《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第20話 長じる探索者!
「最近調子が良いんだよ」
《……どういうことだ?》
15階層でレッサーワイバーンを狩った後にハヤトがポツリとそう呟いた。
「いや、なんかが軽いって言うか。力が強くなったっていうか」
《……ステータスが上がってるだけじゃないのか。それ》
「あー、そいや確認してなかったな」
最後に確認したのはヘキサと出會った直後である。スキルのプレゼントがどうとかで確認した覚えがある。あれが大二週間くらい前のことだから、かなりステータスが上がっているのではないのだろうか。
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天原(あまはら) 疾人(はやと)
HP:27 MP:45
STR:19 VIT:18
AGI:20 INT:13
LUC:03 HUM:55
【アクティブスキル】
『武創造』
【パッシブスキル】
『スキルインストール』
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「おい運(LUC)ッ!」
《はははっ、相変わらず低い値だな》
「……けど、だいぶ長してるな」
《私にはこの世界の平均(アベレージ)が分からんからリアクションの取りようがないぞ》
「初心者は運(LUC) と人間(HUM)以外の數値の平均が2桁手前なら次に行けるって言われてる。中域攻略者(ミドルランナー)は平均が20を超えると良しってじ。前線攻略者(フロントランナー)は30近くあれば最高値だよ」
《攻略階層と平均がイコールくらいの認識でいいのか?》
「間違いじゃない」
現在のハヤトのステータスから計算すると17.5。ということはその周辺が今のハヤトの適正階層ということだ。
《えっ、じゃあお前。私とあった時は10階層相當のステータスがあったのに3層で戦ってたのか?》
「ステータスが全てじゃないから……」
ハヤトの言葉はある意味で真理である。ステータスはあくまでの人の力を數字で表したに過ぎない。例えるなら、力測定と同じだ。力測定の數値が幾ら良くても喧嘩に強いとは限らない。スポーツが飛びぬけて上手いというわけではない。
ただ、ある程度の実力が保証されているだけである。
しかし、それを低ステータスの者が言うとなると……。
《なんか負け惜しみみたいだな》
「んだと!? 事実だぞっ!」
とまあ、ハヤトが憤慨するのも仕方ないことである。探索者の中にはステータスを至上とするステ廚と呼ばれる人たちがなからずいる。確かにステータスが高くて困ることはないが、ステータスが高いからと言って必ずしも強いとは限らないのでギルドは政府と共にあんまりステータスにこだわるなと言っているのだが、
「けっ、ステ廚にはこりごりだぜ」
しかし、一向に減らないのが現実である。
《高くて困らないのなら上げてしまえばいいのに》
「學歴みたいに言うなよ。俺だって別に好きで二年間もあのステータスで居たわけじゃないんだから」
上げたくても実力や金銭面の問題で上げられない人もいるわけである。となると今度は奨學金ならぬ奨探金と言って、低金利で金を貸し出す企業が出てきた。これの悪徳なところは奨學金に名前を似せているが、普通の消費者金融がやってるので金利は普通の借金と変わらないとこである。
ハヤトは借金をしないように育てられたので絶対に借りることは無かったが。
《それで、最近調子が良いならいい加減15層のボスにもう一回挑んだらどうだ?》
「MPポーションをあと3本買ったらな……」
15層のボスはワイバーン。戦闘中の99%を空にいるという近接泣かせの階層主(ボス)である。ハヤトは15層も駆け抜けるつもりで速攻、階層主(ボス)に挑んだのだが1時間の戦闘で5分しか地上にいなかったのでストレスマックス。
半ギレで階層主(ボス)部屋を後にしたわけである。なので15層で狩りをしながら金を稼ぎ、MPポーションを買いためて再び階層主(ボス)に挑もうという魂膽でここ一週間ほど15層で停滯している。
先日、23層が攻略されたという話が舞い込んできたのでハヤトとしても若干焦りが生まれているのだ!
