《【書籍化決定】婚約者が浮気相手と駆け落ちしました。々とありましたが幸せなので、今さら戻りたいと言われても困ります。》27
「ただ私達は、真実のに目覚めただけなのに……」
最後にセイラはそう呟いていた。
多くの人達を味方にしたその言葉にも、今は誰も賛同しない。
「アメリア、大丈夫か?」
気遣ってくれる優しい聲に顔を上げると、サルジュが心配そうにアメリアを覗き込んでいる。
その顔を見た途端、涙が溢れてきた。
こんなに大勢の人の前で泣くなんて、と思うが、どうしても止めることができなかった。
サルジュがそっと涙を拭ってくれる。れているのは指先だけなのに、優しい溫もりが傷ついた心を救ってくれた。
「ありがとうございます、サルジュ様」
リースはもういない。
アメリアを苦しめた噂も、じきに収まっていくだろう。今日この日から、ようやく普通の學園生活が始まる。
もう今日は休んだ方がいいと言われ、素直に寮の部屋に戻った。
制服から私服に著替えると、そのままベッドの上に寢転ぶ。
はしたない行為だが誰もいないし、今日くらいは大目に見てほしい。
Advertisement
こうして自分の部屋で寛ぐのも、二日ぶりだ。
(々あったなぁ……)
リースから手紙がこなくなってから今までのことを、ゆっくりと思い出してみる。
つらい目にもたくさん合ったが、今思えば悪いことばかりではない。
あのことがなければサルジュと親しくなることもなかっただろうし、ユリウスとマリーエに出會うこともなかったかもしれない。
何よりあのままリースと結婚していたら、魔法を學び続けることはできなかっただろう。
(領地の運営に攜わるのも嫌いじゃなかったから、それよりに暮らしていたかもしれないけど)
だが、陥れるほどアメリアを憎んでいたリースと幸せになれるとは思えない。きっといつかは破綻していただろう。
十年來の婚約者だった彼とも、もう會うことはない。
そう思っても寂しくはなかった。
ただ今は優しく涙を拭ってくれたサルジュの指の溫度だけが、いつまでも殘っている気がする。
そっと自分の頬にれたところで、アメリアはふと思い出す。
(そういえば私、初対面でサルジュ様と踴ったわ。それに、足を怪我して抱きかかえていただいたことも……)
あのときはサルジュの分に恐していただけだった。
でもこうして思い返してみると途轍もなく恥ずかしく、それでも得難い経験だった。
これからもサルジュの研究を手伝うことはあるが、あんなふうにれ合うことは二度とないだろう。
ベッドに寢転んだまま、天井を見上げて溜息をつく。
それは今までのように悲しみに満ちたものではなく、しだけ切なさを含んだものだった。
アメリアはその日のうちに父に手紙を書き、起こったことをすべて報告した。
おそらくリースとの婚約は、このまま解消となる。
アメリアは父の指示に従うだけだが、たとえアメリアに瑕疵がなくとも、ここまでの騒ぎになってしまったのだ。新しい婚約者を見つけるのは難しいかもしれない。
そうなったときは、従弟に爵位を継いでもらうしかないだろう。
(……私にも油斷があった。リースが裏切るなんて、考えたこともなかったから)
昔からよく知っていて、リースとはもう家族のような気持ちだった。
それが、甘かったのだろう。
その甘さが、自分の將來を閉ざしてしまうかもしれない。
(終わってしまったことを、いつまでも悔やんでも仕方ないわね。これからどうするか、ちゃんと考えないと)
爵位を従弟が継ぐとしたら、アメリアは家を出て獨立しなければならない。結婚を諦め、自分ひとりで生きていくには、きちんとした仕事を探す必要がある。
(たしかユリウス様は、特Aクラスに進學すれば魔法研究員になれると言っていたわ)
それが一番理想的に思える。
ずっと運営に攜わってきたレニア領から離れるのは寂しいが、従弟は真面目で優しい人だ。安心して任せることができる。
それに、アメリアはこれからも魔法を學んでいきたい。そうすれば、助手としてサルジュを助けることもできる。
もし爵位を継いでもらうために夫を迎えたとしても、評判の悪い娘を妻にしてもらったことで、夫に負い目をじてしまうかもしれない。
そんなふうに生きるよりは、自分でしっかりと働いて、自由に生きた方がいい。
これからは將來のため、ますます本気で勉學に勵まなくては。
アメリアは、これからの目標をそう定めた。
リースのことも、もう忘れてしまおう。
どんな裁きをけるのかし気になるけれど、どんな結果になろうと、彼の自業自得だ。
そう決意したアメリアだったが、その翌日。
リースがセイラと駆け落ちしたという話を聞いて呆然とした。
(……駆け落ち? どうしてそんなことに?)
