《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第06話 スキルの検証をする探索者!

第3階層。

初心者が強くなるためにトレーニングをするには低すぎるが、初心者が一層からの流れで挑むには強すぎるという微妙な階層。

そこに一人。全をボロボロの防で覆った年が立っていた。

昨日、一日あたり7500円近くも稼ぐという素晴らしい快挙(本人にとっては)をし遂げたハヤトは、引き続いて第3層で狩りをしていた。

「俺は【スキルインストール】と、【武創造】でどこまでできるのかを知りたい」

《自分のできる限界を知っておくことは大事だ》

その言葉に、うんうんと頷くヘキサ。

「だが【スキルインストール】の方はパッシブスキルだから、自分で好きなように検証できないっ!」

《まあ、そうだな》

「ということは、必然的に【武創造】しか検証できないというわけだっ!!」

《その通りだと思うが、そんな大聲だして言うことか?》

「気合れてんだよ」

時刻は午前6時50分。多くの探索者たちはまだ、ベッドの中にいる時間帯だ。

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今が最もダンジョンに人口がない時間帯といえるだろう。

「今まで俺は、【武創造】というスキル名を聞いたことが無い」

《だろうな。多分だが、この星でも高階層で落ちるスキルオーブでしかもらえないと思うぞ》

「だが、スキルにレベルが付いてないから想(・)像(・)力(・)でなんとかなるタイプのスキルだと思ったわけだ」

《あながち間違えてないけど、その程度は誰でも思いつくな》

「もっと優しくしてくれ」

スキルを分類するときにまず使われるのは、それが任意的(アクティブ)か、自的(パッシブ)かだ。しかし、それだけではなくレベル付きかレベル無しかで分けることもある。

そもそも、スキルとは科學で説明できないような不可思議極まる現象をこの世界に起こすものの総稱だ。ダンジョンが発生すると共に、世界各國でスキルの科學的検証が行われたが、未だ原理も理論も一切不明。

そういうものだとして、扱うほかないという結論が下されるほど、ブラックボックスなわけなのだ。

では、そんなブラックボックスに形を燈しているのはなんなのか。それは、人間の想像力である。例えば、【炎魔法Lv1】で使える「ファイヤ・ボール」は文字通りの火球だが、それをまっすぐ矢のようにして放てば、「ファイヤ・アロー」となる。

両者は本質的に同じものだ。しかし、そこに人間の想像力が加わったために「ファイヤ・ボール」は範囲制圧に優れ、「ファイヤ・アロー」は貫通力に優れるようになるのである。

そしてそれは、レベル無しのスキルにおいてより顕著に現れる。例えば、昨日ハヤトが【武創造】で生み出した短剣は、切れ味を意識したおかげか普通の短剣よりも切れ味の鋭いができていた。もしあれを、もっとリーチを優先するように想像していれば、長剣になっていただろう。

「つまりだ。誰にも負けない最強の剣を想像することができれば、俺は最強になれるというわけなんだっ!!」

託は分かった。けど、そんな都合の良い剣を(・)(・)的(・)に想像できんのか?》

ぞっとするほどしい顔で、ひどくラフにヘキサが言った。

「んあ……。それは、まあ、こうご期待ということで……いずれは……魔剣クラスをバンバンと……」

《馬鹿なこと言ってないで、まずは基礎練だ。アホ》

「……チェッ」

魔剣。あるいは聖剣。

それはダンジョンから見つかる「超(オーパーツ)」の中でも最高にレアな武のことを指す。噂によると、最低価格で數十億。なんでも數兆という金もいたことがあるらしい。いわゆる都市伝説のようなものだ。

