《聖が來るから君をすることはないと言われたのでお飾り王妃に徹していたら、聖が5歳?なぜか陛下の態度も変わってません?【書籍化&コミカライズ決定】》第29話 もしかして、と思っていたけれど……やっぱり
「……あら?」
離宮についてすぐ、私は周囲の異変に気付いた。
「ママ、おはながいっぱいあるよ!」
馬車から降りてきたアイも、見るなり歓聲をあげる。
それもそのはず。以前はだだっ広い石畳だけが広がっていた離宮には、急ごしらえではあるものの、たくさんの花が並んでいた。細長い植木鉢がいくつもいくつも繋げられて、離宮に続くとりどりな花道を作っている。
離宮の中も、同じような様子が続いていた。さすがに庭と違って植木鉢をそのまま……というわけにはいかなかったようだけど、並ぶ花瓶の數が明らかに増えている。
それに伴い、以前は全くと言っていいほど見かけなかった使用人たちの姿もちらほらと。人が數人増えただけと言えばそれだけなんだけれど、それでも前までなかった活気が、離宮を優しく包んでいたわ。
その変化には先導するホートリー大神も驚いているようで、丸いつぶらな目をしぱしぱとまばたかせている。
「これは驚きましたねえ……以前はあんなに靜かでしたのに」
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「人がいるだけで、ここまで変わるものなんだな……」
アイと手をつなぐユーリさまが言った。その隣で、アイも嬉しそうに言う。
「これならアイ、こわくないよぉ」
「よかったわ。それなら、もうおてて離そうか?」
その言葉に、ユーリさまがあわてる。
「い、いや、念のためだ。手はつないでおこう」
……って言ってるけれど、それどう見てもユーリさまがアイと手をつなぎたいだけよね……?
そんな私の気持ちが、目に現れてしまったのかもしれない。ユーリさまがふいと顔を背けた。でも、アイもにこにこしているし……まあいいかしら?
謁見室にたどり著いて、またユーリさまがしぶしぶといった様子でアイの手を離した。今日、ホートリー大神はぼたもち係として一緒にるのだけれど、ユーリさまは相変わらずお留守番なのよ。
足を踏みれた謁見室の中では、前回同様ゆったりとした椅子にサクラ陛下が腰かけていた。
けれど、その顔は心なしか前回より穏やかに見える。うっすらと、微笑みさえ浮かべていた。
「――いらっしゃい、この間ぶりね」
「ごきげんよう、サクラ陛下。……さ、アイもご挨拶できるかしら?」
言って、そっとうながすと、アイはもじもじしながら前に進み出た。
今日のアイは「おばあちゃんにあうから!」と言って、特別なお洋服を著ているのよね。
淡いピンクの平織《オーガンジー》を何枚も重ねたドレスはふわっふわで、その裾には桜型の花びらが何枚もい付けられている。髪には桜を模したヘアバンドもつけていて、まさに桜の妖ねっ……! 私はほうっと嘆の吐息をもらした。
特注で作らせたドレスと髪飾りの出來栄え、それからもちろんそれを著こなすアイの可さにうっとりしていると、アイがおずおずと進み出る。
それからちょこんとドレスの端をつまみ、片足を引いて膝を曲げるお辭儀(カーテシー)を披した。
その姿は、小さいながらも立派な淑だ。
かっ……かわいいわ~~~!!!
全力で拍手喝采したいのをぐっとこらえて、私は「よくやったわ!」と言わんばかりに力強くうなずいた。そんな私をアイが確認するようにちらりと見て、ほっと安堵の顔をする。うんうん、とっても上手だったわ、アイ! あとでたくさん褒めてあげましょうね!
心の中でアイを褒めちぎっていると、サクラ陛下がまあ、と聲を上げた。
「ちょっと見ない間に、ずいぶん立派な淑に長したこと。……これもエデリーン、あなたのおかげかしら」
やっぱり、そのお顔はこの間よりもだいぶ穏やかだ。もしかして、アイにお會いしたことでしだけ元気を取り戻したのかしら……? さすが私の天使ね!
「アイが本領を発揮しただけですわ。元々とても賢い子ですから。……そういえば、離宮がずいぶん明るくなりましたね。心なしか、以前より人も増えた気がします」
私が尋ねると、サクラ陛下はし照れたように笑った。
「さすがに、今までが殺風景すぎたのよ。こんな可らしいお客さまを迎えるなら、私も何かしなければ、と思ったの」
「お気遣い深く謝いたします。おかげでアイも楽しそうでしたわ」
「それはよかったわ。……ところで、今日はホートリーまでどうしたのかしら?」
その言葉に、後ろに控えていたホートリー大神が進み出る。手には、しっかりぼたもちのった箱を持っていた。
「ほっほ……。今日はアイさまが、サクラ陛下にお土産をもってきたのですよ」
「お土産?」
私が合図すると、あらかじめ控えていたたちがサッとテーブルや椅子を運んできてくれる。そこに皆で著席すると、ホートリー大神が包みを開いた。
中から出てきたのは、ぼたもちをれた木箱だ。この箱も、商人に頼んで手にれたものなのよね。
その木箱を見ただけで、サクラ陛下がかすかにを乗り出した。さらにぱかっと蓋を開けて現れたぼたもちを見て、わなわなと震える。
「まあ……これは……!? もしかして、ぼたもちじゃなくって……!?」
驚きを隠せないと言った様子で、サクラ陛下が言った。もしかしてとは思ったけれど、やっぱりぼたもちを知っているみたい。私はアイの頭をなでながら言う。
「アイがサクラ陛下に食べさせたいと言っていたので、料理人に再現してもらったんです。ねっ、アイ」
うながすと、アイはえへへ……ともじもじしながら口を開いた。
「あのね、まほうみたいにすてきなんだよ」
うふふふふ。魔法みたいに素敵なのは、あなたの方よ……!
私がにこにこしている一方で、サクラ陛下は驚きすぎて聲も出ないらしい。両手で口をおおい、じっと皿に取り分けられたぼたもちを見つめている。
それからゆっくりと、そばに添えられていた細長い木の棒を手に取った。その棒は、ぼたもちを食べるために作られた“黒文字《くろもじ》”と呼ばれたもの。これも商人から仕れたのよね。
さくっ……と棒がぼたもちに沈んでいく。現れた白い斷面に、一瞬サクラ陛下が目を潤ませた気がした。
それからしい丁寧な所作でぼたもちを口に含む。
ゆっくり、ゆっくりと、一粒一粒噛み締めるように、サクラ陛下がぼたもちを味わう。
――それから。
つ……と一筋の涙が、陛下の頬を伝った。
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