《【1章完】脇役の公爵令嬢は回帰し、本の悪となり嗤い歩む【書籍化&コミカライズ】》第19話 一瞬の決闘

「それはもちろん、決闘で」

私がニヤッと笑うと、エイラ嬢が引き攣った笑みをする。

私の笑みは悪っぽいから、し怖がらせてしまったかしら? まあ今さらね。

「け、決闘ですか?」

「ええ、エイラ嬢はそこまで言うのですから、あなたも専屬騎士がいるのでは?」

「はい、私は三人ほど専屬騎士として雇っております」

「まあ、素晴らしいわね。ではその三人の専屬騎士と、私の専屬騎士、戦えばすぐに決著がつきますよ」

私の提案に、エイラ嬢は呆れるように苦笑いをする。

「私の専屬騎士は全員貴族で小さな頃から英才教育で育てられ、十數年の経験を積んできた練の騎士ですよ? 本當にいいのですか?」

「ええ、もちろん」

「っ……」

私の余裕綽々な態度に、エイラ嬢はしたじろいだ。

エイラ嬢はチラッと隣にいるオリーネを見た。

その視線は「本當に大丈夫なの?」と確認しているかのようだ。

オリーネは「大丈夫です」と言うように頷いた。

「……わかりました。私の専屬騎士は馬車の方で待っているので、一人呼んできます」

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「一人? いいえ、三人全員呼んできなさい」

「えっ?」

「私の専屬騎士とあなたの専屬騎士、どちらが優れているかの戦いでしょう? そちらが三人いるなら、三人で戦わないと意味ないじゃない」

「っ……本気ですか?」

「もちろん、早く呼んできなさい」

私がそう言うと、エイラ嬢は引き攣った笑みを浮かべる。

それは私の自信満々な態度に怖気付いた笑みなのか、自分の専屬騎士が舐められているからイラついた笑みなのか。

どちらにしても、やることは変わらない。

エイラ嬢はもう一度、オリーネの方をチラッと見た。

オリーネもし気後れしているようだが、それでも頷いていた。

「わ、わかりました。ではすぐに呼んできますので、々お待ちを」

エイラ嬢が取り巻きの令嬢達に目配せすると、その令嬢達が呼びに行ったようだ。

私はエイラ嬢達に背を向けて、座っていたテーブルに戻る。

「ダリヤ嬢、お騒がせして申し訳ありません。このお詫びはいずれ必ず」

「いえ、エイラ様が仕掛けてきたことです、アサリア様が謝る必要はありません」

「そう言ってくださると助かるわ」

「中庭を抜けたところに開けた場所があるので、決闘ならそこで出來ると思います」

「ありがとう」

そういえば場所を考えてなかった、お茶會で準備された中庭でやるわけにはいかないものね。

「しかしアサリア様、その、本當に大丈夫でしょうか? エイラ嬢は専屬騎士が三人いるということですが……」

周りにいる令嬢達も、私を心配そうに見つめていた。

さすがに私の取り巻きの方でも、私の専屬騎士が負けると思っている方が多そうね。

私が騎士になって一週間しか経ってない平民を専屬騎士にしている、という話を否定しないのだから、仕方ないわね。

普通だったら私の騎士の方が負けると思ってしまう。

「大丈夫よ、私のラウロは最強だから」

ダリヤ達を安心させるように、私は笑みを浮かべてそう言い切った。

そしてラウロを見る、彼の表はいつも通り何も変わらなかった。

「ラウロ、話はわかってるわよね?」

「はい、もちろんです。俺のせいで面倒なことになってしまい、申し訳ありません」

「いいえ、全く問題ないわ。むしろ楽しい行事が増えたみたいで楽しいわよ」

「それならよかったです」

ラウロは何も気負っている様子もない。

彼にとっては練騎士三人と戦うことなど、張など何もしないのだろう。

というかラウロが張している様子を見たことがないけど……。

「ラウロ、あなたの力を見せつけなさい」

「はい、かしこまりました」

ラウロはそう言って、綺麗なお辭儀をした。

そして數分後、ダリヤ嬢に案してもらった場所で、ラウロと三人の騎士が対峙していた。

周りには私やエイラ嬢以外に、今回のお茶會に參加している令嬢のほとんどが見に來ていた。

三人の騎士はラウロと違い、し年齢がいっていて三十歳くらい。

能力もまだ落ちていない、騎士としての経験が富な年頃だろう。

……そういえば、ラウロって何歳なのかしら?

