《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第16話 その場合わせの探索者!

「確認するけど、10層に足を踏みれたことはあるんだよな」

ハヤトはダンジョンに潛る寶珠の前で尋ねた。10層にったことが無ければ9層の階層主(ボス)を攻略しなおすことになるからだ。

「昨日の夜に30秒だけいたわ。るなり探索者証(ライセンス)からビービー音がなるから慌てて帰ったわよ」

「俺と似たようなもんだな」

ギルドは単獨(ソロ)攻略を申請している探索者が10層に足を踏みれた場合、警報を鳴らすように設定している。殉職率(じゅんしょくりつ)をしでも下げようとするギルドの涙ぐましい努力の結果である。

「なら、転移は10層で良いな?」

「もちろん」

「よし、行こう」

ハヤトの手が寶珠にれる。ユイもそれに続いて手をれた。

ぱっと、二人のが包む。気が付くと既に10層に到著していた。

「……暗いな」

「燈りはあるの?」

「ちょっと待ってな」

10層は窟ステージとも呼ぶべきか、一切のが無い窟がダンジョンだ。そのため、ダンジョンに潛る際には燈りが必須となる。

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ハヤトは第9層で採れる“水燈石”と呼ばれる石を取り出すと、水で満たされたカンテラの中にその石を浸けた。石はわずかに泡を発生させると、激しくり始める。

この石は汚い水を浄化する質があるらしく、インフラが整っていない國々に無料(ただ)同然で配られているらしい。夜の燈りになって水も綺麗(きれい)になるという一石二鳥の代(しろもの)だ。から手が出るほどしい連中はたくさんいるだろう。

「カンテラは俺の腰につけておく。ここで確認だが、今日の目的は10層の突破(とっぱ)で良いんだな?」

「そうよ。私の実力なら10層なんて簡単に突破できるから」

「……へぇ、さいですか」

イキるのはちょいとやめてほしい。昔を思い出しそうになる。

「ユイさんは何を目指(めざ)してるんだ? 前線攻略者(フロントランナー)か?」

時々、水で濡(ぬ)れていたり、巖が付きだしているお世辭(せじ)にも歩きやすいとは言えない巖の上を二人は丁寧(ていねい)に歩きながら、ハヤトは沈黙(ちんもく)に耐えかねて口を開いた。

「……知らしめるのよ」

「は?」

「私の実力を知らしめるの」

「……誰に?」

「みんなによ。クランのみんな。ファンのみんな、マネージャ、そして両親に」

「……ユイさんは蕓能人(げいのうじん)かなんかなの?」

「えっ! もしかしてアンタ、私のこと知らないの!?」

「……うん。俺の家、テレビ無いから」

「テレビなくても、他の電子機くらい持ってるもんじゃないの!?」

「いや、持ってない……」

「まだ私のこと知らない人がいたなんて……」

「……とんでもない自信家だな。そんなに有名なのか」

「そりゃ、ね」

そのとき、ユイはふと悲しそうに笑った。

「……どうした?」

「私たちは分不相応(ぶんふそうおう)に有名になったから、大変なのよ」

「へぇ。有名稅ってやつか」

ハヤトはこっそり生み出した短槍で暗闇から襲ってくるモンスターたちを倒していく。【武創造】のスキルを持っていることは他人に知らせないでおこうとヘキサと合意したからだ。

「アンタはなんで探索者なんてやってんの?」

「俺? 俺にはこれしかないからな」

「……どういうことよ」

「これしか暮らしていく方法がないんだよ」

「……アンタも相當訳有りっぽいわね」

「そうでもないぜ」

暗闇の中を進むこと30分。二人はモンスターが発生せず、近寄りもしない安全圏(セーフエリア)で地図を広げて、どこまで進んだかを照らし合わせる。

燈りが無ければばした腕の先も見えないほどの闇を腰の燈りだけで進んでいくというのは、とても神が疲弊(ひへい)する作業だった。先頭を歩くハヤトは勿論のこと、後ろを歩くユイも參っていたみたいで、安全圏(セーフエリア)を見つけた時は柄(がら)にもなくハイタッチをしてしまった。

