《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第27話 形って怖い!
「待たせたな、これが“ぼたもち”だ!」
そう言ってアイの部屋でハロルドがテーブルに出したのは、白いお皿に載せられたまぎれもない“ぼたもち”だ。
アイの記憶で見たものと、そっくりそのまま同じ……だと思う。
「これ……味は大丈夫でしょうね?」
私は怪しみながらハロルドを見た。隣では、アイも眉間にぐっとシワをよせて、一杯の怖い顔を作っている。
「大丈夫だよ。ああいう悪戯はもうやらねえ。命が惜しいからな」
ユーリさまを見ながら、ハロルドは言った。……それなら、大丈夫そうかしら。
念のため、私はアイにし待ってもらって先に毒見ならぬ味見をする。ナイフをれると、黒くて丸いぼたもちがまっぷたつに割れ、中から白い米が覗いた。
……うん、中もアイの記憶通りね。
さらに一口大に切ってから、私はおそるおそる口の中に運んだ。
途端、口の中にふわぁっ……とした甘みが広がる。舌にれるしざらついたが、豆よね? 普段慣れ親しんでいる菓子よりも控えめで優しい甘さに、思わずほぅ……と顔がゆるんだわ。甘い豆って、こんな味がするのね。おいしいじゃない。
噛むと、アイの言う通りモチモチとした食が豆と混じって、今度はほんのりとする絶妙な甘さになった。しっかりした噛み応えのせいか、一口しか食べてないはずなのにとても満足があるわ。アイが「たべてもたべてもなくならない」って言っていたのは、もしかしたらこのことかもしれないわね。
「うん……! おいしいわ! アイも食べて大丈夫そうよ」
私は小さめに切ったボタモチを、きらきら目を輝かせて待っているアイのお口に運んだ。
あむっ! と言う音とともに吸い込まれ、ぼたもちを噛むたびにアイのほっぺがぷくぷくとふくらむ。それから、アイが「くぅーっ」と聲をもらした。
「おいしいねぇ。おばあちゃんのぼたもちといっしょだねえ」
ぼたもちがこぼれないよう、手で口を押さえながらアイが嬉しそうに言う。ハロルドがここぞとばかりにをそびやかした。
「ふふん、どうだおれの腕前は。言っとくけど、そこにたどりつくまで結構大変だったんだぜ。米だって普段使ってるものだとパッサパサになるから、わざわざ“もち米”とか言うのを手してきて、それも煮るんじゃなくて炊き上げるんだって片言の商人に教わって、すげえ試行錯誤した末に――」
「ユーリさまも召し上がられますか?」
ぼたもち制作の苦労を語り始めたハロルドはそのままに、私は隣に座るユーリさまの方を向いた。
「あっおい、おれの話を聞いてくれよ!」
「聞きますわよ。でもその前に、ユーリさまに食べさせたっていいでしょう?」
「……まあ確かに」
ユーリさまは甘いものがあまり得意ではないのだけれど、この優しい甘さならいけるのではないかと思ったのよ。おいしいものは、みんなで分け合いたくなっちゃうの。
「……なら、しだけもらおう」
ユーリさまがそう言ったので、私は自分の分をし切り取った。それから一口分をフォークに刺して彼に差し出す。
「はい、あーん」
途端、ユーリさまが直した。
「エ、エデリーン……その、私はひとりで食べられるぞ」
その言葉にはっとする。
し、しまった……! 最近ずっとアイにあーんするのが當たり前になりすぎて、つい……!
「ご、ごめんなさい! 私ったら!」
なんて失禮なことを! 赤面しながらあわてて手をひっこめようとしたところで、手首を摑まれた。見れば、同じく顔を赤くしたユーリさまが、絶妙に私から目を逸らしながら言う。
「……いや、せっかくだからもらう」
言って、ユーリさまの顔が近づいてくる。
長めの黒髪がさらりと肩から落ちて、伏せられた長いまつげが見える。それから形の整った口に、ぱく、とぼたもちが吸い込まれた。
「……うん、これはうまいな。さすがハロルドだ」
言いながら、ユーリさまがぺろりと口の端を舐めた。一瞬覗いた赤い舌に、私の心臓がドッと暴れる。
「そっ、それは大変よかったですわ……」
なっ……なんなの今の! 思わぬ気に、ちょっと聲が裏返ってしまって猛烈に恥ずかしいですわ……! 形ってたまにこういうところで思わぬ威力を発揮してくるから怖い! 油斷、!
私が揺を出さないように心で格闘していると、ニチャニチャした笑顔を浮かべたハロルドがこっちを見ていた。……なんなのその顔。なんかねばついてるわよ。
「ふぅーん、ふぅーーーん? 我らが王さまと王妃さまは、ずいぶん初々しい仲のようですなあ?」
「ほっほっほ。見ていると何やら、甘酸っぱい気持ちになりますのう……」
ちょっとまって。どこから出てきたのか、ホートリー大神までハロルドに乗らないで!?