的にイメージすることが大切なんだ》

ハヤトはまっすぐ掌を突き出すと、目を瞑って目の前に一本の槍を想像した。長さは1m50cm程度。迷路の中でも取り廻しが利くように、あえて短く。

目を開ける。ぐるりと世界がねじ曲がり、ハヤトの手元に一本の短槍が出現した。

《大8秒。とてもじゃないけど、実戦じゃ使えないな。もっと自然に、息を吐くようにして武を産み出せ。とりあえず、今日の訓練はそれにしよう》

「分かった」

《あとはどの狀況でどの武を使うのか、だな。一つを極めても良いが、二年間単獨で探索者をやり続けてきたお前は狀況判斷能力に優れてるだろう?》

「自慢じゃないけど、パーティーでやってる奴よりは、な」

それも當然だ。索敵、罠の用意、敵との戦闘方法、撤退のタイミング。

単獨(ソロ)攻略は誰にも頼ることができないからだ。

《だから、お前には常に有利が取れる【武創造】のスキルが良いと思った。だけど、どの敵にどの武を使うかという訓練は後でも良いだろう。とにかく今日は全ての武に慣れること。武を呼吸するように産み出せるようになること。それを煮詰めていこう》

「うす! お願いします! 師匠!!」

《キモイから二度と私を師匠と呼ぶな》

「うす! 了解したであります! 師匠!!」

《お前さ~》

口はふざけているがハヤトは真面目にヘキサからのアドバイスをけ取っている。ひとまず、目の前に現れた「ゴブリン・ソードマン」二と「ゴブリン・ランサー」二の混パーティーにあたることにした。

ヘキサと出會う前では十分な備えがないときには速攻逃げ出していた相手だったが、今はどこまで通用するだろうか。

“【心眼】【槍の心得(こころえ)】【大事な一歩】をインストールします”

“インストール完了”

その文字が消えると同時にハヤトは踏み込んだ。

スキルインストールの影響だろう。インストールされたスキルは一度も見たことがないスキルでも、どんなスキルでどのような使い方をすれば良いのかが分かる。

【槍の心得(こころえ)】は今まで一度も槍をったことの無いハヤトの手に槍を馴染ませるパッシブスキル。これがあるだけで初心者にの生えた者よりはマシな扱いができるだろう。習うより慣れろといったスキルだ。

【大事な一歩】は任意のタイミングで踏み込みを強化するアクティブスキルだ。これを使うことで槍の一撃を強化できる。使うときに踏み込んだ足を保護してくれるのもポイントが高い。

【心眼】は相手の弱點を見せてくれる便利なパッシブスキルだ。敵の3m以ると自的に視界に弱點が表示される。というかこれ、最重要スキルなんじゃなかろうか。

瞬く間にハヤトは四のゴブリンを屠る。

……すごい。まるで生まれ変わったみたいだ。

「けど、なんだかなぁ……」

《どした》

「真面目にやってる他の探索者に対して、ズルしてるみたいで気後れするんだよ」

《なーんでハヤトはそういうところで真面目を出しちゃうかね。良いんだよ。他の企業に就いてる探索者たちも金に言わせて同(おんな)じことやってんだから》

「そうか……。くっそー良いよなぁ。金持ちは。俺も金持ちになりたいぜ」

ハヤトは落ちている魔石を拾いながら、ふと気になったことを尋ねた。

「そういえば、元々俺が持ってたスキルってどうなったんだ?」

元々、彼は三つのスキルを持っていた。二つは自分でスキルオーブを見つけたのだが、殘る一つはない収をやりくりして購したものだ。

《ん? あぁ、消えたぞ》

「…………は?」

《だって言っただろ。容量(メモリ)食うって》

「お前ッ! あのスキルオーブを買うために俺がいったいいくら貯金したと思ってんだ!!」

《あぁ? そんなこと言ったって、どうせ大した額じゃないだろ? お前のことだからせいぜい數萬円……》

「そうだよっ! 【索敵】スキル、3萬円だぞ!!」

《はははっ。3萬ごときで何をそんなに言ってんだ》

「普通に買ったら300萬は下らないのっ!!」

《…………は?》

「不要なスキルオーブはギルドが管理するオークションにかけられるんだけど、【索敵】スキルは今まで一度たりとも300萬を切ったことの無い希なオーブなのっ! それをなんとか賭けに勝って3萬で手にれたんだよっ!」

《……結局、3萬しか払ってないじゃん…………》

「賭け金無いから臓まで賭けたってのに」

《…………お前、馬鹿だな》

「失禮な」

賭けるべきタイミングに賭けれるギャンブラーと言ってしい。

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