《【書籍化&コミカライズ化】婚約破棄された飯炊き令嬢の私は冷酷公爵と専屬契約しました~ですが胃袋を摑んだ結果、冷たかった公爵様がどんどん優しくなっています~》第14話:公爵様に毎日朝ごはんをお作りすることになりました

「ど、どうですか、ルーク様?」

「うむ……味い……」

味いと言われ、私はホッとする。

久しぶり(もしかして、初めて?)に食べた朝ごはんが、まずかったらどうしようと思っていたのだ。

「良かったです、ルーク様」

「初めて食べるような味わいだ。表面はサクサクで、中はふんわりしている」

「フライパンで蒸し焼きにしたので、上手く焼けたのだと思います」

ルーク様がフレンチトーストをナイフで切るたびに、サクッと音がする。

心地良いなぁ。

ルフェリンさんにも言ったけど、料理は五で楽しむものだ。

私は見た目や、食べる時の音にもこだわりたい。

「食べていて思ったが、朝はパンなどの軽い食事の方が良い」

「手軽に食べられるように、フレンチトーストにしてみました」

「朝からや魚など、食べる気にはならないからな。フレンチトーストは、なかなか良いチョイスだ」

そう言うと、ルーク様はパクパクと食べていく。

相変わらず、ナイフやフォークの手さばきがとてもしい。

「ルーク様はとてもキレイにお食事なさいますね」

「そうか? 気にしたことはないが」

私もキレイに食べられるようにしなくちゃ。

お屋敷の本とか読んで、マナーをもっと勉強しよう。

「ところで、このレモンはあまり酸っぱくないな。食べやすい。どういう味つけをしたんだ?」

ルーク様はいつも、ある程度食べてから質問してくる。

「はちみつに漬けて、酸味を抑えました。そのままだと、さすがに酸っぱすぎますから。そしてそのレモンは、ルフェリンさんが採ってきてくれたです」

「なるほど、はちみつと合わせたのか……ただの砂糖漬けより、ずっといいな」

「気にっていただけて良かったです」

味いとは言ってくれたけど、ルーク様は無表で食べている。

いつか笑顔を見せてくれるのだろうか。

いや、自然に笑ってしまうようなお料理を作るんだ。

私は靜かに決心する。

「どうした、メルフィー?」

「い、いえ、何でもありません!」

ぼんやり眺めすぎたみたいだ。

私は慌ててフレンチトーストを食べる。

くぅぅ、おいしい。

自分で言うのもなんだけど、今回もおいしくできた。

レモンのほどよい酸味が、口の中をリフレッシュさせる。

フレンチトーストは表面はサクサクで、中はふんわりしていた。

これも思った通りだ。

「そして、これはナッツか? カリカリして味いな」

「アーモンドやクルミを、細かく砕いてサラダに混ぜてあります。ナッツは栄養価が高いので、おなどの代わりになるんです」

「ほぅ、そんなに良いのか」

私も林檎とナッツのサラダを食べる。

薄くスライスした林檎が、シャクシャクしておいしかった。

はちみつレモンとは、また違った甘さがある。

「林檎と一緒に食べるレタスも、また味いな」

「野菜だけだと飽きてしまうかと思いまして、林檎と合わせました」

やっぱり、果と野菜の相はバッチリね。

また今度、違う組み合わせで試してみよう。

「ふぅ、味かった」

「ごちそうさまでした」

ルーク様はいつものように、全部召し上がってくれた。

空っぽになったお皿を見ると、私はとても嬉しくなる。

「これなら、一日元気に過ごせそうだ。エネルギーが満たされたようなじがする」

「朝から果や野菜を、お食べになったからだと思います」

ルーク様は、かなり満足そうな顔をしている。

あとでルフェリンさんにもお禮を言わないとね。

森から採って來てくれたレモンがあったから、この料理はできたんだ。

「さて、そろそろ仕事に行くか」

「お見送りします、ルーク様」

私たちは門まで歩いていく。

すると門の手前で、ルーク様は立ち止まった。

とても真剣な顔をしている。

どうしたんだろう?

「メルフィー……」

「はい、何でしょうか?」

「これからも、毎日朝ごはんを作ってくれ。まぁ、君の負擔がない範囲でだが」

それを聞いたとき、私は喜びがこみ上げてきた。

もちろん、答えは決まっている。

「はい! 毎日、お作りします!」

「では、行ってくる」

「行ってらっしゃいませ、ルーク様!」

そして、ルーク様は門から出ていった。

頑張って作って、本當に良かった。

あとで、殘ったレモンの使い道も考えないとね。

お屋敷に戻ろうとすると、ルフェリンさんと出會った。

『殘りはあるかぁ、メルフィー?』

食事が終わったあと、ルフェリンさんはいつもコッソリやってくる。

余ったご飯を貰いに來るのだ。

「ルフェリンさんの分も、ちゃんと作ってありますよ」

私が渡すと、ルフェリンさんは嬉しそうに食べ始めた。

「レモンを探してきてくれて、本當にありがとうございました。あのレモンのおかげで、おいしい朝ごはんができました」

私はルフェリンさんに、丁寧にお禮を言った。

『いや、俺はお禮を言われるようなことは、何もしていないよ。朝ごはんだって、作ったのはメルフィーだ』

「まぁ、それはそうですが」

『それにしても、ルークのヤツが毎日朝ごはんを食べるなんてなぁ。やっぱりメルフィーが來てから、あいつは確実に変わりつつあるぞ』

「私はルーク様が健康でいてくだされば、それでいいです」

ルーク様は、私の恩人だ。

いつまでも元気でいてほしい。

『メルフィー、いつまでもこの屋敷にいてくれよな』

「ええ、私もずっとここにいたいです」

『きっと、ルークもそう思っているさ』

「そうでしょうか」

『そうに決まっている。なんだかんだ、あいつもメルフィーを大事に思っているさ』

え、ルーク様が?

と思って門の方を見ると、ルーク様の後ろ姿が見えた。

これからも頑張らなくちゃ。

私は新たに、気持ちをれ直した。

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