同い年か、それかお兄様と同じくらい?

見た目的に、私とそこまで年齢が離れていることはないだろう。

お茶會が終わったら聞いてみようかしら。

「アサリア様、本當に宜しいのですか?」

エイラ嬢がしニヤついた顔でそう聞いてきた。

橫にいるオリーネもどこかニヤついている顔をしている。

さっきからオリーネは私の前で喋ってないのに、いちいち目にってきてイラつくわね。

「もちろん、さっさと始めて終わらせましょう」

「……ええ、そうですね」

開始の合図をやってくれるのはダリヤ嬢、本當に迷をかけてしまっているわ、あとで絶対にお禮をしないと。

「では、始めてください」

その言葉と共に、まずいたのはエイラ嬢の三人の騎士。

ラウロの周りを囲むように移して、木剣を構える。

対してラウロはかず、ただ目の前にいる一人の騎士を睨んでいるだけ。

そして周りを囲んだ騎士達が、同時にラウロに攻撃を仕掛けた。

瞬間――ほとんど勝負が決まった。

「ぐはっ!?」

ラウロが相手が攻撃する直前に一歩だけ近づいて騎士のお腹に蹴りを放ち、前にいる騎士を吹き飛ばした。

橫と後ろから切りかかってくる騎士。

後ろの騎士に向かって片手で持っている木剣を振るう、正確に顎に當てた一撃でその騎士は聲を発することもなく気絶して倒れた。

そして橫から切りかかってきた騎士の木剣を握っている両手を、片手で止めた。

「なっ!?」

両手で切りかかったのに片手で止められた騎士は驚きの聲を上げる。

だが次の瞬間には、ラウロが木剣の柄の部分を騎士のこめかみに打ち込み、その騎士は沈んでいった。

「……えっ?」

一瞬で終わった勝負、その慘狀を見て、エイラ嬢が小さく呟いたのが聞こえた。

周りもようやくその景を認識したのか、騒めき始めた。

本當に一瞬で三人の騎士を倒したので、ほとんどの令嬢には何が起こったのか見えなかっただろう。

視力を鍛えている私ですらギリギリ見えたくらいだ。

本當に速いし、強いわね。

「エイラ嬢、終わったようね」

「なっ、えっ……!?」

自分の騎士が倒された瞬間が見えなかったせいか、目の前に広がる景が全く信じられていない様子。

一人は數メートル吹き飛び、あとの二人はラウロの側で地面に転がっている。

「どうかしら? 私の騎士はとても強いでしょう?」

私が笑みを浮かべてそう言っても、まだ聲が屆いていないようで、目を見開いていた。

「そ、そんな、どうして……あの方は平民で、一週間しか経ってないんじゃ……!」

震えた聲でそんなことを呟いているエイラ嬢。

そして、キッと隣にいるオリーネを睨んだ。

オリーネも目の前の景が信じられなかったようで目を見開いていたが、エイラ嬢に睨まれてビクッとした。

「オリーネ嬢、どういうことですの?」

「わ、私も、訳がわからず……!」

「あなた、もしかして私に噓をついたのかしら?」

「い、いえ! 噓など決してついていません!」

「だったらあの騎士の方の強さは何なの!?」

あらあら、仲間割れかしら?

おそらく、調子がいい侯爵家のエイラ嬢に気にられたかったオリーネが、私の弱みだと思ってラウロの報を流したようね。

それでエイラ嬢が私に絡んできたようだけど、殘念。

ラウロは一週間で、そこらの騎士よりも強くなりすぎた。

オリーネもまさかそこまで強くなるとは思わなかったのだろう。

回帰する前は自分の聖騎士になったラウロに、まんまと嵌められたようなじだ……ふふっ、とても愉快ね。

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