「こっから道なりに進めば階層主(ボス)部屋だ」

「階層主(ボス)は……『ブラッディー・バット』よね?」

「ああ。大きさ4m。捕まえた人間のを全て飲み干すらしい。できるだけ捕まらないように、捕まったらいったん落ち著いて距離を取ること。そのまま二人して捕まったら助かるチャンスも無くすからな」

と、ハヤトは本に書いてあることをそのまま読み上げる。一方のユイはその話をうんうんと素直に聞いていた。

「……意外だな」

「何が?」

「てっきり、『知ってることの確認なんていらないわ!』 なんて言うものだと思ってたから」

「本番前の予習(リハーサル)は何度やっても、やり足りないじゃない」

《ほう? ただの自信家だと思ってたが、そうでもないのか……?》

「オッケー、分かった。じゃ、ここで互いの手の打ちをさらしておこう。ここまで戦闘らしい戦闘もなかったからな」

「そうね。私は狀態異常付與者(デバッファー)。睡眠(スリープ)、麻痺(パラライズ)、毒(ポイズン)。なんでもいけるわよ」

「俺は見ての通り前衛職だが、初級でよければ魔法スキルも使える」

多分、初級(Lv1)以上も使えるとは思うけども。

「単獨(ソロ)攻略の王道らしい全狀況対応者(オールラウンダー)ってわけね」

「そういうこと。ただ前衛8、後衛2くらいで偏(かたよ)ってると思ってくれ」

「分かったわ。私が後衛で「ブラッディー・バット」を麻痺(パラライズ)、もしくは化(リダクション)するから、その隙に決めて」

「オーケー。単獨(ソロ)攻略を渋るギルドの連中に目に見せてやろう」

「勿論(もちろん)よ!」

二人は拳を突き合わせて笑った。即席のパーティーでもなんでも、10層を越えないことには、前線攻略者(フロントランナー)なんて夢のまた夢だ。

「じゃ、行くか」

「ええ。準備は良い? 即席の相棒(インスタント・バディ)さん」

「かっこいい呼び方すんねえ」

「男の子ってこういうの好きでしょ?」

はい。大好きです。

しかし、そこからが大変だった。安全圏(セーフエリア)まで全然モンスターが出てこない反か、今度は階層主(ボス)部屋まで信じられないほどのモンスターに襲われたのだ。

だが、

「麻痺(パラライズ)!」

「睡眠(スリープ)!」

「混(コンフュージョン)!」

ユイの狀態異常がとんでもないほど刺さった。一方ハヤトもハヤトで【暗視】スキルにより丸になった敵を先制攻撃で減らしていった。

結局、階層主(ボス)部屋にたどり著いたのは安全圏(セーフエリア)を出てから1時間後のことであった。

「ユイさん、MPは大丈夫か?」

魔法系のスキルはMPを消費する。これは0に近づけば近づくほど、眩暈(めまい)や吐き気を催(もよお)し、0になると気絶するという非常にシビアなステータスだ。HPに次いで管理しなければいけないステータスでもある。

「今ポーションを飲んだからかなり余裕はあるわ。あとユイでいいわよ。一々さん付けしてたら面倒でしょ?」

「そう、だな。行こうか、ユイ」

「様をつけてもいいのよ?」

「よし、扉を開けるぞ」

「ちょっと、無視しないでくれる?」

ハヤトは階層主(ボス)部屋の扉を重をかけて開く。ゴゴゴ、と石のこすれる音が響いて階層主(ボス)部屋の中に燈(あか)りが燈(とも)る。

10mはあるだろう天井にぶら下がっているのは巨大な蝙蝠(こうもり)。

「行くわよ、ハヤト!」

「ああ!!」

かくして、即席パーティーのボス戦が始まった。

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