《【書籍化】中卒探索者ですけど今更最強になったのでダンジョンをクリアしたいと思います!》第26話 語り合う探索者!
本當は1時間近くのがっつりした休憩を取ってから階層主(ボス)に挑みたかったのだが、ユイの目立つ仮面のせいで30分しか休憩できなかった。
っていうかお腹すいたから簡易食糧を食べてたらユイがクレクレねだって人の目がきついのなんの。
「お前ちゃんと飯食ってないの?」
と、聞くと一人でコンビニやスーパーにるとイメージが損なわれるからなるべく止めるようにと言われているそうである。
イメージも何も考えずに勝手に生活において縛りを設(もう)けているハヤトとは大きな違いである。
「それで、20階の階層主(ボス)って……。あのい巖人形よね?」
「あぁ。『ハードロック・ゴーレム』だな。巷(ちまた)じゃ『ガチムチ巖人形』って呼ばれてる」
「何その気味の悪い名前は」
「名前の通りの見た目してるんじゃねえの?」
そう言ってハヤトは一歩ミスれば命取りになるような廊下の上をためらいながら進んでいく。後ろにいるユイが安心して後ろをついてくるのはハヤトへの信頼の証なのだろうか。
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「……そいや、なんで俺なんだ?」
「何が?」
「いや、攻略だよ。ユイは有名人なんだろ? パーティーを募(つの)ればすぐに集まるだろ」
「だから、それだと私がまるで真面目ちゃんに見えるから嫌なの」
「……上位の探索者はみんな真面目だろ。いや、真面目だからこそ生き殘れるとも言えるしな」
「知ってるわよ。私だってBランクの端くれだからいろんなAランク探索者の人と喋ったことあるもん」
「『世界(W)探索者(E)ランキング(R)』の日本一位はちょっとアレだから……うん。おいておこう。二位も三位も神面はだいぶイカれてるが、こと探索においては人並み以上の集中力を持ってる。ダイスケさん……いや、阿久津さんはクランのリーダーとして、最前線でみんなを引っ張る豪傑(ごうけつ)さと、人一倍の慎重さで幾度(いくど)となくクランの危機を乗り越えてきた」
「……らしいわね。テレビの企畫でしゃべったことあるけど、普通に凄かったわ」
《……普通に凄い?》
日本語の弱點に引っかかるヘキサ。
「二位の藍原も……。格はアレだが、単獨(ソロ)探索者として見習うような行ばかりだ。用意の周到さ、一瞬たりとも気を抜かない集中力。決して己の力量を過信しない分析力。格はちょっとアレだが……」
「そうかしら? 普通のの子じゃない」
「………………」
「どうしたの?」
気にしない。気にしない。
「一位は參考にならんから無視していいか」
「あの人はちょっとね……」
何かの世界でNo.1を取るような人間は決まって普通ではない。異常なまでに何かを突き詰めるからだ。例えそれが日本だけの話だとしても、『WER』5位と日本勢でたった一人、十番以(レジェンダリー)にる化けは普通では辿(たど)り著けない境地である。
「とまあ、つらつら言ってきたが、別に真面目のイメージがついても良いじゃないかって俺は言いたいわけ」
「あのねえ。ハヤト、あんたはあんまり人からの評価に無頓著(むとんちゃく)だから言うけどさ。人からのイメージってすっごい大事なのよ? 特に私は」
「まぁ、アイドルならそうだろうな。俺アイドル興味ないからアレだけど」
「くぅー! その言葉言ってる奴全員縛り上げたい!!」
「アイドル好きなの?」
「違う! 私にはこれしかないの!!」
「…………それで?」
その言い方が普通ではなかったのでハヤトは話を次に進めた。
どこか、似(・)て(・)い(・)る(・)。
なくとも、ハヤトはユイの言葉の深奧にそれを見出した。
「ええっと、そう。イメージが大切なのよ!」
「それはさっき聞いた」
「ああ、アンタはあんまりそういうのを気にしてないから言うけど」
「ちょっと待て! 俺は結構人からのイメージ気にしてるぞ?」
《「は?」》
「いや、ほら、イキってないし……」
「そんなの當たり前のことじゃない」
「ぐぅっ……!」
ハヤトに150の神的ダメージ!
めのまえが まっくらに なりそうだ!
