《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第08話 ふれあい! 奉仕種族!!

「め、奉仕種族(メイディアン)……?」

ヘキサが何を言っているのか分からずにハヤトが尋ね返す。

《ああ。主人と決めた人間を徹底的に奉仕する種族だ》

「それ悪いとこあんのかよっ!」

迷路の中をジグザグに疾走しながら、追いかけてくる奉仕種族(メイディアン)と距離を取る。だが、その距離は離れるどころか、最初に比べて近づいているように見えた。

《ある。奉仕された奴らは事に対するモチベーションが失われていくんだ。何しろ、の回りのことを全てやってくれるんだからな》

「……なるほど」

ヘキサは言った。ダンジョンを攻略するにはモチベーションが最も大切だと。ハヤトもその考えには大いに賛できる。

だからこそ、

「うおおおおっ!!」

全力で逃げねばならない。だが、

「近づいてる近づいてる!!」

《……奉仕種族(メイディアン)は、主人候補を決めた時に不意をついて接。契約を結ぼうとするが、主人候補が逃げだした場合、ステータスが変して素早さ(AGI)が主人候補の二倍になるらしい》

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「無理じゃんかッ!」

ハヤトのAGIは現狀9。その二倍ということは18ということ。

《今のところ、コーナーで差をつけてるからしばらくは大丈夫だと思うが……。このままだとじり貧だな……》

「どうすりゃいい!?」

《転移の寶珠か、階層主(ボス)部屋にるのが解決策だと思うが……ここら辺に無いし……》

「あっ、いや、待てよ……?」

唐突に、何かを思いついたハヤト。

《どうした?》

「俺って探索者じゃんか」

《……急にどうした?》

「家にほとんどいないじゃん?」

《そうだな》

「奉仕種族(メイディアン)とれ合う時間なんてなくね」

そう言って、ハヤトは足を止めた。

《馬鹿っ! 奉仕種族(メイディアン)との契約にはもう一つ欠點があって――》

ヘキサが言い終わるよりも先に、スライム狀の奉仕種族(メイディアン)がハヤトにれた。

《お前の(・)癖(・)がバレるぞッ!》

「へぁっ!?」

時既に遅し。スライムのが発すると共に、変態を始める。スライム狀だったものが人型を取り始めると、腰のくびれ、のふくらみなどが出來始める。

……である。

それは30秒ほどで完全に変態を終わらせると、半明の鎖がジャラジャラと音をたててハヤトとの首に巻き付いて、契約を結ぶ。

「やーっと捕まえましたよ、ご主人様っ!!」

はハヤトにとって最も心地の良い聲でそう言った。

「これで契約完了です! 死ぬまで放しませんから!!」

長145cm。髪のき通るような銀。瞳は驚くほどにしい藍玉(アクアマリン)。髪はショートにカットされ、何より目をはるのはそのだ。

《ろ、ロリ巨……ッ!》

(なっ、なんだよ。悪いかよっ!!)

《ロリ巨なんて邪道の極みだろうッ! ロリにはロリの、巨には巨の良さがあるというのに!》

(その二つを併せ持つからこそ、最強なんだって!)

「どうかされましたか? ご主人様」

いつまで経っても反応しないハヤトに奉仕種族(メイディアン)のは首を傾げた。

「いっ、いや、なんでもない。君は……奉仕種族(メイディアン)で良いのか?」

ハヤトは顔を真っ赤にしながら、努めて眼下を見ないように顔を上げる。

《……小學生かお前は》

(うっ、うるせー)

ハヤトはスマホを持っておらず、パソコンも無い。エロというものからは遠く離れた生活を送ってきたのだ。故に、こういう反応をするのも仕方ないことなのだ。

「はい! 私がご主人様の奉仕種族(メイディアン)。エリナと呼んでください!!」

「そうか。エリナ……とりあえず、服を著ろ」

で抱き付かれているので、ハヤトのハヤトがアレである。

「服、ですか? それなら、探さないといけませんね」

「ん……。あんまりその恰好でうろつきまわるのもなぁ……」

何か良いが無いかと探していると、自分が解決策を手に持っていることに気が付いた。

「これ……。ワイルド・ウルフの皮だけど」

「ありがとうございますっ! ご主人様、これを加工してもいいですか?」

「加工? 別に良いけど」

「では、失禮して……」

エリナが皮に念を込めるような恰好をすると、がポワポワと皮を覆った。

「はいっ、これで完です!!」

「すごい、普通のメイド服だ」

先ほどまでの皮が姿を消して、エリナの手には下著とメイド服が作られていた。

《普通のメイド服ってなんだよ……》

「【裁】スキルです。他にも家事に関するスキルなら一通り持っていますから安心して、家事をお任せください!」

「家事?」

「はい、掃除、洗濯、料理。なんでもござれです!」

エリナの言葉にハヤトは思わずヘキサと顔を見合わせた。

掃除、洗濯、料理。そのどれも、ハヤトはしていない。

「あー、その、なんと言うかだな」

「はい」

エリナはキラキラした目でハヤトを見上げる。

「俺の家には掃除をするほどがない」

「綺麗好きなんですね!」

「食事はダンジョンで取る」

「サバイバーみたいでかっこいいです!」

「洗濯は……服を三著しかもってないから、正直いらない」

「いや、洗濯はいりますよ?」

「コインランドリーって便利ながだな」

「高いじゃないですか」

「……コインランドリー知ってんの?」

「ご主人様が知ってる常識(こと)は大知ってます」

《私と同じようなものだ。契約主の記憶の中から、必要な社會常識を覚える》

「大丈夫です! 私が來たから損だとは思わせないように頑張りますっ!」

そう言ってやる気を見せるエリナ。確かに気概は十分だけど……。

(……どうする?)

《こうまで言ってるし、もうお前から離れないだろ……これ》

(連れて帰るか……)

《ちゃんと責任とってやれよ、ロリ巨大好きハヤト君》

(その呼び方やめてくんない?)

とにかく、二人はエレナを家に連れて帰るということで合意した。

「じゃあ、君を一回家に連れて帰るから」

「はいっ、お願いします。ご主人様」

そう言って深々と禮をするエレナ。傍から見れば行儀のよいに見えることだろう。

「それと、そちらの思念の方も、今後ともよろしくお願いします」

《私が見えるのか?》

「はいっ! 聲も聞こえてますよ」

《ほう。ハヤト以外には見られていないものだと思っていたが……なるほど、それも奉仕種族(メイディアン)の特なのかもな》

ヘキサはそう言ってゾクリとするほどしい笑顔で笑った。

「とりあえず、一回ダンジョンから出よう。奉仕種族(メイディアン)は戦えないだろ?」

「その通りです……。ご迷をおかけします……」

ハヤトはエリナを連れて、先ほど走してきた道を戻る。その時、ヘキサが呟いた《まあ、人間になっただけマシか》という言葉は聞こえない振りをしておいた。

いったい、俺をなんだと思っているのだろう。

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