《あの狀態異常付與者(デバッファー)に聲でもかけたらどうだ?》
「ユイか? 俺アイツの連絡先知らないし」
《そいやヘタレフニャチン野郎だったな》
「口が悪いよー。ヘキサさん」
とはいえ、ヘタレなのは事実である。
そんなこんなでレッサーワイバーンを狩っていると、ふと遠くから真っ赤な集団が歩いてきた。
《結構ド派手だな。どっかのクランか》
「ああ、あれは……」
彼らは他の探索者と出會うことを厭(いと)わないのかまっすぐハヤトの元に向かってくる。
「ヴィクトリアだ」
近づくなり先頭を歩いている見知った男が片手を上げてハヤトに挨拶してきた。
「よう、ハヤト! お前じゃないかと思ってこっちに來たら、やっぱりお前だったな」
そう言ってへらへらと阿久津大輔が笑った。
「……ダイスケさん。もしかして、挨拶するだけにクランメンバー連れて俺のとこに來たんですか」
「おうよ。俺のクランメンバーを紹介しようと思ってな」
ダイスケの後ろにいるのは5人。珍しくパーティーの最大メンバーである6人でいているみたいである。ちなみにパーティーとは一度にダンジョンに潛れる人數のことである。何故6人かというと、ダンジョンにる際の部屋に6人までしかれないという理的な理由だったりする。
「コイツが俺が目を付けてる次世代の英雄だ」
「ちょっと、なんつー紹介するんですか」
ハヤトの抗議もどこ吹く風で笑うダイスケ。すると當然と言うべきか、後ろにいた後衛職(魔法使い)と思われるクランメンバーたちが骨に顔を顰(しか)めた。
すると、ダイスケの後ろにいたダイスケより背の高い……190cmはある理知的な男が一歩前に出てきた。
「君がハヤト君かい? ダイスケからいつも話は聞いているよ。僕はヴィクトリア副団長の久我だ。よろしく」
「……団長と副団長がそろってこんな所で何してるんですか?」
「後衛の育さ」
「はー、なるほど」
確かに飛び続けるワイバーン相手なら良い魔法スキルの練習になるだろう。ハヤトも攻略のために半強制的に魔法スキルの練習をさせられていたし。
「お前も見ていくか?」
「えっ、いいんですか?」
ダイスケの思わぬ提案に食いつくハヤト。魔法スキルは想像力で威力や速度が決まるため、出來る人(プロ)の魔法を見ることはそれがそのまま実力の向上につながる。
ヴィクトリアにいる後衛職は、當然のように出來る人たちなのでこの機會を逃すわけにはいかない。
「勿論。クランの部見學もせずに団するかどうかなんて決められんだろ?」
「いや、るつもりないですって」
というと、また後衛職たちの顔が曇る。彼らは過酷な団試験を突破してヴィクトリアにっているのでハヤトの態度が気にらないのだろう。
「ははははっ!」
だが一方の大輔はハヤトの言葉に大笑。副団長の久我もし笑っている。
……何が面白いんだろう。
「じゃ、そういうことだ。行こうぜ、階層主(ボス)部屋」
「何がそういうことなのか一つも分かんないですけど、ご一緒させてもらいます」
「おう、しっかりついてこいよ」
「そういえば23層クリアしたって聞きましたよ。凄いですね」
「凄いのは俺じゃなくてクランメンバーさ」
「24層の攻略はいつから本腰をれるんです?」
「三日後くらいか。今は他の奴らが地図作り(マッピング)をしてる」
「育は24層に向けて、ですか?」
「ああ、それもある。ほら、この間言った奴の埋めだよ」
「アイドルの追っかけやるって抜けてった人ですか……」
クランに所屬したくないハヤトでも、かなり引く理由でヴィクトリアを抜けていった人である。
「俺にはアイドルの良さがよく分からねえから、アレだけどよ。辭めたいっていう本人を引き留めるのも悪(わり)ぃだろ?」
「嫌がる人をれ続けてると士気が下がりそうですしね」
「それもありますが、探索者は命に関わる仕事ですから。半端な態度でダンジョンに潛ると死ぬかもしれません。それに、彼の気持ちが僕にはし分かるので」
「……久我さん、アイドル好きなんですか」
「いえ、嗜(たしな)む程度です」
…………アイドルを嗜(たしな)む?
「推しは誰ですか」
「戦乙‘s(ヴァルキリーズ)の花園(はなぞの)ちゃんですね」
知らねえ……。
「……何が好きなんですか?」
「あの自分が一番と思っているお姫様気質なところですよ」
そういってくいっと眼鏡を持ち上げた。ちょっと似合ってるあたりに腹が立つ。
「こいつ、ドMだからSっぽいが好きなんだよ」
「ええ、是非とも罵倒(ばとう)されたいです」
「へぇ……」
知りたくもない報を聞かされながらハヤトたちは階層主(ボス)部屋の前にたどり著いた。
「準備は良いな?」
と聞きながら扉をあけるダイスケ。
「はっ?」
そしてそのまま部屋にっていくクランメンバーたち。
普通、部屋の前で準備の確認とかするもんじゃないの?
と、隨分いい加減なじで階層主(ボス)戦が始まった。
沒落令嬢、貧乏騎士のメイドになります
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