「あの『軍神ユーリ』がねえ……ふぅん、王妃サマにはこんな顔をするんだあ……へええ、ふうううん」
「おいハロルド、お前何を企んでいる……」
「いやいや、何も企んじゃいねえさ。ただ騎士団のやつらに話したら、さぞかしみんなが喜ぶだろうなあと思って」
プークスクスと、ハロルドが悪い顔をしながら手で口を押さえて笑っている。
「やめろ! 奴らには知られたくない」
ハロルドがケタケタ笑いながら逃げていくのを、ユーリさまがあわてて追いかけに行く。
それを遠目に見ながら、私はアイにもうひとくちぼたもちを食べさせていた。
「ヘーカは、あのおじさんとなかよしだねぇ」
もにもにとほっぺを膨らませながらアイが言う。
「仲良し……そうねえ、きっと仲良しなのね。あんな風に本音で話せる友達がいるのは素敵なことだわ」
もうひとくちぱくっと食べながら、アイがつづける。
「アイも、ぼたもちもってったら、おばあちゃんとなかよくなれるかなあ……」
サクラ陛下のことかしら? 忘れないで、ずっと覚えているなんて……アイは優しい子ね。
私はさら……っとアイのやわらかな髪をでた。
「きっと、仲良くなれるわよ。今度お會いするのが楽しみね」
私の言葉に、アイが「うんっ!」っと力強くうなずいた。
【8/10書籍2巻発売】淑女の鑑やめました。時を逆行した公爵令嬢は、わがままな妹に振り回されないよう性格悪く生き延びます!
公爵令嬢クリスティナ・リアナック・オフラハーティは、自分が死んだときのことをよく覚えている。 「お姉様のもの、全部欲しいの。だからここで死んでちょうだい?」 そう笑う異母妹のミュリエルに、身に覚えのない罪を著せられ、たったの十八で無念の死を遂げたのだ。 だが、目を覚ますと、そこは三年前の世界。 自分が逆行したことに気付いたクリスティナは、戸惑いと同時に熱い決意を抱く。 「今度こそミュリエルの思い通りにはさせないわ!」 わがままにはわがままで。 策略には策略で。 逆行後は、性格悪く生き延びてやる! ところが。 クリスティナが性格悪く立ち回れば立ち回るほど、婚約者は素直になったとクリスティナをさらに溺愛し、どこかぎこちなかった兄ともいい関係を築けるようになった。 不満を抱くのはミュリエルだけ。 そのミュリエルも、段々と変化が見られーー 公爵令嬢クリスティナの新しい人生は、結構快適な様子です! ※こちらはweb版です。 ※2022年8月10日 雙葉社さんMノベルスfより書籍第2巻発売&コミカライズ1巻同日発売! 書籍のイラストは引き続き月戸先生です! ※カクヨム様にも同時連載してます。 ※がうがうモンスターアプリにてコミカライズ先行掲載!林倉吉先生作畫です!
8 77【書籍発売中】砂漠の國の雨降らし姫〜前世で処刑された魔法使いは農家の娘になりました〜【コミカライズ】
アレシアは『眠っている時に雨を降らせる力』を持っている。 両親はそんなアレシアを守るために大変な努力をして娘の力を隠していた。 ある日、アレシアは自分の前世での記憶が甦る。アレシアは昔、水系魔法に秀でた魔法使いアウーラだった。國のために前線で戦い、國王との婚姻も決まっていた。しかし、謀略による冤罪で二十三歳の時に処刑されてしまう。 そんな前世だったからこそ、今世では名譽や地位よりも平凡で穏やかな暮らしを守りたい、誰かの役に立ちたいと願う。 眠ると雨を降らせる女の子アレシアが前世での後悔を踏まえて人に優しく前向きに生きていくお話です。 少女時代から成人までの長期間が描かれます。 ゆったりした展開です。 ◆GAノベル様より2022年5月13日頃発売開。コミカライズも進行中。
8 126最強の超能力者は異世界で冒険者になる
8 121貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無雙します
舊題「転生〜最強貴族の冒険譚」 弧月 湊、彼は神の手違いにより存在が消えてしまった。 そして神は彼を別の世界に力を與えて甦らせることで彼に謝ろうとした。 彼は神の力を手に入れて転生したのだった。 彼が転生したのは辺境伯の貴族の次男アルト・フォン・クリード。 神の力を持った主人公は聖霊の王であるキウン、悪魔の長であるネメス、天使の長であるスーリヤを従えるのだが…… ハーレム弱めです。 不定期更新です。 絵はにぃずなさんに描いてもらいました!! にぃずなさんもノベルバで活動してるので是非とも読んでください!! 更新日 毎週金、土、日のいずれか(確実では無い) Twitter @gujujujuju なろう、アルファポリスにて転載中
8 126受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-
受験を間近に控えた高3の正月。 過労により死んでしまった。 ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!? とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王國でも屈指の人物へと成長する。 前世からの夢であった教師となるという夢を葉えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。 そんな中、學生時代に築いた唯一のつながり、王國第一王女アンに振り回される日々を送る。 貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。 平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!? 努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました! 前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、內容も統一できているのかなと感じます。 是非今後の勵みにしたいのでブックマークや評価、感想もお願いします!
8 83香川外科の愉快な仲間たち
主人公一人稱(攻;田中祐樹、受;香川聡の二人ですが……)メインブログでは書ききれないその他の人がどう思っているかを書いていきたいと思います。 ブログでは2000字以上をノルマにしていて、しかも今はリアバタ過ぎて(泣)こちらで1000字程度なら書けるかなと。 宜しければ読んで下さい。
8 127