ふりだけれど）。そのことに危機をじつつ、私は言葉を崩した。

「まだが辛い？　回復しきらない中での長距離移を……本當にごめんなさい」

「違うよ。サシェの町にはいろいろな観スポットがあるよね？　セレスティアと一緒に見られたらよかったなと思って」

「そっちの意味！」

私が4回目までのループで知っていた未來では、あの町はなくなってしまった。人は助かったけれど、しい自然も観スポットも、サシェの町にづいた人々の営みの歴史も、全部が消えた。でも今回は違う。

「……町が救われたのだから、また來られる。そのときに楽しめばいいわ」

「また俺と一緒に來てくれるっていう意味だよね、それ」

違うそうじゃないこんなことを言われても全然うれしくないしときめいてない、え、ときめいてない？まぁとにかく死にたくない！

――と、前ならこう思っていた。

けれど、し素直になれる気がして私は下を向く。

「……ええ」

「驚いた。死にかけてみるものだね。まさか、わずかでもセレスティアがこちらを見てくれるなんて思わなかった」

「そ、そういう意味では！」

「サシェの町はトキア皇國との境にある。文化がしだけ混ざり合って、平時はとても魅力的な町なんだ。今度、必ず案したいな」

甘い口説き文句に続く、真剣な話題と視線にどきりとする。

一年前からトラヴィスはトキア皇國に戻っていない。そして、もう何かがない限り戻ることもないのだという。ずっと神殿にいて、大神様の右腕として働いていた。

「遠い場所だからなかなか來られないけれど……本當に、いつか連れてきて」

「セレスティアと出かけられるならどこだっていいんだけどね。今回の遠征任務も、し大変だったけど悪くなかったな」

『し大変』って。神として、の役割を超えて私を守ることをそんな當たり前みたいに言わないでほしい。

「こっち見ないの？」

「見ません」

「あ、敬語」

「あぁっ！」

敬語ルールを破ってしまい、隣のトラヴィスに反応を楽しまれているのが悔しい。

加えて、申し訳なさの端っこに喜びのが覗いてしまった私は王都に到著するまで彼の顔がまともに見られなかった。

そういえば。トラヴィスが私に好意を持ってくれるようになったきっかけって、神力による『能力鑑定』だったような。

――神が持つ神力にはし不思議な特があって、條件を満たした聖の魔力にひとたびれるとたまらなくしい気持ちになる。條件を満たす相手とは、神力のわりがなくてもいずれ慕う相手。

トラヴィスはこんな風に教えてくれた。

けれど、実のところ私はトラヴィスがほかの誰かの能力鑑定をしたところを見たことがない。彼が聖屬の魔力にれてこんな風に好きになる聖って、本當に私だけなのかな。

幸せそうにこちらを見下ろしてくるトラヴィスの視線をじてはいたけれど、私は張でまったく目にってこない車窓の景に逃げることにした。

この先ストレス展開ありませんので安心してお読みください…！