サルジュが言っていたように、リースには退學が言い渡されていた。
彼はその日のうちに學園寮を抜け出し、セイラとともに姿を消したのだ。
警備兵に連行されたものの、まだ正式な処分が下る前だったので、ふたりを見張っていた者はいなかったようだ。學園寮の警備兵も、まさかふたりがその日のうちに逃げ出すとは思わなかったのだろう。
リースの寮の部屋にはふたりの名前で置き手紙があり、どんな困難があったとしても、真実のを貫くと書かれていたようだ。
真実の。
それを聞いたときに、アメリアは思わず溜息をついた。
事実はどうあれ、悪い噂が広がってしまった直後にこんなことが起こった。アメリアが想い合うふたりを引き裂き、リースを退學に追いやったと言う者は必ず現れる。
ただ、この件にはサルジュが関わっていたので、以前のように大事にはならないかもしれない。
それでもリースはセイラと駆け落ちすることで、最後までアメリアを貶めた。サルジュによって追い詰められたリースは、己の所業を悔いるのではなく、最後までアメリアに攻撃することを選んだのだ。
最後くらい優しかったリースに戻ってしかったと思うが、最初からそんな人は、どこにも存在していなかったのかもしれない。
人の噂も、そう長くは続かない。
そんなものに煩わされるよりも、今は將來のために、ひたすら勉強に勵むしかない。
【書籍化・コミカライズ】誰にも愛されなかった醜穢令嬢が幸せになるまで〜嫁ぎ先は暴虐公爵と聞いていたのですが、実は優しく誠実なお方で気がつくと溺愛されていました〜【二章完】
『醜穢令嬢』『傍若無人の人でなし』『ハグル家の疫病神』『骨』──それらは、伯爵家の娘であるアメリアへの蔑稱だ。 その名の通り、アメリアの容姿は目を覆うものがあった。 骨まで見えそうなほど痩せ細った體軀に、不健康な肌色、ドレスは薄汚れている。 義母と腹違いの妹に虐げられ、食事もロクに與えられず、離れに隔離され続けたためだ。 陞爵を目指すハグル家にとって、侍女との不貞によって生まれたアメリアはお荷物でしかなかった。 誰からも愛されず必要とされず、あとは朽ち果てるだけの日々。 今日も一日一回の貧相な食事の足しになればと、庭園の雑草を採取していたある日、アメリアに婚約の話が舞い込む。 お相手は、社交會で『暴虐公爵』と悪名高いローガン公爵。 「この結婚に愛はない」と、當初はドライに接してくるローガンだったが……。 「なんだそのボロボロのドレスは。この金で新しいドレスを買え」「なぜ一食しか食べようとしない。しっかりと三食摂れ」 蓋を開けてみれば、ローガンはちょっぴり口は悪いものの根は優しく誠実な貴公子だった。 幸薄くも健気で前向きなアメリアを、ローガンは無自覚に溺愛していく。 そんな中ローガンは、絶望的な人生の中で培ったアメリアの”ある能力”にも気づき……。 「ハグル家はこんな逸材を押し込めていたのか……國家レベルの損失だ……」「あの……旦那様?」 一方アメリアがいなくなった実家では、ひたひたと崩壊の足音が近づいていて──。 これは、愛されなかった令嬢がちょっぴり言葉はきついけれど優しい公爵に不器用ながらも溺愛され、無自覚に持っていた能力を認められ、幸せになっていく話。 ※書籍化・コミカライズ決定致しました。皆様本當にありがとうございます。 ※ほっこり度&糖分度高めですが、ざまぁ要素もあります。 ※カクヨム、アルファポリス、ノベルアップにも掲載中。 6/3 第一章完結しました。 6/3-6/4日間総合1位 6/3- 6/12 週間総合1位 6/20-7/8 月間総合1位
8 88斷罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す(第三章完結)【書籍化、コミカライズ決定】
