《【書籍化】ループ中のげられ令嬢だった私、今世は最強聖なうえに溺モードみたいです(WEB版)》【書籍発売記念SS】添い寢かブランケット
書籍発売日です。よろしくお願いします……!
神への適を持つ人はが丈夫だというけれど、それは聖を守るために能力が高かったり力が極端に強いだけの話。
普通に皆病気になるし、風邪も引く。そう、こんなふうに。
「あ〜寒いわ〜〜……寒いのにおでこが熱いし頭はぐらぐらするし、アタシ死ぬわこれ」
「バージル。さっきも言いましたが、多分死にませんからお薬をどうぞ」
「アンタこれまでに4回も死んだことあるからってほんと余裕ね!?」
熱を出して寢込み、すっかり弱気になっているバージルに私は薬を差し出した。けれど、プイッと顔を背けられて飲んでくれない。
この前、私は雨に濡れて風邪を引いた。その時は皆が代で看病してくれたのだけれど、私が良くなったら今度は皆が風邪を引いてしまった。なんと、今は4人の神全員が寢込んでいる。
ちなみに、回復魔法は長い目で見ると壽命をめることにも繋がるので、これぐらいでは使われない。
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申し訳なくて私は皆の部屋を看病して回っていた。最初はバージルにも優しくしていたのだけれど、ずっと死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ呟くばかりで全然薬を飲んでくれない。もうそろそろ怒ってもいいと思う。
風邪を引いて不安なのはわかるけれど、これじゃあ良くならないのに……!
私の心配をよそに、バージルのマイナス思考はどんどんエスカレートしていく。
「もういいの。わかってるわ。アンタ、アリーナのことを頼んだわよ……お嫁に行く姿を……ひと目見たかった……」
『しなないってセレスティアいってる』
リルは私が持っていた薬を用に鼻先でつつくと、そのままバージルの口元に飛ばし、前足で口の中に突っ込んだ。すごい力技。えらくてかわいすぎる。
「ゴホッゴホッゴホッ。神獣……もっと優しくして……」
『わかった、やさしくする』
リルは頷くと、今度は前足でバージルの口を引っ張ってちょっと開ける。ガバッとではなく、ちょっと開けたのが優しいところなのだと思う。『いまがチャンス』とのお言葉に従い、私はそこにお水を流し込む。
結局、バージルは強制的に薬を飲まされることになったのだった。
「……苦いわね……」
「もしかして、バージルはお薬を飲みたくなくて死にそうなふりしてました……?」
「アンタ、罪は重いわよ。治ったら覚えてなさい」
お薬を無理やり口に詰め込んだのはリルなのだけれど、という弁解は置いておいて、私は立ち上がる。無事にバージルが薬を飲んでくれたので、次はトラヴィスの部屋に行かないといけない。
「そうだ、バージルは寒くはないですか?」
「……寒いわよ! さっきからアタシが寒くて熱くて死ぬって言ってるの聞いてなかったの!?」
「やっぱりそうですか。シンディーのお部屋には湯たんぽ、エイドリアンのお部屋には布を置いてきたのですが……」
生憎だけれどもう暖まるためのアイテムがない。どうしようかな、と首を傾げた私にリルがしっぽを振った。
『ぼくがバージルのおふとんにはいってあっためてあげる』
「リル、本當に?」
『うん。フェンリルかぜひかない』
そういうと、リルはするりと私の腕を抜けてバージルのベッドにもぐりこんだ。バージルも「あら。あったかいわね」とうれしそうにしている。
神獣・フェンリルの活躍にしてはあまりにもかわいすぎる気がするけれど……本人たちが満足そうだし、まぁ、いっか。
バージルの部屋を出た私は、今度はトラヴィスの部屋の扉をそっと開けた。しだけ息苦しそうな寢息が聞こえて、早速薬がった瓶と水さしを取り出す。
トラヴィスに與えられている部屋は一般的な神のものとは違う。バージルの部屋と比べると二倍ぐらいあるし、調度品も豪華でベッドも大きい。神殿にある神のお部屋というよりは、本當に王族の部屋っぽいじがする。
私は、今回トラヴィスが風邪を引くまでこの部屋にったことはなかった。そんな場合ではないのに、「普段、私と離れた後はこんなところで過ごしているんだ……」とキョロキョロしてしまう。
