《【書籍化&コミカライズ化】婚約破棄された飯炊き令嬢の私は冷酷公爵と専屬契約しました~ですが胃袋を摑んだ結果、冷たかった公爵様がどんどん優しくなっています~》第35話:あ、あたくしが治すの……(Side:アバリチア③)

「ねえ、アバリチア。姫様はどんなお方なんだろうね。國一番の人って話だよ。早くお會いしたいなぁ」

「シャロー様ったら、そのお話ばっかりね。オホホホホ」

あたくしたちは、王宮の中にある広場に來ていた。

今日ここで、シャロー様が魔法をお披目するのだ。

そして、あたくしはオホホと笑っていたが、心怒っていた。

婚約者の前で、そんなことを言う男がいてどうするのよ!

「今日のために、僕はずっと練習してきたんだよ。それこそ、朝早くから夜遅くまでね。こんなに努力したことは、今までないだろうよ」

「シャロー様ったら、ちょっとデレデレしすぎですわよ。オホホホホ」

さっきからシャロー様は、ずっと鼻の下をばしている。

下品な下心が見え見えだ。

これは後でお仕置きが必要ね。

そして広場には、王族も集まっていた。

あたくしはさりげなく、だけど素早く周りを見る。

若くてカッコいい男はいないかしら?

できれば、位の高い方がいいのだけど。

すると、一人だけ男子がいた。

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よし、さっそくアピールを……。

「どうしたんだい、アバリチア?」

「い、いえ! 何でもありませんわ!」

あたくしは他の人にバレないよう、男子にサッとウインクを送る。

彼は一瞬ギョッとしていたけど、ぎこちなく笑い返してくれた。

あたくしは、確かな手ごたえをじる。

シャロー様の魔法が終わったら、あのお方をお茶にでもいましょう。

「ナデシコ様がいらっしゃいました!」

そのとき、大きな聲が響いた。

ナデシコ様がお著きになったらしい。

衛兵たちが、ビシッと姿勢を整えた。

あたくしたちも、背筋をばしてナデシコ様を待つ。

「き、張してきたね、アバリチア」

「い、いつも通りやれば大丈夫ですわ、シャロー様。頑張ってくださいね」

シャロー様には、絶対に失敗してほしくない。

あたくしの評判まで悪くなったら、計畫が臺無しだもの。

この日のために、あたくしは最高級のドレスを用意してきた。

ちょっと値が張ったけど、王族と知り合いになれると思えば安いもんだわ。

やがて、広場の奧から侍に付き添われたが出てきた。

いや、ちょっと……想像以上にキレイなんですけど。

「今日はようこそ來てくれましたね、シャローさん、アバリチアさん。私がナデシコです、どうぞよろしくお願いしますわね」

「シャロー・フリックルでございます。お招きいただき、激でございます」

ナデシコ様はこの國のお姫様なだけあって、ものすごい人だった。

がかった腰まであるほどの長い髪、とても珍しい真っ赤な瞳、小鳥がさえずるようなかわいい聲。

こ、これは反則よ。

のあたくしでさえ、見とれるほどだ。

ということは……。

「ナデシコ様……おウワサ通りの大変おしい方ですね……」

シャロー様は、ナデシコ様をジッと見つめている。

あたくしを見る時より、熱い視線を送っていた。

と思ったら、ちゃっかり手にキスまでしている。

まったく、この人はホントに好きね!

「ほら、アバリチアもご挨拶して」

おまけに、あたくしのことを偉そうに呼んできた。

この人は、こういう時だけ調子が良いんだから!

「……アバリチア・クックでございます。よろしくお願い申し上げます」

「よろしくね、アバリチアさん」

イラつきを抑えて、かろうじて挨拶する。

周りを見ると、いつの間にかあの男子はいなくなっていた。

殘っている王族は、冴えないオジサンばっかり。

予想と違って、あたくしは靜かにため息をつく。

來るんじゃなかったわね。

なんだか、すごくイライラしてきた。

こんなんじゃ、おにできものができてしまうじゃないの。

「では、さっそくシャローさんの魔法を見せていただけますか? 私、ずっと楽しみにしてましたの」

「ええ、もちろんいくらでもお見せいたします。おみとあれば、夜が更けるまでずっと……」

「ウウン! シャロー様!」

「というのは、もちろん冗談ですよ。ハハハハハ」

何が、ハハハハハよ。

いい加減にしなさい。

「では、さっそくいきますよ! <キャット>! <ドッグ>!」

シャロー様が杖を振ると、いつものように犬とかネコが現れた。

「きゃあ、かわいい!」

ナデシコ様は笑い方もお上品だ。

口に手を當てて、コロコロと笑っている。

私は今後のために、さりげなく分析する。

そうか、ああすれば男たちの心を摑めるのか。

犬とか貓はぴょんぴょん跳ねて、ナデシコ様を楽しませる。

「どうですか、ナデシコ様。お楽しみいただいてますか?」

「ええ、見ているだけで本當に楽しいですわ!」

「それなら、良かったです。この調子でどんどんいきますよ!」

シャロー様は、あたくしといる時より楽しそうだ。

ムカムカするわ!

「あ、あれ? 変だな」

しかし、徐々に魔力の様子がおかしくなってきた。

形がグニャグニャして、気持ち悪い。

「シャローさん、たちが変ですわよ」

「しょ、々お待ちください、ナデシコ様。こ、こんなはずじゃ……」

周りの人たちも、コソコソ話している。

「なんかおかしいな。魔法が得意って話じゃなかったのか?」

「あれじゃ大道蕓以下だぞ」

「姫様の前で、あんな下品な魔法は見せられないな。早く下げさせろ」

ちょ、ちょっと、シャロー様、しっかりしてくださいな。

このままじゃ、あたくしの評判も悪くなるじゃありませんか。

「こ、このぉ! しっかりけ! それ、<ビッグ・ベア!>!」

シャロー様が、杖に思いっきり魔力を込めた。

すると、ひと際大きなクマが現れた。

もがっしりしていて強そうだが、不気味にたたずんでいる。

「わぁっ、今度は大きなクマ。さすがは、シャロー様さんですわ」

「はぁはぁ……どうですか、ナデシコ様。ちょっとられてみては?」

「おとなしそうなクマですわね」

ナデシコ様は、そーっと手をばしていく。

「きゃあっ! 痛い!」

「「姫様!?」」

いきなり、シャロー様の魔力グマが、ナデシコ様に襲い掛かった。

白くてキレイな腕を、ズバッとひっかく。

そして、一瞬のうちに消えてしまった。

ナデシコ様の腕から、ダラダラが出ている。

「「た、大変だ! すぐに醫師を呼べ!」」

今や、お庭は大混だ。

衛兵たちが大騒ぎしている。

シャロー様はというと、みっともなくオロオロしているだけだった。

こ、これは……結構大変な事態なんじゃないの?

あたくしはイヤな汗が出てきた。

すると、シャロー様が大聲でんだ。

「ご、ご安心ください! こちらには聖のアバリチアがいます! こんなケガ、すぐに治してご覧にいれます!」

シャロー様は期待いっぱいの目で、あたくしを見ている。

広場にいる人たちも、いっせいに私を見た。

え? どういうこと?

「そうだった! 我々には聖のアバリチア嬢がいた! さっそく、治療をお願いします!」

「醫師を呼びに行くより、早くて確実だ!」

「お呼びしておいて良かったですぞ! 今こそ、“聖の力”をお見せください!」

あたくしは王族や衛兵たちに、あっという間に囲まれた。

ちょ、ちょっと、勘弁してくださいな。

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