《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第6話 すきる……って、なに?

手に走った衝撃と、頭の中に浮かび上がる文字に、私はしばらくその場に固まっていた。

何? この見たことない文字。というか、何で私これが読めるのかしら……?

「エデリーン?」

怪訝な顔の陛下にハッとする。同時に、文字が頭の中から消えた。

「あっ、ご、ごめんなさい。今何か変なものが見えて……」

いながらアイを見ると、彼は窓の向こう、北の空をじっと見ていた。

もう一度そっと肩にれる。けれど今度は何も起こらなかった。……さっきのは、気のせいだったかしら?

そんな私に陛下が一歩ずいと近寄ってくる。

「変なもの、とは?」

「あ、いえ……なぜか“すきる”、とか言う単語が見えた気がして……」

そう言った瞬間、ユーリ陛下の目が見開かれた。それからガシッと私の肩が摑まれる。

「スキルが発したのか!?」

「え、えっと? 発って、何がです……?」

う私に、陛下が早口で説明する。

「歴代聖は、代々特殊な“スキル”という魔法が使えるらしいんだ。もし彼がスキルを使えるのなら、つまり本の聖だということ……!」

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その言葉に、私はさっき見たものを必死に思い出そうとした。

「……さっき見た文字は、確かに『聖アイ』と読めましたわ。それから、『スキル魔探知』とも」

「魔探知だと? まさか……!」

陛下の顔が険しくなる。それからアイがいまだに見つめている方向を確認すると、近衛騎士に向かって言った。

「騎士団に召集をかけよ!」

「はっ」

陛下が私の方を向く。

「しばらく留守にする。その間、聖を頼む」

私はこくりとうなずいた。

そのまま陛下が騎士たちと一緒にあわただしく部屋から出ていくのを見送ってから、そっとアイに寄り添う。

……聖だけの魔法が使えるということは、やっぱりアイは聖なのかしら。

小さな肩にのしかかる責任の重さを考えてぎゅっとが痛くなる。今までつらい思いをしてきた分、今はただただ幸せに包まれてほしいのに……。

その時、アイが私を見た。自分でも何が起こったのかよくわかっていないようで、困ったような表をしている。

その顔を見て私は決意した。

……ううん、聖だろうとそうじゃなかろうと関係ない。

こうなったら、私がこの子を守ればいいのよ!

私は鼻息荒く、拳を突き上げた。

數日後、アイと一緒に絵をかいていたところにやってきたのはユーリ陛下だ。アイが、サッと私の後ろに隠れる。

「エデリーン、聞いてくれ! この間教えてくれた『魔知』は、確かに機能していたんだ!」

そう言って、陛下は興したように語った。

いわく、アイの見つめた先に村があり、そこに騎士団を派遣したこと。數日間はとくに音沙汰がなく、杞憂か? と思い始めた矢先に魔が襲來してきたこと。騎士たちが萬全の制で迎え撃ったこともあって、わずかなけが人を除いて騎士も村もみんなが無事だったこと。

「まあ……! みなさんが無事で何よりですわ。アイはすごいことをしたのね」

そう言って、私はぎゅっとアイを抱きしめた。けれど彼はどこか困ったような顔で、首をふるふると振っている。

「……自分のおかげじゃないと言いたいのね?」

聞くと、アイはこくんとうなずいた。そこへユーリ陛下がを乗り出す。

「いや、これは君のおかげだ。魔の襲撃を知れたことで、どれくらいの人たちが命を救われたと思う? 君はまごうことなき聖なんだ……!」

そこまで言って、陛下はハッとした。アイが怯えた目をしているのに気づいたのだろう。

「すまない。怖がらせたかったわけじゃないんだ」

言って額を押さえる。私は笑った。自分で気づけるようになっただけ、大長よね。

まだ納得がいかなさそうなアイの頭を、優しくでる。

「アイは賢いのね。自分がしたことをちゃんと見ている。うちの妹だったら絶対『よくわかんないけど褒められた! エッヘン!』ってしているところよ」

妹の真似をしてを反らしてみれば、アイがくすくすと笑った。

そんな彼に、私は一瞬ためらってから――ずっと思っていたことを言うことにした。

「……それとね、聖の力はすばらしいことだけど、それがなくてもあなたはとっても素敵な子だと思っているわ」

アイがふたたび不思議そうな顔になる。

「まだししか一緒に過ごしてないけれど、その間に私、アイのいいところをたくさん見つけたのよ?」

にこにこしながら私はスウッと息を吸い込んだ。きらっと目がったかもしれない。

「まず、笑顔がとってもかわいいでしょ。それからおいしそうにごはんを食べるところでしょ。あとごはんを食べたあとすぐ眠くなっちゃうところでしょ。それにお風呂にるとふやぁーって溶けちゃうところでしょ。あと寢るときには口からよだれたらーんって垂らしちゃうところでしょ」

私の怒濤の早口攻撃に、アイがあわあわと手を振る。ふふっ恥ずかしがっている顔もかわいい。

アイの小さな丸いおでこに、私はこつんと自分のおでこをくっつけた。

「本當はね、特別な力なんてなくてもいいのよ、アイ。あなたは生きているだけでえらいの。……生まれてきてくれて、ありがとう」

だから褒めているわけじゃない。あなたがあなただから、褒めているのよ。

そんな私の気持ちが伝わったのだろう。アイが、きゅっと目をつぶった。泣きそうな、でもどこか嬉しそうな顔だった。

「それからユーリ陛下」

両手でアイのほっぺをもにもにと包み込みながら、私は陛下の方を向いた。

「彼は聖である前に、アイという名前がありますわ。陛下も『聖』ではなく、『アイ』と呼んでくださいまし」

陛下は一瞬目を丸くする。

「……わかった。今後は私もアイと呼ぼう。……そう呼んでもいいだろうか?」

二人でアイを見る。彼は上目遣いで私と陛下を見つめ……コクンとうなずいた。

「ふふ。これから私と一緒に、たくさん楽しいことしましょうね。ピクニックに、ボート遊びに、ケーキバイキングに……あ、陛下もご一緒しなきゃね?」

「エデリーン……。今一瞬、私のことを忘れていただろう」

ユーリ陛下が複雑な顔でつぶやけば、私は笑った。見るとアイも笑っていた。

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