《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第17話 ボスを倒す探索者!
「麻痺(パラライズ)!」
先制攻撃を仕掛けたのはユイだった。ユイのスキルで生み出された電撃の槍が、まっすぐブラッディー・バットめがけて飛んでいく。ハヤトは短槍を構(かま)えた。
“【神速の踏み込み】【鈍重なる一撃】【音波保護】をインストールします”
“インストール完了”
ブラッディー・バットは電撃の槍を容易く躱すと、落下しながらハヤトめがけて當たりを仕掛けてきた。
「ハァッ!!」
ハヤトのアクティブスキルである【鈍重なる一撃】が発。落下してきた巨大な蝙蝠めがけて槍が突き刺さった。
「―――-aaaaAAAAAAAAAAAA!!!!」
耳をつんざく悲鳴と共に、蝙蝠(こうもり)のと抉(えぐ)れたが地面に撒(ま)き散った。
「毒(ポイズン)!!」
その傷口めがけてユイの毒が飛び込む。直撃。
蝙蝠はふらりとを揺らすと、二人から距離を取るべく空へと浮かんだ。だが、明らかにきがおかしい。酔っ払いのようにふらふらしている。
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「よし、毒が効(き)いてるわ!」
「ナイスアシストだ、ユイ!!」
ハヤトは【神速の踏み込み】を連続使用。ドドドンと、三連打で壁を蹴りあ(・)が(・)る(・)。四歩目で大きく壁を蹴ると跳躍(ジャンプ)。不規則に舞うブラッディー・バットの背中に短槍を叩き込んだ。
「……ふっ!!」
その瞬間、蝙蝠が大きく空中で暴れだしたので被害を食らわないようにハヤトはブラッディー・バットの背中から飛び降りた。
「だいぶ効いてるわね。一気に片を付けるわよ!! 麻痺(パラライズ)!」
二度目の麻痺(パラライズ)。今度はブラッディー・バットの芯を捉えるとその巨を縛って地面に落とした。
「これで決めるッ!」
ハヤトは疾走。地面に落ちたブラッディー・バットがなんとかをかそうとをよじっているその頭めがけて【鈍重なる一撃】を発。
ズドン!! と雷が落ちたかと思うほどの轟音(ごうおん)が階層主(ボス)部屋に響いてブラッディー・バットの頭を消し飛ばした。
「やるじゃないハヤト!」
ぱっ、とを払ったハヤトに、後ろにいたユイが近づいてきた。だがそれは、
「馬鹿ッ! まだ、が消えてないっ!!」
油斷の表れだ。
果たしてハヤトのアドバイスが屆くよりも先に、ブラッディー・バットがいた。
「GYaaaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
骨が砕けるのではないかと思うほどの咆哮。【音波無効】のスキルを持っているハヤトですらも、瞬きの間だけきが止まる威圧。だが、すぐにをかすと彼はブラッディー・バットのを壁に(ぬ)い留(とど)めるべく【鈍重なる一撃】を発。
だが、
「……ッ!!」
ブラッディー・バットは空気の抜ける風船のような不可知な機でそれを避けるとハヤトに當たり。ズドン、と巨がぶつかった衝撃がハヤトのに走る。ボロボロだった防が々(こなごな)に砕(くだ)け散った。
「クソッ!!」
そして、ブラッディー・バットはそのまま突き抜けるとユイのをがっしりと捕まえた。
「ユイッ!」
……まずい。ブラッディー・バットは人のを吸う。
「させるかッ!」
ハヤトは砕けた防の破片をまき散らしながら疾走。目の前にで今にもを吸おうとしているブラッディー・バットを中心に収める。
“【鈍重なる一撃】を排出(イジェクト)”
“【火屬魔法Lv3】をインストールします”
“インストール完了”
「貫けッ!!」
ハヤトがイメージしたのは、昔一度だけ見たことのある狙撃銃(スナイパー)。次いで空気を破裂させる音が階層主(ボス)部屋に響くと、炎弾に羽を貫かれたブラッディー・バットがユイを手放して空へと舞った。
「間に合えッ!!」
【神速の踏み込み】を二回発。ハヤトは落下するユイの真下にり込むとそのままキャッチ。スライディングの要領でブラッディー・バットと距離を取る。
「あっ、ありがとう……」
「立てるな!?」
「っ! 勿論!!」
今はお禮の言葉などいらない。必要なのは互いが生き殘ること。
「(は)ぜろッ!」
ハヤトは手元に炎を集中。次の瞬間、大砲のように炎が弾きだされる。羽を撃たれて、上手く舞えないブラッディー・バットに炎塊が直撃。耳をつんざく発音と共に、が階層主(ボス)部屋を舐める。
立ち上がった瞬間に激しい眩暈(めまい)。
MP切れだッ!