【書籍化、コミカライズ情報】 第一巻、2021/09/18発売 第二巻、2022/02/10発売 第三巻、2022/06/20発売 コミカライズは2022/08/01に第一巻発売決定! 異母妹を虐げたことで斷罪された公爵令嬢のクラウディア。 地位も婚約者も妹に奪われた挙げ句、修道院送りとなった道中で襲われ、娼館へ行き著く。 だが娼館で人生を學び、全ては妹によって仕組まれていたと気付き――。 本當の悪女は誰? きまぐれな神様の力で逆行したクラウディアは誓いを立てる。 娼館で學んだ手管を使い、今度は自分が完璧な悪女となって、妹にやり返すと。 けれど彼女は、悪女の本質に気付いていなかった。 悪女どころか周囲からは淑女の見本として尊敬され、唯一彼女の噓を見破った王太子殿下からは興味を持たれることに!? 完璧な悪女を目指した結果溺愛される、見た目はエロいけど根が優しいお嬢様のお話。 誤字脫字のご報告助かります。漢字のひらがな表記については、わざとだったりするので報告の必要はありません。 あらすじ部分の第一章完結しました! 第二章、第三章も完結! 検索は「完璧悪女」を、Twitterでの呟きは「#完璧悪女」をご活用ください。
8 181天才少年、異世界へ
自身のことを、ありふれた高校生だと思っている主人公木村弘一郎が、異世界で一人だけ加護を貰えなくて苦労する、と思いきや持ち前のハイスペックで自由に生活していく話です。 初めての作品なので、期待しないでください。
8 162能無し刻印使いの最強魔術〜とある魔術師は來世の世界を哀れみ生きる〜
とある魔術師は世界最強の力を持っていた。 男はその力を使って未來のとある時代を観測した。その時代に興味を惹かれた男はその世界を夢見て転生することに。 だが転生した先で彼の最強の刻印は馬鹿にされるものだった。転生した魔術師は、転生する時代を間違えた事と、理解不能な世界の常識の実態をだんだんと知っていくが當然そんな常識が過去から來た最強の魔術師に通用するわけもなく.......... 1章:ニルヴァーナの少女編、完結。 2章:神狼の守る物編、完結。 3章:転生魔王の探し人編、完結。 4章:墮の少女と思想の神嫁編、完結。 5章:魔術師の師編、現在執筆中。 6章:???、5章完結次第執筆開始。
8 97最強の高校生
最強の高校生「神城龍騎」は一見ただの高校生だが彼には秘めた力があった
8 159異世界でもプログラム
俺は、元プログラマ・・・違うな。社內の便利屋。火消し部隊を率いていた。 とあるシステムのデスマの最中に、SIer の不正が発覚。 火消しに奔走する日々。俺はどうやらシステムのカットオーバの日を見ることができなかったようだ。 転生先は、魔物も存在する、剣と魔法の世界。 魔法がをプログラムのように作り込むことができる。俺は、異世界でもプログラムを作ることができる! --- こんな生涯をプログラマとして過ごした男が転生した世界が、魔法を”プログラム”する世界。 彼は、プログラムの知識を利用して、魔法を編み上げていく。 注)第七話+幕間2話は、現実世界の話で転生前です。IT業界の事が書かれています。 実際にあった話ではありません。”絶対”に違います。知り合いのIT業界の人に聞いたりしないでください。 第八話からが、一般的な転生ものになっています。テンプレ通りです。 注)作者が楽しむ為に書いています。 誤字脫字が多いです。誤字脫字は、見つけ次第直していきますが、更新はまとめてになります。 【改】となっているのは、小説家になろうで投稿した物を修正してアップしていくためです。第一章の終わりまでは殆ど同じになります。
8 95