《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第03話 お家に帰った探索者!

「ただいまー」

誰の返事も帰ってこない家に帰ると、とりあえず濡れた服をごうとして……。

「こっち見んの止めて」

ニタニタと笑いながらこちらを見つめるヘキサと目が合った。

《恥ずかしがるもんでもないだろ》

「……いや、恥ずかしいし」

《分かったよ。向こう向いてやるよ》

そう言ってヘキサがハヤトに背を向けたので、さっさと服をいで洗濯籠にれた。洗濯が溜まってきてる。そろそろコインランドリーに行かなきゃ。

《電気はつけないのか?》

暗いままに部屋の中央に座ったハヤトにヘキサが尋ねる。

「契約してない」

《……は?》

「金がないからさ」

《どうやって生活してるんだ……?》

ため息をついて、ヘキサは次第に闇に順応してきた瞳で部屋を見渡した。

《それにしても……狹い部屋だな》

「家賃が安いんだよ」

《それにボロい》

「……安いんだよ」

《幾らなんだ?》

「1萬2千円」

《……そ、そうか》

部屋の大きさ、5畳半。風呂トイレ一緒(ユニットバス)。ガスコンロ一つに小さいシンクが一つ。洗面所なんて気の利いたがあるはずもなく……。

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《それにしても安いな。ここ、ダンジョンまで自転車(チャリ)で何分だ?》

「聞いて驚け。5分だ」

を張って答えるハヤト。ここを見つけるのにはひどく苦労したのである。

何しろ保証人なしで借りられる所から探し始めたのだから。

《駅までは》

「3分」

《コンビニもスーパーも近くにあるし……。お前、まさかここ》

「ああ、事故件だ」

《……正気か?》

「なんだお前、宇宙人のくせに幽霊が怖いの?」

《いや。でも、事故件にしても安いな……》

「うん。だって、ここに住んだ奴五人連続で自殺してんだもん。ははっ、俺で六人目になるところだったな」

《…………》

信じられない、といった顔でこちらをにらむヘキサ。

「どした?」

《やっぱり、絶対なんかあるだろ! 嫌だぞ私はこんな所!!》

「こんな所ってなんだよ! これでも住めば都だぞ!!」

《…………まあ、苦を飲んで一晩くらいは我慢してやる。っていうか、意外とお前、綺麗好きなんだな……》

「綺麗好きっていうか、なんにもないからな……」

彼の部屋にあるのは3著の著替えと、使いこまれた短剣。そしてポーチとボロボロになった防。家はぺらっぺらの布団だけ。食類も見けられない。

《食事は?》

「その……ダンジョンで……」

《モンスター食べてるのか》

「……金が無くても腹は減るからな」

モンスターは倒したあと、黒い霧となって消えていく。そして、後にドロップアイテムだけが殘るというわけだが、それは翻(ひるがえ)すと生きている間は消えないというわけだ。

なので、ハヤトは一人でも倒せるモンスターの腕や足をちぎっては安全圏まで避難してそのを焼いて食べているのだ!

《食べられるか?》

「貴重なだからな」

最初は魚の腐ったような臭いがしてまともに食べられたじゃなかった。モンスターの中には味いもあるかもと様々なモンスターを倒したが、そのどれもヘドロのような臭い。卵の腐った臭い。どれもこれもえずくような臭いばかりだった。

《ハヤト……お前……》

「だって、食費が浮くんだもん……」

《…………お前》

モンスターの中には食用のを落とす(ドロップする)ものもいる。いるにはいるが、彼一人で倒せるようなものではない。

「あ、そうだ。雨水」

《……は?》

ハヤトは颯爽とベランダに出ると、屋についている雨樋(あまどい)に無斷で開けたから流れてきた雨水をためているバケツを手に取った。

《…………それは?》

「雨水だけど」

《いや、それは見れば分かるが……》

「雨水貯めたら片付けておかないと。盜まれるかもしれないだろ?」

《……雨水を盜む奴は……いないと思うぞ……》

ハヤトは上半のまま、それをろ過にかけていく。

《お前、それを飲む気かッ!》

「いや、沸騰(ふっとう)処理もしてないのに飲むわけないだろ……。これはを拭く用だって」

常識だろ? といったじの目で見られてしだけヘキサはイラっとした。

《…………信じられん》

「そうだ、お腹すいてないか? パンの耳があるぞ。俺も流石にモンスターばっかり喰うわけにもいかないからな」

《……今の私は思念だから食事はいらない》

「そうか。なら、遠慮なく」

そう言って旨そうにパンの耳を頬張るハヤトを見て、早くなんとかしなければと決意を固めるヘキサ。

《ハヤト、洗濯も雨水でやってるのか?》

「去年はやってたけど匂いが取れないから今はコインランドリーでやってるよ。洗濯にかける時間も無いしね」

《そ、そうか……》

安心していいのか、それとも困していいのか分からず直するヘキサ。

「あぁ、そうだ。ダンジョンに潛れとか言ってたけど、俺はダンジョンにれないぜ?」

《うん? 探索者証(ライセンス)は持ってるだろ?》

ダンジョンに潛るときに、探索者証(ライセンス)は必須である。この世界の常識を持ちだしてきたヘキサに、

「あぁ。けど、潛るときにはそれに追加で治癒ポーションがいるんだ。けど、俺は今持ってないから。それに買う金も……」

《いや、それ実際に確かめられるわけじゃないだろ? 確認と言っても口だけのはずだ》

ヘキサは地球に來る際に確認してきた常識を持ち出す。

「おいおい。ルールはルールだぜ」

《なんで変なところで真面目なんだお前は……。別に噓ついたっていいだろ、それ》

「………………あっ」

《おい、まさか思いつかなかったのか》

「…………」

《まさか、そんなことも思いつかずに死のうとしてたんじゃないだろうな》

「…………風呂に行く」

《おい、ハヤト》

風呂と言ってもろ過した雨水でを拭くだけなのだが。

勿論、それだけでは綺麗にならないので一週間に一度、近くの銭湯に出向いてを徹底的に綺麗にするのだ。

しかし、今日は雨水の日なのでささっと拭いて終わった。適度にを清めて、もう遅いからと布団にもぐりこむ。

「悪いが……ダンジョンは明日からにさせてくれ……」

《ああ、それは別に良いが……》

「なぁ……ヘキサ…………」

日が出るとともに起きて、沈むと共に寢ているハヤトにとって午後10時を回った今は既に寢ている時間だ。布団にるとすぐに睡魔が襲ってきた。

《……どうした?》

「俺を……選んでくれて……ありがとう…………」

《あぁ》

ヘキサは隕石がハヤトを貫いた瞬間に、彼の記憶を覗き見ている。故に、彼がどういう風に他人に扱われてきたかも知っている。

誰も彼も彼を排斥し、排除しようとする。

そうでない者でも、大した果を上げられない彼は居ないも同然だ。

だから、彼のその言葉は本音だったのだろう。

《案外可いところもあるじゃないか》

そう言ってほほ笑むヘキサだが、肝心のハヤトはぐっすり睡魔に飲まれているのだった。

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