《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第26話 あら、今頃そんなことに気づきまして?

私の渾の決め顔に、ユーリさまがを乗り出す。

「それで、正は一……!?」

こういう時、真剣に付き合ってくれるユーリさまって、いい人だなって思うの。……だって隣でハロルドが「はやく言え」みたいな顔をしているから。

「“ボタモチ”の正は、豆と米ですわ」

「はあ!? 豆ぇ!?」

ハロルドがんだ。アイがびくっとをすくめる。

私はあわててアイを抱き寄せた。

「大きな聲出さないでくださいませ! アイがびっくりするでしょう!」

「悪い。けどよ……それは何かの悪い冗談だろ」

言いながら、ハロルドがじろっと私を見る。

「豆と言えば、しょっぱいか辛いかだ。百歩譲ってすっぱいのは許せるにしても……甘くするなんて聞いたことがないぞ!?」

うっ……。私は何も言い返せなかった。

そうなのよね。スープに煮込み料理にサラダにと、我が國で豆を使う料理は山のようにあれど、ハロルドの言う通り甘い豆料理なんて見たことがない。それは料理人である彼が一番よくわかっているのでしょう。

でも、アイが甘いと言っているのなら、私はそれを信じるわ。問題は、どうやって彼を納得させられるかね……。

私が反論方法を考えていると、それまでじっと考え込んでいたユーリさまが顔を上げた。

「……お前らしくないな、ハロルド」

「え?」

ユーリさまがすぅ、と目を細める。

「アイのおかげでし平和になった途端、丸くなったな。たかが豆が甘いぐらいでおじけづくのか? 『死ぬくらいなら魔でも何でも食べてやる』って言っていた頃のお前はどこにいったんだ?」

言いながら、ユーリさまがフッと笑った。その眼には、煽るようなが浮かんでいる。ハロルドがぎろりとユーリさまをにらむ。

「言わせておけば……! いいさ、甘い豆でも未知の料理でも何でも作ってやる。俺の腕前を見せてやるよ……!」

ユーリさまが不敵な笑みを浮かべた。

「それでこそ“鍋をしょった悪魔”と呼ばれたお前だな。期待してるぞハロルド。しい材料があったらなんでも言え」

「待て、その二つ名絶妙にダサくないか? おれはそんな名前で呼ばれていたのか、答えろおい」

ハロルドががくがくとユーリさまをゆさぶる。ユーリさまはなぜか、ニッコリ……と微笑んでいた。

それからハロルドは私の証言をもとに、早速々な食材を特定していった。

まず豆なのだけれど、我が國にかろうじて流通する黒い豆はすべてとても大きくて、私がアイのスキルで見たものとは違っていたのよね。

ユーリさまが各地から商人を呼びよせた結果、東にある國の“小豆”という豆だと言うことがわかったの。しかも聞いた話によると、その國の人間はみんな黒髪に黒い瞳を持つのですって。アイと同じだわ……。何か、繋がりがあるのかしら?

「おい、これ食ってみろ」

そんなことを考えていたら、ハロルドが小皿に載った黒いつぶつぶを差し出した。

今日はアイが作っているところを見たいというから、特別に廚房にお邪魔させてもらっていたのよ。

ハロルドが差し出したのは、私がアイのスキルで見た、“ボタモチ”の表面とそっくりのもの。アイと私が、わくわくしながらそれをスプーンですくいとって食べる。

――すると。

「ぶへぇえっ!」

「しぶいわねっ!?」

私たちはんだ。アイのちいさなお口からでろでろと豆が吐き出される。侍たちがあわてて片づけに走ってきた。

「これは一なんですの!? 甘いどころか渋すぎて、食べられたものじゃないわよ……!?」

隣で、んっくんっくと水を飲んでいるアイも涙目だ。

だというのに、ハロルドはお腹を抱えて笑っている。

「引っかかったな。これはアク抜き前の豆だ。商人が教えてくれたんだが、その豆は何度か茹でないととても食えたもんじゃないらしい」

こ、この男……!!!

私はともかく、アイにそんなものを食べさせるなんて……すりつぶしますわよ!

私が怒りに震えていると、ハロルドが突然相を変えた。目線の先にいるのはゆらりと立ち塞がったユーリさま。

「おっおい、ユーリやめろ! 剣を抜くな! ただの戯れだろ戯れ!」

見れば、剣を抜いたユーリさまが見たことないほど恐ろしい形相でハロルドをにらんでいる。目だけで殺すという言葉があるけれど、まさにそんなじね……! 戦場で絶対出會いたくないタイプだわ。

「ハロルド、お前とうとう命が惜しくなくなったようだな」

「待て待てごめんって! 目が本気で怖えよ!」

「ユーリさま! 駄目ですわ!」

私はんだ。ぎゅっとアイを抱き込み、何が起こっているのか見せないようにしながら。

「アイが見ているので、ヤるならよそでお願いいたします!」

「わかった」

「止めるとこそこじゃなくない!?」

涙目で鼻水を飛ばしながらんだハロルドを、ユーリさまがぎろりと睨む。

「ハロルド、まだ首を繋げていたかったら、冗談を飛ばす相手はよく選ぶことだな」

「ごめん! 本當にごめんなさい! もう二度としませんから!」

その後、ハロルドはユーリさまに散々しぼられた末。

「おじちゃん。アイは、おこってないよ」

と、大天使にぽんと肩を叩かれてなんとか許しを得ることに功した。

「アイがそう言うなら、許しましょう」

「そうだな。アイが許しているなら、許してやろう」

ようやく剣を収めたユーリさまを見ながら、壁に張り付いたハロルドが言う。

「おれは今回のことでよくわかったぜ……。この國の頂點にいるのが、誰かっていうことをな……」

言葉の意味がわかっているのかわかっていないのか、ハロルドに見つめられたアイが、「えっへん!」とを反らした。

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