《【1章完】脇役の公爵令嬢は回帰し、本の悪となり嗤い歩む【書籍化&コミカライズ】》第15話 イヴァンから見た妹
イヴァンが帰ってきてから、最初の訓練が終わった。
「今日はこれで終わりだ。アサリア、ラウロ、ご苦労だった」
「はぁ、はぁ……は、はい、お兄様……」
「ふぅ……ありがとうございました」
激しく息切れをしている方がアサリア、軽く息を吐いて落ち著いているのがラウロだ。
最初に二人の実力を見たイヴァンだが、想像以上に二人ともすでに仕上がっていた。
十くらいの魔獣の群れだったら、どちらも一人で対処出來るくらいだろう。
ただやはり足りないものもある。
「アサリアは力が圧倒的に足りない。魔力量も多く作も高いが、疲労で崩れることが多い。しっかり力をつけていくんだ」
もともとアサリアは全く運をしていなかったから、力がないのは仕方ない。
だが魔獣の前で疲れて魔法の作をミスしたら、それこそ命に関わる。
魔法使いだから騎士とかよりも力はつけないでいいが、多は必要だ。
「魔法とかは引き継いだみたいだけど、さすがに力までは……二年前に戻っているんだし、魔法だけでも引き継いでいるだけで嬉しいんだけど……」
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「何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません……」
アサリアがブツブツと何か呟いていたが、特に気にしなかったイヴァン。
(しかし、まさかアサリアがここまで魔法が出來るとはな)
本來なら一日目だったら、もっと魔法の基礎を教えることになると思っていた。
だがすでにアサリアは基礎は完璧で、応用もほとんど出來ている。
力がなさすぎるのは問題だが、それさえクリアすればあとは実戦で鍛えるだけだろう。
(それに噂で聞いていた話とはずいぶん違うな)
兄と妹という関係だったが、アサリアとは今までほとんど絡みがなかった。
小さな頃から住む場所も分けられ、會ったことはほとんどない。
ただ、まだアサリアが心もついていないような頃。
その頃にイヴァンは、數日間ほどアサリアと一緒に遊んだり、食事をしたことがある。
アサリアは覚えていないだろうが……。
(あの時は、こんな可い生きがいるのかとした覚えがあるな)
屈託なく笑うアサリアがとても可かった。
この天使のような子が自分の妹だというのが信じられなかった。
長しても、天使は可らしさを保ったままだった。
しかしアサリアの悪い噂を度々聞くようになった。
容姿は天使のようだが、中は小悪魔のようになったと聞いていた。
だが今日、久しぶりにアサリアと會って接してみたが、噂で聞いた話とはだいぶ違うじだった。
自分と接する時はとても禮儀正しく、癇癪持ちと聞いていたがそんな雰囲気は全くない。
訓練もとても真面目に取り組んでいたし、どこが小悪魔になったのか。
容姿も中も天使のままじゃないか、とイヴァンは心の中で思っていた。
「ふぅ……」
ようやく呼吸が落ち著いたのか、アサリアがタオルで軽く汗を拭いていた。
そんな姿も様になっていて、絵畫にして部屋に飾っておきたいくらいだった。
「今日はありがとうございました、イヴァンお兄様」
「ああ、アサリアも初めてにしてはよく頑張ったな」
「はい、これからも頑張ります!」
ニコッと笑ったアサリア、イヴァンも一つ頷いた。
(うむ、俺の妹はやはり天使だな)
顔に出ないが――イヴァンは妹が大好きなシスコンであった。
これに気づいているのは母親くらいだろう。
「ラウロ、お前も今日の訓練は終わりだが、まだ騎士としての仕事は殘っているだろう」
「はい、俺もあまりわかっていませんが、見回りなどがあるようです」
「ああ、訓練で疲労しているだろうが、それも騎士の仕事だ。気張れよ」
「はい、ありがとうございます」
ラウロは汗を軽く服で拭いているだけで、そこまで疲れた様子はない。
これなら仕事に支障が出るということはないだろう。
「お前に足りないのは圧倒的な経験だ。実力はもうすでにそこらの騎士よりも強いだろうが、戦ったら負けるかもしれん。それが経験の差だ」
「はい、わかりました」
もうすでにイヴァンの目から見ても、練の騎士よりも強いとじるほどだ。
(本當に化けだな。今日初めて剣を握ったというが、今でも信じられん)
経験が足りないと言ったが、おそらくラウロなら常人が十回以上経験しないとに付かないものを、一回経験すれば完璧にに付けるだろう。
それだけの天賦の才能を持っているとじた。
(確かアサリアがこいつを見つけたと言っていたが、どうやって見つけたのか。まあ天使だから見つけるのは容易いのかもしれないな)
大真面目にそんなことを考えているイヴァンだが、表には全く出ていなかった。
その後、イヴァンとアサリアは本邸に戻り、夕食を父親のリエロと共に食べる。
とても久しぶりの三人での食事、ほとんどが父のリエロとアサリアが話をしていて、イヴァンは話が振られたら答えるくらい。
「イヴァン、南の砦の様子はどうだ? 特に異常はないか?」
「はい、父上。魔獣の數も強さも特に変わってはおらず、異常がなければ俺がいなくても問題ないかと思います。母上も砦にいらっしゃいますので」
「ふむ、そうだな。ああ、久しぶりにメリッサに會いたいな……私の方から砦に行くか、本邸に戻ってきてもらうか、どうしようか……」
リエロがしため息をついて、しい人を想って切なげに言った。
メリッサ・シュタ・スペンサー、リエロの妻、つまり公爵夫人である。
伯爵家から嫁いできたメリッサだが、リエロとメリッサは貴族では珍しい結婚だ。
特にリエロは公爵家の跡継ぎで結婚をしたのは、非常に珍しかった。
メリッサが伯爵家という中級貴族だったというのもあるが、メリッサが優秀だったというのもあるだろう。
魔法もしっかり使えるのと、軍をかして魔獣と戦うのがとても上手い。
魔獣のきを先読みし、騎士や魔法使いの力の消耗を最低限に抑えながら、砦を守り続けることが出來る。
それが出來たから、メリッサは公爵夫人として認められた。
「さすがに公爵家が全員砦からいなくなるのは難しいと思うので、お父様の方から砦に向かってはいかがでしょうか?」
「おお、それがいいかもしれないな」
アサリアの言葉に、リエロが強く頷いた。
リエロが砦に行くとなると、おそらく本邸での仕事はイヴァンが引き継いでやることになるだろう。
(父上は母上と一緒にいて、俺は天使と一緒にいることが出來る……)
「父上、ぜひそうなさってください。母上も父上と會いたがっていました」
「おお、そうか、メリッサが……ふふっ、そうだな、私も本邸で仕事ばかりじゃも魔法も鈍る一方だ。久しぶりに魔獣のを嗅ぎに行こうか」
「お父様とお母様なら全く問題ないかと思いますが、お気を付けて」
(よし、上手くいったな)
意外と策士のイヴァンであった。
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