《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第8話 アイは、うちの子です!

駆けつけた召喚の間では、今まで見たこともない異常な瘴気に覆われていた。

吸っただけでを悪くするような、どす黒い気にウッと鼻を覆う。先についた騎士たちが、苦しそうに顔をしかめている。

「アイ!? なぜここに!?」

陛下の聲。見れば、大きな黒い渦の前に立った陛下の服を、心配そうな顔のアイが摑んでいた。

「アイ! 危ないわ! こちらに來るのよ!」

私がアイの腕を摑み、連れ出そうとしたそのときだった。

キィィイイン、という奇妙な音とともに空間がぐにゃりと歪み、渦から青白い手が突き出される。

私は咄嗟にアイを隠すように抱きかかえた。魔が襲ってきても、彼だけは守らなければ!

「エデリーンとアイを守れ! 傷ひとつつけさせるな!」

剣を抜いた陛下の怒號が響く。すぐさま騎士たちが、私とアイの周りを囲んだ。そんな私たちの目の前に、渦の中からゆっくりと魔が――いや、人間が現れた。

「マ、マ……?」

の中のアイが、小さく呟いた。

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「え?」

私は渦から現れた人間を見る。

現れたのは、男の二人組だった。どちらも私より年上に見える。彼らはアイと同じ風変わりな服を著て、けれど目は走り、すさんだ空気を醸し出していた。

驚いていると、二人がアイに気づいたらしい。

、てめぇ! 今までどこにいたんだよ!」

「そうよ! あんたのせいで警察に捕まっちゃったじゃない! このままじゃあたしたち逮捕されちゃう、早く帰るわよ!」

わけのわからないことをびながら、近づいて來ようとする。

「――そこまでだ。アイに手出しするなら、容赦はしない」

スラリと剣の刃を輝かせて、陛下が二人の行く手をさえぎった。

「な、なんなんだお前! 変な服著て……警察呼ぶぞ!」

「その子はあたしたちの子だよ! 早く返して!」

だが陛下は冷たくにらんだまま、全くじない。たじろいだがアイに向かってぶ。

! おいで! ママと一緒に帰ろう!? 家に帰れば、おいしいケーキがあるよ!」

アイは震えながら、ぎゅっと私にしがみつく。私はんだ。

「おだまりなさい! あなた方にこの子の親を名乗る資格はありません! アイはうちの子です!」

「なによあんた、えらそうに……! あんたなんかただの拐犯じゃないの! アイ! わがまま言ってないでさっさと帰るよ!」

カッと頭にがのぼる。私はいてもたってもいられず、アイを騎士に預けるとずかずかとの前まで歩いていった。それからぶ。

拐で結構よ! アイはうちでたっぷり甘やかしてたっぷり可がってたっぷり幸せにしますから、どうぞお構いなく! さっさとお引き取りください!」

それから両手で力の限り、どんとを押した。彼らが渦から來たのなら、渦からお帰りいただけばいいのよ!

「きゃっ!」

目論見通り、バランスを崩したが渦の中にずぶずぶと倒れこんでいく。

「てめぇっ……!」

隣に立つ男が、私に毆りかかろうとしていた。だが男の拳が繰り出される前に、陛下がみぞおちに拳を叩き込んだ。そのまま流れるように鮮やかな回し蹴りをれて、渦の中に蹴落とす。

陛下がんだ。

「アイ! 君はどうしたい! 私たちの子になるか!? それともあちらの世界に帰りたいか!?」

アイは泣いていた。泣きながら、小さなんだ。

「わ、わたしは……エデリーンにママになってほしい! パパは、へーかがいい!」

――アイがんだ瞬間、渦が発音を立てて霧散した。アイの両親だと言う人間も消えている。後に殘されたのはこの國の人間と、アイだけ。

「アイ!」

私はすぐさまアイの元へ走り、小さなを抱きしめた。アイがぎゅっとしがみついてくる。その頭を、陛下が優しくでる。

「……アイ、酷なことを聞いて悪かった。その代わり、私たちが君を大事にしよう。君の本當の両親の分まで、いやその何倍も幸せにしてみせる」

その言葉に、アイはうなずきながら泣いていた。私から離れておずおずと、けれどしっかりと陛下に抱きつく。

それを微笑んで見ていると、陛下が今度は私を見た。

「……その、エデリーン。君も、私とともにアイの親になってくれないだろうか」

「もちろんですわ。私はお飾りとは言え陛下の妻です。誠心誠意、盡くさせていただきますわ」

けれど私の言葉に、陛下が口ごもる。あら? しかったのはこの言葉じゃなかったのかしら?

「その……それなんだが……お飾りというのも、もうやめたいのだがどうだろう……?」

「えっ?」

私がきょとんと見つめると、陛下はぼっと顔を赤らめた。

「いや、その、都合がいいことを言っているのはわかっている。……だけど私は君と、夫婦になりたいんだ。のある、本の夫婦に」

いつも淡々としている陛下が、耳まで赤くなっていた。

言葉の意味がわかって、じわじわとがあたたかくなる。私はこらえきれず、微笑んだ。

「もちろんですわ――ユーリさま」

そんな私たちをアイがニコニコしながら見つめ、小さな手が私の腕をはっしと摑む。

――その瞬間、またもやばちっとに衝撃が走った。

「うんっ!?」

「? エデリーン?」

ふたたび頭に流れ込んでくる文(・)字(・)。

『聖アイ:スキル以心伝心を習得。対象、王妃エデリーン』

……待って、今度は何!?

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