「……何か珍しいものがあるか?」
「!」
掠れた聲に振り返ると、ベッドの上でトラヴィスがを起こしていた。私は薬の瓶を掲げる。
「お薬、持ってきたの。飲めるかしら」
「……ありがとう」
さっきまでバージルと格闘していたので、トラヴィスの素直さにびっくりする。いつもより赤い顔ととろんとした瞳のトラヴィスは、なんというか目のやりどころに困る気がする……。そう、まるで能力鑑定の時みたいに。
大人しく自力で薬を飲み終えたトラヴィスはぽつりと呟いた。
「……寒いな」
「皆も寒いと言っていて……暖まれるものがもうないのよね。そうだわ! 私の部屋からブランケットを持ってくるから、し待っていて」
「……普段、セレスティアが使っているブランケット?」
「そうよ」
「待て」
立ち上がると、トラヴィスにがしりと手首を摑まれた。力が強い。いくら神とはいえ、病人の力じゃなかった。何をそんなに焦っているのかがわからなくて、首を傾げてしまう。
「すぐに戻るわ。ブランケットを持ってくるだけだもの」
「それは遠慮しておく。何よりセレスティアが寢る時に寒くなるし」
「大丈夫。私のせいで風邪を引いたんだもの、それぐらいは」
引き下がらずにいると、トラヴィスは困ったように目を泳がせている。
「……皆、寒がっているんだよな。後は何を貸したんだ?」
「シンディーには湯たんぽ、エイドリアンには神殿の予備の布、バージルにはリル」
「リル?」
「リルが添い寢をして溫めてあげるって言っていたわ」
「「……」」
微妙な空気とともに、當然新たな案が思い浮かんだ。
「ええと……私が添い寢をして溫めてあげる……?」
「思い浮かんだものの言わなかった俺の努力を無駄にしないでくれるか」
「ごめんなさい反省しています」
私が頭を下げると、トラヴィスは満足そうに微笑んで目を閉じた。けれど、肩のところに震えが見えて、やっぱり寒そうで。
ということで、私は彼が眠るのを確認してから自分のブランケットを持ってきてそうっとトラヴィスにかけた。よかった。これでもう寒くないはず。
ほっとしたら急に眠くなる。そういえば、皆の看病をしていてあまりまともに寢ていなかったような……。
トラヴィスの大きなベッドに腰を下ろしていた私は、そのまま眠気と重力に負けてしまったのだった。
何だか眩しい。あれ、朝……?
「ブランケットとセレスティア、両方か……」
気がつくと部屋はすっかり明るくなっていた。目をりながらを起こした私を待っていたのは、トラヴィスのげんなりとした呟きだった。
彼の表と自分の狀況を把握した私は、やっと自分の失態に気づく。
「もしかして、私はここで寢てしまったの!?」
「ああ。気持ちよさそうに寢てた。しっかり添い寢してくれてありがとう」
「よく眠れた?」
「まぁ、彗星を防ぐ前日の夜ぐらいには」
全然眠れていなかった。何となく刺々しいトラヴィスの言葉に納得してしまう。
「でも、薬のおかげで熱は下がったな。も隨分楽になった」
「それは……本當に」
「ただ、睡眠が足りないな。もう一度添い寢してくれてもいいが」
「……!」
低くて甘く響く聲に、一瞬で頬が熱を持つ。
私を揶揄うようにベッドをぽんぽんと叩いているトラヴィスは、本當にいつも通りになっていて。調が戻って本當に良かったとは思うけれど、私は聲を張り上げることになった。
「そ、それは無理!」
【お知らせ】
本日(6/1)書籍の発売日です!
甘さを足しつつ読みやすく改稿した書籍版をぜひよろしくお願いします……!
特典はアニメイト様と電子特典の二種類。
トラヴィスの切なさを想像して悶えたい人はアニメイト様、ひたすら甘い二人を楽しみたい人は電子特典がいいんじゃないかなと思います。
また、コミカライズも決定しました!どんなお話になるのか私自とても楽しみです……!
ありがたいことに、ビーンズ文庫様で本を出していただけるのは「やり直せる」「100年後」に続いて三冊目になりました。目指せ続刊……!ということで、ぜひお手に取っていただけるとうれしいです。
(↓の書影から公式サイトに飛べます)
12ハロンの閑話道【書籍化】
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