《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第19話 被りを嫌がる探索者!

一見するとロングコートのような布部分は、全を防するために広げられたものだ。

「こちらは22層の鉱山地帯で手にる【ブルーダイヤモンド】のを21層の【爐蠶(ロカイコ)】に食べさせた後にできるシルクを使って編まれた一品でございます。生地は文字通りの絹(シルク)ですので著心地は勿論のこと、理耐久、魔法耐久も優れた一品でございます。しかもこちらの別モデルをあの『藍原(あいはら)』様もご使用になられています」

「藍原って……あの藍原?」

「はい。『剣姫(デスペラード・プリンセス)』の藍原様でございます」

……うっわ。

《何故そうドン引きするのだ。中々良い一品ではないか》

(俺アイツと裝備被りたくないんだよ……)

ハヤトの聲が結構ガチだったので、ヘキサは今一度ハヤトの記憶を読み直して、《うっわ……》と聲を出した。想像していた3倍ほどヤバかったので彼も一緒にドン引きである。

「お兄様、藍原様というのは?」

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「ん? そうか、エリナは知らないか。藍原ってのは俺と同じ16歳にして『世界(W)探索者(E)ランキング(R)』 日本二位の化けだよ。現役子(J)高生(K)探索者ってので何度か雑誌とかテレビにも出てるぜ」

「二位っていうと、あの阿久津様より上なんですか?」

「そうだ。けど……」

「けど?」

格に難ありなんだよ……」

「お會いしたことがあるのですか?」

「昔に、ちょっとな……」

あんなのと同じモデルの裝備を著て戦ってると他の探索者に何言われるか分かったもんじゃない。というか、イキってた頃のハヤトに話しかける人間はダイスケみたいなお人良しか、ハヤトと同じように頭のおかしい奴だけだ。

ちなみに件(くだん)の藍原は問答無用の後者である。

「申し訳ないんですけど、他のを見てもいいんですか……?」

「お気に召しませんでしたか?」

「えぇ、ちょっと。シオリ……いや、『藍原』と同じ防はちょっと……」

その言葉に男店員は微笑んだ。大方、同い年のの子と同じ裝備を使いたくない思春期男子に見えていることだろう。だが現実は違う。同じ防を付けてもし出會おうものなら、ハヤトはどんな目にあうか分からないからである。

「というかお兄様、この防お高いですよ?」

「えっ? は!? 780萬!!? 24回分割だと……」

「大32萬円でございます」

「……無理無理」

「こちらは上級者向け(ハイエンドモデル)でございますから。能に見合って、お値段も上がっております」

シオリの奴こんな高い防著てんのかよ……。

「お客様は予算的に幾らほどをお考えでしょうか?」

「うーん、大……」

100萬くらいですかね。と言おうとした瞬間に、

「200萬円です」

「ちょっと、エリナさん?」

「お兄様は金銭覚が無いんでここは私に任せてください。大、200萬円。プラスマイナスは30萬円ほどでお願いします」

「でしたらこちらが予算範囲に収まるかと」

エリナの言葉で店員に見せられた防は、しかしかの防ほどの見た目(デザイン)ではなく、どれもこれもパっとしないものばかりだったのだ。

「お兄様、どうでしたか」

「うーん、微妙……」

先ほどの防を見た後だとどれも微妙に見えてしまう。結局、その店は見るだけにして次に向かった。

買わなかったのに見送りまでしてもらって、恥ずかしい気持ちでいっぱいになりながらハヤトは二店目に舵を向けた。どう考えても錆び付いた自転車(コレ)で來るところじゃなかったよなぁ……。

「とは言いましても、すぐに上級者向け(ハイエンドモデル)にされるのでしたら、見た目にこだわる必要も無いかと思いますよ?」

「そりゃそうだけどさ。あんなの見せられちゃうとね」

《780萬の見た目だったな》

「安いやつほど見た目が手抜きなの止めてほしいよ」

「仕方ないですよお兄様。見た目も立派な売りですから」

そんなこんなで二店目にる。

「へいらっしゃい!」

《……居酒屋か?》

先ほどの店とはうって変わって一気にフレンドリーなじの挨拶である。

「兄ちゃん、今日はどうした?」

店主らしき男がやってくる。長は180cmもあるだろうか、ハヤトは彼を見上げながら用件を伝えた。

「初心者か? ならこの7萬のやつがオススメだぜ」

「いや、中級者向け(ミドルレンジモデル)がしいです……。っていうか、安いですねそれ。大丈夫なんですか?」

「おう、そりゃ勿論。っていうか、兄ちゃん中域攻略者(ミドルランナー)か? 人は見た目によらねえもんだなぁ。なら、買い切りか素材持ち込みか。どっちで行く?」

「買い切り……? 素材持ち込み……?」

「買い切りってのは完してる防をそのまま買うやつだ。高いが完品をそのまま持っていけるからすぐにでも防しい奴はこっちがオススメだ。素材持ち込みは、素材を持ち込んで唯一(オーダーメイド)の防を作ることだな。こっちは素材代が浮く分、安くはなるが時間がかかる」

へー、そんなんあるんだ……。

と、ハヤトが心していると。

「予算は200萬で、買い切りタイプでお願いします」

「200萬? そんな高級品はうちには無いぜ。中級者向け(ミドルレンジモデル)は高くてもせいぜい80萬とかだ」

(前のアレを見るとなんか急に安くじるな)

《別に安くは無いけどな》

「80萬? お兄様、それを見せてもらいましょうよ」

「そうだな。そうすっか」

気さくな店主に案されて中級者向け(ミドルレンジモデル)の裝備を見る。平均価格は60萬前後。低くて40萬円臺というもあった。これならハヤトの臨時収で買える額だ。

「なんでこんなに安いんですか?」

「そりゃ、大量生産大量注よ。ウチは企業の下請けなんだ」

「あぁ、それで」

探索者は金になるので、大企業には「探索者」を雇って潛らせている企業がなくない。そんな時、一人一人防を買っていたのでは金が足りないので、そこら辺の裝備屋に同じ裝備を大量注しているのだ。

「そ。で、作りすぎた分をこうして店に置いてるってわけだな。はははっ」

「ダンジョンの裝備作ってるとこは『D&Y』だけだと思ってた……」

「去年まではそうだったんだけど、最近は中小も結構ってきてるんだぜ?」

「へぇ……」

「お兄様、これにしてはいかがですか?」

そこにあったのは60萬ほどのごく普通のありきたりなデザインの防。ただ、普通よりは若干軽裝に見える程度だ。

「おう、ソイツはいい。兄ちゃんも中域攻略者(ミドルランナー)なら、前線攻略者(フロントランナー)を目指すんだろ?」

「はい! 勿論!」

「その意気に免じて安くしてやるぜ?」

「本當ですか?」

「おう。ウチはギルドと提攜してないから探索者割引は使えねえけど、10%安くして、端數やその他を切り捨てて50萬でどうだ」

その言葉を聞いてハヤトとエリナは顔を見合わせる。

悪くない提案だ。ハヤトが宣言通りに攻略していくのなら、ここで買った防は1ヵ月としないうちに中古品として売りに出されることだろう。

それなら、ここで量産型とは言え防を買っておくのが得策だろう。

「なら、それでお願いします!」

「お買い上げありがとうよ! 會計するからちょっと待ってな」

そう言って男は店の奧にっていった。

「なんだかさっきのお店とかなり違いますね」

「俺にはこっちのほうが合ってる気がするよ……」

《高級店は肩が張るか?》

「昔を思い出すからね……」

《あぁ…………》

流石にヘキサもこれにはツッコミ辛かった。

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