「俺にも……若い時があったんだ……」
「二年間も自分で髪の切ってる(セルフカットしてる)奴が言えた臺詞じゃないわよ。ソレ」
「金が無いんだよ……」
「そんなにヤバいの? 貸そうか? っていうか、なんなら5萬くらいまであげるわよ??」
「どいつもこいつも優しいな、チクショウッ!」
優しさがに染みるぜ……。
「ハヤトって……意外と友関係広いよね」
「昔馴染みでちょっと……」
「他に誰からお金貸すとか言われたの?」
「なんでそこ気にするんだよ」
「いや、だって……気になるじゃん? 未知の世界って」
「ケッ、貧乏人は未知の世界だろうよ!」
「そう! だから気になるっ!!」
こうまで開き直ると嫌味も通り越して清々(すがすが)しさすらじてくる。
「えっと、ダイスケさん……ああ。阿久津(あくつ)大輔(だいすけ)ね」
「ああ、あの人って有能そうでお金無い人を支えてるよね。ほんとに凄いと思うわ」
「あと、知ってるところで言えば咲さんからも……」
「……付嬢からお金借りる探索者なんて初めて聞いたわ。普通、逆じゃないの?」
ハヤトがモンスターを食べるということに気が付くし前は二週間近く何も食わないで生活しており(渇きは川水と雨水でしのいだ)、文字通り骨と皮になった時に咲が心配して食事をおごると言ってくれたのだ。
あの時ばかりはハヤトも心が揺らぎそうになった。
「藍原(あいはら)……はちょっと違うからあれだけど。そういや、ユウマが心配して金をくれそうになったことはあったな」
「えっ!? ユウマってあの一ノ瀬悠真?」
「そう。あのユウマ」
「世界(W)探索者(E)ランキング(R)5位の!?」
「うん」
《えっ、それ私も知らないんだけど》
(記憶を見ろよ)
《いや、あの時のお前の視界はブレブレで見づらいんだって》
(飯食ってなかったからな……)
常に栄養失調&探索活という超エネルギー消費活である。
吐き気には恒常(こうじょう)的に襲われていたし、食料の萬引き、強盜は常に頭の中にあった。それを行わなかったのは一重に両親に対する強い希だけ。今はそれも失いつつあるが。
「あの合理の堅を同させるなんて……。あんた、凄いのね」
「何か嬉しくないなァ……。その褒められ方」
「褒めてないから」
「そう…………」
「あっー!!」
「うるさっ! 急に大聲出されるとのきが」
「あれ、見てみて! 寶箱!!」
「……どこ? あっ、マジじゃん!!」
寶箱。トレジャーボックスとも呼ばれるそれは、中に攻略を推し進める武や防。もしくはアイテム。引いては人類の文明を次のステージへ大きく進める「超(オーパーツ)」がっている。見つければ小金持ちになること確実なのだ。
「超(オーパーツ)」と言ってもそれぞれあるが、ここ最近で世界をざわめかせたのは、なんと言っても掌(てのひら)サイズの反重力裝置(アンチグラヴィティ)だろう。部の回路を分析することによって、現在は一部屋分の大きさがいるものの、人類の文明で反重力を作り出すことに功した。
ハヤトには微塵(みじん)も理解できなかったが、反重力の恩恵(おんけい)でなんでも高層ビルがバンバン建つようになったり、航空技が大きく進歩するらしい。今は電気をアホみたいに食うから(原子力発電所二基分ほど)実用的ではないらしいが、「超(オーパーツ)」は電力を必要としていないのでそのうち解決するとも言っていた。
《えぇ……。トラップエリアにある寶箱だろ……。罠を疑ったほうが良いだろ……》
(罠なら罠って書いてあるよ。多分……)
二人は慎重に寶箱に近づくと、しげしげと寶箱を見つめた。
「ハヤト二等兵! 攻略本!!」
勿論、二人ともすぐに開けるほど馬鹿ではない。
「アイアイサー!!」
すっと、ダンジョン攻略本高階層verをユイに手渡すハヤト。
「偽と本の見分け方は……p58!」
開くと見開きで違いがかかれていた。
「偽は……鍵口の周りがちょっと緑っぽいんですって。本は青。ハヤト二等兵、どんなじ?」
「青であります! サー!」
「本よ! 開けましょ!!」
「行くぞ!!」
人間の(さが)か、あるいは年頃なのか。寶箱を見つけてテンションうなぎ登りの二人。萬が一に備えて寶箱を見たヘキサだが、確かに攻略本に載っている本の寶箱だ。
「「それぇー!!」」
二人仲良く開いたそこには……。
「び、ビー玉?」
20個のビー玉らしき明な珠がっていた。
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