「よくも私をッ! 『死に至る猛毒(デッドリーヴェノム)!!』」
その隙(すき)を埋めるユイのスキルが発。生まれた猛毒がブラッディー・バットにれた瞬間、ここ一番の咆哮が部屋を埋めた。よく見ると、そのものが溶け始めている。苦しいはずだ。
「終わらせるぞ! ユイ!」
「勿論よ、ハヤト!!」
言うが早いかハヤトはもだえするブラッディー・バットめがけて走り出す。
「『魂縛る鬼の鞭(ソウルパラリス)』!」
さらにユイのスキルが発。寸分(すんぶん)違(たが)わず命中すると、ガッチリとブラッディー・バットのを固定(ホールド)。ハヤトは弱點を狙うために跳躍(ジャンプ)。
“【火屬魔法Lv3】を排出(イジェクト)”
“【狂騒なる重撃】をインストールします”
“インストール完了”
「ォオッ!!」
ズドドドドドドドドッツツツ!!!!!
絨毯撃のような轟音と、衝撃波が生まれブラッディー・バットのを潰していく。
「ォラアッ!」
最後の一撃をブラッディー・バットの頭に叩き込んで、殘心。ブラッディー・バットは最後に力なく哭(な)くと、その巨を地面に落として黒い霧になった。
「……終わったのね」
シン、とした靜寂(せいじゃく)を破ったのはユイ。
「ああ。これで終わった」
「良かったわ……うッ……」
「ん? おい、どした??」
「うぇぇぇええええええ」
……キラキラキラキラ…………。
ハヤトにとっては初めて見るの嘔吐シーン。他人のソレなんて見たくなかった……。
《重度のMP減りだ。ポーションを飲ましてやれ》
(いや……俺も……MP切れ)
《…………》
思わず貰い嘔吐をしそうになるのを必死にこらえてハヤトはMPポーションを一口飲む。
一度深呼吸をすると、吐しゃの上に倒れ込みそうになっているユイのを抱きかかえてMPポーションを飲ませた。
「うぇっ……」
そして彼はMPポーションを飲み干すと同時に気絶した。
「……お疲れさん」
MPポーションが効くまでにはし時間がかかる。彼のアシストのおかげでMP切れの隙をつかれなかった。ユイもユイで口では尊大に振舞っていたが、なんだかんだMPが切れるまで力を出してくれた。
相棒(バディ)らしく、目を覚ますまで介抱すべきだろう。
だからハヤトはユイが目を覚ますまでの間、ずっと彼の勢が楽になるようにと膝を枕替わりにしていた。
「……終わった」
意識を取り戻すや否や、ユイがそう言った。
「何が」
「私の蕓能人生よ!」
「……なんで」
「なんでって、あんな醜態(しゅうたい)見られてアイドルできるわけないでしょ!」
「お前、アイドルだったのか」
「……そいやアンタはそのレベルだったわね」
「ユイはMP切れになるまで一生懸命に戦ったんだから、褒められるべきであって、醜態でもなんでもないだろ」
「口ではそう言うけど、マスコミにリークするつもりなんでしょ! 絶対ゴシップ紙のトップ記事よ! うわーん!!」
「泣くほどか……? もうちょっと人を信じろよ……」
「じゃあ証拠だしてよ!」
「は?」
「貴方が絶対裏切らないっていう証拠だしてよ!!」
「子供かよ……」
「はーやーく! 証拠! 証拠!!」
児のように駄々をこね始めるユイ。
……アオイちゃんのほうがしっかりしてるぞ。
「おい、駄々こねるのはいいのかよ」
「別に『駄々こねる』っていう文面なら可らしいイメージは消えないでしょ」
「……ユイ、お前…………」
「……何よ」
「蕓人も大変だなぁ……」
ハヤトはしみじみとした顔で頷いた。
「蕓人じゃないし!! なにその顔! むかつく!!」
だろうね。わざとやってるもん。
「証拠は出せないけど、口止め料替わりにブラッディー・バットのドロップアイテム貰ってもいいか? 防を新調しないといけないんだ」
「えっ、その程度でいいの? 最初っからあげるつもりだったわよ」
「……要らないのか?」
「別にお金に困ってないし」
《……嫌味な奴だなぁ。お前もなんか言ってやれ》
(いや、別に俺も困ってない……)
《は?》
「あ、そうだ。私のサインあげるわよ」
ふと唐突にそう言いだしたユイ。
「要らねぇよ……」
「売れるわよ!」
「自分でそういうこと言うなよッ!」
「口止め料だと思ってけとりなさいよッ!」
「もう貰ってるよ!」
かくして無理やりサインをしようとするユイから逃げる鬼ごっこはそれから30分ほど続いた。
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